【過去編22】僕がイジメられている事が両親にバレる
今回は光晃がイジメられている事が両親にバレる話です
ようやく両親が光晃のイジメを知るところまで来ました
では、どうぞ
二枝が教頭に呼ばれた日から時は流れ6月。二枝が教頭に飛ばれた次の日の朝のHRでクラス内でイジメが起きている事を伝えた。まぁ、言ったところで無駄なんだけど。クラス全体が関わっている事だし、誰がイジメを受けているか二枝は名前を出さなかったけど、言わなくても誰がイジメられているかなんていうのは明白だった。で、当のイジメられている僕はと言うと──────────────────
「そろそろ飽きた……」
須山達のイジメに飽きていた。別にイジメられて喜ぶ趣味なんてないけど、ただ、ワンパターンだとされている方としても飽きてくる。カレーは好きでも毎日同じだと飽きてくるのと同じで毎日机の上に花瓶、毎日机に落書きだと飽きる。そんな事を考えながらただボンヤリと授業を受けていた
「もっとこう、レパートリー増えないかな……」
イジメられて喜ぶ趣味はない。だけど、新しい刺激が欲しいとは思っていた。だってそうだろ?イジメられているという現実を悲観するよりもコイツ等をどうやって潰すかって考えてた方が楽しいじゃん
「はぁ……この際だから靴に泥でも入れておいてくれないかな?そうすれば動画と音声も合わせて突き出してやるのに……」
忙しすぎると余裕がなくなるってよく言うけど、暇過ぎるとやる事や刺激が欲しくなるものだ。僕の暇潰しはかなり歪んでいるようだったけど。
「そもそも、秀義達はどうしてこんなバカな真似し始めるようになったんだっけ?」
須山は自分に興味がないどころか忘れていた僕に対しての恨み。秀義は幼馴染だと思っていたのに僕が裏切ったと思い込んでの行動。で、宮村さんが3年の時に一緒にいたのにっていう恨み。クラスメイト達は面白いからと言う理由での便乗。
「くだらない。そもそも、須山との初めての会話すら覚えてないし、秀義に至っては単なるすれ違い。で、宮村さんは捨てられた恋人みたいな理由。うわぁ……」
須山達と僕とでは何かが圧倒的に違うのは確かだった。っていうか、どうして僕は人に興味がないんだっけ?葵衣と付き合っておいて今更な気がするけど、僕は気が付いたら人に興味がなかった。でも、それがどうしてなのかはわからない。教師や教育実習生が嫌いになったのだって小さな事が積み重なった結果、嫌いになった。
「揃いも揃ってストーカーまっしぐらじゃん」
イジメをする理由なんて理解できない。もしかしたら単純な理由かもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、伝えたい事があるならちゃんと言葉にしなきゃ伝わらない。僕は教師だろうと教育実習生だろうと授業がつまらなかったら何等かの行動で示す。でも、秀義達は違った。
「僕にも悪い部分はあるんだろうけど……こればかりはなぁ……」
この日の僕は自分にも悪いところがあるんだろうとは思いつつこれからどうしようか考えた。でも、根本的な部分は変わらない。興味のないものに時間を使うほど僕は優しくないしね。そう考えると高2まで秀義とどうして一緒にいたんだろうって思うよ
「………………………………………………………………嘘でしょ?」
その日の下校時の事だった。外靴を取ろうとして下駄箱を開けると中から大量の泥が
「これじゃ帰れないじゃん……でも、少しは考えるようになったんだね」
目の前にある泥だらけの靴を見て泣き崩れるわけでも何でもなく、イジメのレパートリーが増えた事に若干の喜びを感じていた。
「この時間だと真理お姉ちゃんがいるはずだから来てもらうしかないじゃん」
両親にもそうだけど従姉である真理姉さんにも僕がイジメられている事は知られたくなかったけど、靴が泥だらけじゃ僕は帰れないし、仮に泥だらけの靴を履いて帰ったとしても誤魔化しきれない。となると迎えに来てもらうしかない。でも、それは僕がされている事を知られるという事だった
「うわぁ……めんどくさいなぁ……」
1人で抱え込むなんてカッコいいものじゃない。ただ、遊び道具が減ったり横取りされるのが気に入らなかった
「でも靴がこんな状態じゃ仕方ないか」
自分の身内にイジメがバレるのだけは避けたかったけど、靴が泥だらけにされてるんじゃ仕方ない。僕は諦めて職員室に向かった
「失礼します」
「おや、岩崎君。どうしたんだね?」
職員室に入り、出迎えてくれたのは運がよかったのか悪かったのか校長だった。手にマグカップを持っていたから丁度コーヒーを淹れたかこれから淹れるところのようだったけど
「帰ろうとして下駄箱を開けたら靴が泥だらけでしたので電話を借りられないかと思って来ました」
「ふむ……では、その泥だらけの靴を見せてもらってもいいかな?」
「はい」
校長は一旦マグカップを置きに校長室に戻り、その後すぐに僕の元へと戻ってきた。で、戻ってきた校長と僕は一緒に玄関へ
