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【過去編23】僕は最終決戦に臨む(前編)

今回はイジメ問題最終の前編です

光晃がされた事を第三者が見てどう思うかです

では、どうぞ

 イジメる方とイジメられる方。どっちが悪いか?僕にはその答えが今でも出ない。イジメる方に問題があるかもしれないし、イジメられる方に問題があるかもしれない。でも客観的に見て情けなくなる。寄って集って1人の人間を袋叩きにする。1人じゃ言いたい事も言えない臆病者がイジメをする。さて、学校という場所でそんな行為がバレた時人はどうするんだろう?


「二枝先生、少しいいでしょうか?」

「何かしら?」

「見せたいものがあります」


 2時間目が終わり中休みに入った。その休み時間に僕は二枝に声を掛けた。イジメの相談?そんな生ぬるいものじゃない。僕がしようとしているのはイジメの相談ではなく、二枝に現実を突きつける事だった


「見せたいもの?何?」


 何て言っていいのか、教頭と話したあの日から二枝は変わった。今まではイジメの犯人捜しの為に授業を潰そうとまでしたのにそれが見る影もなくなりクラスにイジメが起こっていると伝えるだけになってしまった。これでよく学級崩壊が起きないなと不思議に思うけど、よく考えたら学級崩壊が起きないのは不思議でも何でもなかった


「教室じゃちょっと……そうですね、視聴覚室にでも行きましょうか?」


 教室で見せてもよかったんだけど、それじゃ僕の目的が果たせなる。それどころか欲しいものも手に入らなくなるのは目に見えてた。だから二枝を視聴覚室へと誘導した


「教室で済ませてくれないかな?先生はこれでも忙しいの」


 僕が教師を嫌いになる一端の言葉を吐く二枝。忙しいという言葉は言い訳や免罪符にならないという事を僕は二枝から学んだのかもしれない。当時でこそ学ぶべき事のない大人くらいにしか思わなかったけど、今は学ぶべき事がない大人もいるんだなって事を学んだと思っている


「そうですか……では、教頭先生か校長先生に見てもらうんでいいです」


 二枝が忙しいという事は教頭や校長はそれ以上に忙しいという事になる。当たり前だよね。二枝が現在どうしているか知らないけど、当時の二枝は一教師。そんな一教師の二枝が忙しいって言うなら校長や教頭の仕事量なんて目も当てられないくらいだ


「ま、待ちなさい!教頭先生や校長先生に見てもらう前に私が見て大丈夫だと判断したら教頭先生や校長先生に見てもらいます!」


 校長と教頭を出した途端に二枝は態度を変えた。教師って自分の体裁を守るためなら何でもやる。小学校でさえこうなんだ。高校はもっと酷い。まぁ、高校の場合は入学志願者とかの関係で学校の評判を落とすわけにはいかないから仕方ないっちゃ仕方ないか


「でも、さっき忙しいって……」

「いいの!校長先生か教頭先生に見てもらう前に私が見て大丈夫だと判断したら見てもらう!いい?」

「は、はあ……」


 こうして僕は二枝に押し切られてしまい、引きずられる形で視聴覚室へ連れて行かれた。


「それで岩崎君。私に見せたいものとは何?私だって暇じゃないの」


 忙しいとか問題を起こすなとは言わなくなった二枝。だけど、根本的なところは何1つとして変わってなかった。問題事に関わりたくない。そんなのは誰だってそう。でも、生きていく中で問題が起こらないなんて事はない


「そうですよね。先生だって忙しいですもんね」


 喉元まで出かかった言葉を飲み込み僕は小型カメラと録音機を取り出した


「それは?」

「小型カメラと録音機です」

「学校に不要物を持ってきていいと思ってるの?」


 二枝の言った通り小型カメラと録音機は不要物だ。でも、イジメの確固たる証拠を入手するためには仕方のない事だった。それに、クラスメイト達がイジメなんてしなければ僕だって学校に不要物を持ち込むなんて事はしなかったという事を二枝は理解していたのかな?


「クラスメイトがイジメなんて事をしなければ僕だって学校に不要物を持ち込むなんて事しませんでしたよ」

「そんなの岩崎君がイジメられないように気を付けていればよかったでしょ!私は学校に不要物を持ち込むなって言ってるの!」


 僕は二枝が何を言っているのか理解ができなかった。イジメられないように気を付けていればよかった?どうやって?気を付けていたって病気になるし、交通事故にも遭う。それと同じで人に不愉快な思いをさせないようにしていたってイジメられる事がある。ちょっとした事が原因で大喧嘩になる事だってあるのにどうやって気を付ければよかったの?


「………………………そうですよね。すみませんでした」


 僕はそのまま何も言わずに視聴覚室を出た。教師に見捨てられた絶望?そんなのはなかった。ただ、二枝には呆れたよ……コイツは教師───いや、指導者の器じゃない


「待ちなさい!」


 二枝に捕まったのは視聴覚室を出てすぐだった。自分は忙しいって言っておいて僕を捕まえるとは……。忙しいなら僕を捕まえている暇なんてないと思うんだけど


「何でしょうか?」

「先生は君の為に忙しい時間を割いたの。そんな先生にお礼の言葉もないの?」


 呆れて物も言えない。僕は素直にそう思ったね。何も言わずに視聴覚室を出た僕にも問題があったと思うけど、それ以上にお礼を催促する教師がどこにいるんだ?って話じゃない?


「………………………僕の為に時間を割いていただいてありがとうございます。二枝先生(ゴミ教師)

「わかればいいの。先生は職員室に戻るけど問題は起こさないでね」

「はい」


 僕からお礼を言われて満足そうに帰っていく二枝。この時は笑いを堪えるのが大変だったよ。二枝先生なんて呼んだけど、本心じゃゴミ教師。本当に自分が尊敬されていると思っている辺り僕の目には滑稽に映った


「結局アイツは中身を確認してなかったけどよかったのかな?」


 僕は映像を見せ、音声を聞かせるつもりで二枝に声を掛けた。でも、二枝は中身の確認よりも僕が学校に不要物を持ってきた事を咎めた。で、呆れた僕は何もせずに視聴覚室を出て二枝が追いかけてきてお礼の催促。イジメの実行犯や手口に関しては何も触れていない状態だった。


「確認しようとしない奴が悪いよね」


 本当なら僕が学校に不要物を持ってきていた事を咎めるよりも中身が何なのかを二枝は確認するべきだった。でも、僕が不要物を持ってきた事を咎めた。目の前の事実にしか目がいかない大人って本当にバカだと思った瞬間だった


「一応、言うだけ言ったからいいか」


 二枝にはカメラと録音機を見せはした。中身の確認はともかくとして、カメラと録音機があるって事を二枝に知らしめられたから良しとする事にし、僕は3時間目、4時間目の授業を受けた。そして、給食の時間が終わり、昼休み。


「おい、どこ行くんだよ。光晃」


 教室を出ようとしたところで秀義に絡まれた。


「別にどこでもいいでしょ。君に何か関係ある?」


 今もそうだ。僕がどこで何をしようと他人には関係ない。


「べ、別に関係ねーけどよ……」

「でしょ?だったらいいじゃん」


 僕は秀義の横を通り教室を出る。しかし────────────


「どこに行くんだい?岩崎君?」


 今度は須山に絡まれた。しかも、教室を出てすぐ。この日の僕は短い間に2人の人間に絡まれるという珍事に遭遇した。当時はそんな事考えなかったけど


「僕がどこに行こうと関係ないでしょ。通り道にいられると邪魔だから退いてくれない?」


 秀義の次は須山。本当にうっとおしいと思った。僕から話し掛けたのならまだしも相手から声を掛けられ、行き先を聞かれる。僕にそんな事していいのは僕と親しい間柄の人間だけ。


「そ、そうだけど、行き先くらい教えてくれてもいいんじゃないかな?」


 関係ないって言ったばかりなのにも関らず食い下がってくる須山。秀義もそうだけど、すぐに僕がどこに行き、どうするかなんて解るのに


「だから、僕がどこに行こうと君には関係ないってさっき言ったでしょ?それとも、腕づくで聞き出す?まぁ、そうしたら誰かが先生に言いに行って君のした事なんてすぐにバレると思うけど」

「くっ!あんまり調子に乗るなよ……!」


 三下の悪党のような捨て台詞を残し去って行く須山。でも、この後で須山は自分がどんな目に遭うかはこの時点では想像してなかったと思う。じゃなかったらあんな捨て台詞吐けないもん


「さて、ようやく面倒なのがいなくなった……」


 教室を出る前に秀義に絡まれ、教室を出てすぐに須山に絡まれる。すでに2人に絡まれた僕にはこの後の展開なんて容易に想像が付いた


「どこ行くの?岩崎君」

「はぁ………………」


 秀義、須山と来て宮村さんが来ないわけがなかった。想像通りとはいえ僕は溜息しか出なかった。いや、溜息が出るだけマシだったのかもしれない


「何?溜息なんて吐いて」

「いや、別に。それじゃ」


 僕は宮村さんの質問を無視し、職員室を目指そうとした。


「待って」


 しかし、そうはいかなかった。僕は宮村さんに肩を掴まれたからだ


「何かな?」

「どこ行くの?」

「別にどこだっていいでしょ。それに、僕が教室にいる時はどこか行けって視線を送ってくるのに僕がどこかに行こうとすると聞くって変じゃない?」

「………………」


 宮村さんも秀義も須山もそうだったけど、僕が教室にいるとどこか行けっていう視線を送ってきた。でも、僕がどこかに行こうとするとどこに行くかを聞くのは変だと思う。それもこの日で終わりだけど