「…………………」
僕の下駄箱を見た校長は顔を歪ませて無言になってしまった。
「こ、校長先生?」
特に悪い事をしてなくても威厳のある人が無言になると恐怖を感じる。どうしてかは知らないけど
「あ、ああ、済まない。ところで岩崎君の担任は誰だったかな?」
僕が声を掛けてようやく歪ませていた顔が元に戻った。でも声からは威圧的な何かを感じさせられた
「に、二枝先生ですけど……?」
「そうか……」
二枝の名前を出すと今度は渋ったような顔をした校長。二枝は前に教頭にも何か言われたみたいだったから校長にまで何か言われるのはさすがに同情するしかない
「に、二枝先生は僕がクラスメートにされている事を知ってますよ?」
二枝を庇うつもりはなかったけど、校長にまで説教されたら可哀そうだというほんの僅かな哀れみから小学生だった僕はない語彙力の中から必死に言葉を紡ぎ二枝を擁護した
「それは知っとるよ。一応、他の先生達にも知らせてはあるからね。私は二枝先生を怒る為に聞いたのではないよ」
「え……?」
「岩崎君。君にはまだ解らないかもしれないけどね。君がされている事は長くなるととんでもない事になりかねないんだよ」
校長の言うとんでもない事。それが何なのか小学生の僕には解らなかった。今思い返すとイジメが更に酷くなって僕が学校に来なくなったり自殺してしまうかもしれないって事を言いたかったのかもしれない
「はい……」
「この事は二枝先生とご両親にお話しするけどいいね?」
「はい……」
内心は遊び道具が減るからよくないとは思っていても校長から拒否権はない的なオーラが発せられていた。僕はそれに従うしかなかった
その後、校長は宣言通り二枝に僕の下駄箱に泥が入れられてた事を話し、二枝から家に電話が行った。
「「「「…………………」」」」
夕飯が終わり一旦は部屋に戻った僕だったけど、帰宅した両親によって僕と真理姉さんはリビングへ呼ばれる事になった。話題はもちろん、僕の受けているイジメの件についてだった。どうやら真理姉さんが電話で言ったみたい
「光晃……」
「何?」
「お前、学校でイジメられてるんだってな」
「そうみたいだね」
「みたいだねってお前な……」
自分がイジメられているにも関わらず他人事みたいに話す僕に呆れる父。僕からしてみれば他人事のようなものだから仕方ない
「光晃、どうして言ってくれなかったのかしら?」
「別に言わなくてもいいかなって思っただけ。ハエが食べ物に集っていても誰かにそれを言わないでしょ」
「この子は全く……」
僕の言い分に父同様に呆れる母。
「光晃、言いづらかったって気持ちは解るよ?それでも、お姉ちゃんには言ってほしかったな……」
父や母とは違い悲しそうな表情で目に涙を溜めていた真理姉さん。声も涙声だった
「さっきも言ったけどさ、食べ物にハエが集ってたからってそれを誰かに言うような真似しないでしょ。それに、お父さん達にも先生達にも言ってなかったけど、今までのイジメの証拠はもうある」
「「「え……!?」」」」
僕の言葉に意外そうな顔をした4人。でも、僕はイジメが発覚する前に小型カメラと録音機の話をしたけど、覚えてなかったのかな?
「お父さんから前に小型カメラと録音機を借りたでしょ?」
「あ、ああ、虫の生態を観察したいって言われて貸したが……」
「うん。ちゃんと虫の生態を観察できたよ」
「虫ってまさか……」
イジメの証拠と虫の生態で父は全てを理解したみたいだった。僕が観察してた虫が何を指すのか、どうしてイジメを受けている事を言わなかったのかを
「うん。そのまさか。でも、もう飽きちゃったから止める。明日も学校だから部屋に戻るね?」
「あ、ああ……」
部屋に戻る前に真理姉さん達の顔をチラッとだけ見てみたけど、その目は信じられないようなものを見る目だった。
「さて、潰しますか」
次の日、僕は今まで受けたイジメの証拠映像と音声を持って登校した。イジメを受けてから1か月も経ってなかったけど、秀義達にこれ以上新しい何かを期待するだけ時間の無駄だし、それに、僕の持ち物をダメにされても困る。特に教科書
「最初はセンスがないくらいしか思わなかったけどいい暇潰しにはなったよ」
イジメられて悲しいとかは全くなかった。テレビでタレントの昔のエピソードとかでイジメられてましたってのがあるけど、イジメている時は楽しい。でも、それが何年も時が経ち、バレて困るのはバラした方じゃない。バレた方だって僕は知っていた。秀義達も結局同じだ。バレた時に困るのは奴らであって僕じゃない
今回は光晃がイジメられている事が両親にバレる話でした。
なんて言うか、ようやくアニメとかドラマとかで見る陰湿なイジメの王道に来て両親にバレましたが、それと同時にクライマックス!
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