「君と話している時間が惜しいんだ。僕はもう行くよ」


 僕は宮村さんの返事を待たずして歩き出した。当然、宮村さんがどんな表情で何を言ったかなんて知らなかった。それを知ったところで僕には関係なかったから気にも留めてなかったんだけど




 いつもの僕は職員室へ行って教頭か校長を探す。でも、この日だけは違った。僕のいるのは校長室の前。


「校長先生、お話があるのですがお時間よろしいでしょうか?」


 僕はノックを3回した後、ザックリと要件を伝えた。廊下じゃ誰が聞いてるかわからなかったので具体的な要件は伝えていない。二枝はともかく、他の先生なら別に僕がイジメられている事を聞かれてもよかったんだけど、二枝に聞かれたらと思うと…………ね?


『岩崎君か。入りたまえ』

「失礼します」


 校長の返事を聞き中に入る。校長室に入るのなんて小学校1年生の時以来だったかな?その時の校長は定年退職してしまった。でも、新しく来た校長もなかなかにいい人だった


「ふむ。まぁ、立ってるのもなんだから座りなさい」

「はい」


 僕と校長はテーブルを挟んで向かい合う形で座る。校長室ってどうしてソファーがあるんだろう?小学生の時、僕はそれが謎だった


「さて、話とは何かな?」

「これの事なんですけど……」


 僕が取りだりだしたのは二枝に見せたカメラと録音機。二枝はこの2つを持ってきた事を咎めたけど、校長はどうかなと内心ワクワクしていた


「これは?」

「小型カメラと録音機です。下駄箱に泥を入れられた時以外の事が収められています」

「ふむ……これ、借りてもいいかね?」

「はい」

「では、放課後に放送で呼ぶ。いいね?」

「はい」


 僕はカメラと録音機を渡して校長室を出た。本当は担任が解決するべき問題なのかもしれない。だけど、当の担任がまともに取り合ってくれないし、当時の僕は学年主任の事なんて知らなかったから結局校長とか教頭に頼る他なかった。今ではそれがよかったと思っている




 放課後、校長の宣言通り僕は校長室へと呼び出されていた。僕の他に担任である二枝、僕にしつこく絡んできた秀義達。そして、学年主任と思われる男性教師が校長室へと集められた


「二枝先生と名倉君達はどうして呼ばれたか解っているかね?」

「「「「…………………」」」」


 呼ばれた理由を聞かれて無言になる秀義達。コイツ等は自分達がどうして呼ばれたか解ってないみたいだった。そりゃそうか。自分達は校長室へ呼ばれる事は何もしていないと思っているんだから解るわけないか


「解ってないみたいだね。はぁ……」


 自分の問いに答えられない事に呆れて吐いた溜息なのか、それとも、事の重大さを理解してない事に呆れて吐いた溜息なのかは知らない。でも、校長が呆れて溜息を吐いた事は小学生の僕でも理解するのは簡単だった


「校長先生、私はどうして呼ばれたのでしょうか?」


 二枝達が無言の中、口を開いたのは学年主任と思われる男性教師。そりゃ関係ない人間からしてみればどうして自分が学校のトップに呼ばれたのか不思議に思っても無理はない


「君を呼んだのは二枝先生から何か聞いてないかの確認だよ」

「は、はあ、確認ですか……」

「うむ。二枝先生から岩崎君がイジメに遭ってるという報告は受けていたかな?」

「いえ、そんな話は聞いてません」


 男性教師にとって僕がイジメられている事は寝耳に水だったらしい


「そうか……では、これを見てくれたまえ」


 校長の持っていたパソコンには秀義達が僕の教科書に落書きしている姿が映し出された映像。よりにもよってその映像を選んできたところを見ると僕が暇潰し程度にしか思ってなかった事も校長にとっては重大な事のようだった


「こ、これは……」

「「「「…………………」」」」


 目の前で流される映像を見た男性教師の表情は強張り、二枝達は無言になってしまった。


「そこにいる名倉君達が岩崎君の教科書に落書きをしている映像だ。他にもあるよ」


 校長が次に見せたのは秀義達が僕の机に落書きしている映像だった。僕にとって教科書に落書きされたのは痛かった。でも、学校にとっては僕の教科書より机に落書きされてた方がダメージが大きいのではないかと思う







今回はイジメ問題最終の前編でした

光晃がされた事を見た第三者は言葉に詰まったようですが、私でもドン引きします。いろんな意味で

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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