【過去編17】僕はオモチャ達の声を聞く
今回は光晃がイジメられる理由です
最初に言いますが、理由メチャクチャしょぼいです
では、どうぞ
秀義達というオモチャを手に入れた日の翌日。僕は珍しく教室に1番乗りを果たしていた。後にも先にも僕が教室に1番最初に来たのは小4の時1回きり。この時だけだ。まぁ、この時もやる事があって早く来なければいけなかったんだけどね。そのやる事とは……
「さて、カメラの場所は……僕のロッカーでいいか。で、録音機は椅子の裏に張り付けてっと……」
花瓶を置かれただけでイジメだと言うのは大袈裟な。それはあくまでもイジメた側と仕事をしたくない教師の言い分であり、本来、イジメられている方がイジメだと感じたらそれはイジメになる。まぁ、イジメられたと感じる感じ方は人によって違うから些細な事でもイジメと言う人もいるから何とも言えないんだけどね
「まぁ、あの秀義達でどれくらい遊べるかはアイツら次第か……」
幼い頃に父から『イジメに加担する奴は将来彼女(彼氏)ができない。だから、お前はイジメなんてしたらダメだぞ』なんて言われた事がある。その時は理解不能だったけど、今の秀義を見ていると父の言ってた事は本当だったんだと思う。彼女無しだし
「さて、玄関に行ってから図書室で時間潰すか……」
イジメがエスカレートしない限り下駄箱に手を出すなんて事をしない。そう思うのが当たり前だけど、相手は秀義達。まぁ、僕にとっては羽虫程度の存在だったけど、飛び回られたら面倒だった
「さて……」
図書室に来たのはいい。だけど、読みたい本が特になかった。小学校に置いてある本は当たり前だけど、小学生向けのものばかりだ。伝記だって小説だって振り仮名が振ってあるし、挿絵だってある。挿絵があるのはラノベも変わらないけど。で、図書室の本を全て読み終えたなんて事はないけど、読みたい本がなかった僕は結局寝て過ごした
「騒がしいくなってきた……」
学校内の騒がしさで起きた僕は教室に行くよりも先に玄関に向かい、外靴を下駄箱に入れ、教室に向かった。
「……………」
教室に入ると案の定机の上に花瓶が置かれていた。だけど、この時は花瓶が置かれているだけじゃなかった。ご丁寧に菊の花が活けてあった。そして、黒板には『岩崎光晃は万引き常習犯』と大きく書かれていた。イジメられている立場の人間がこんな事を思っちゃいけないんだろうけど、この時の僕は花を活ける事を覚えたオモチャ達に感心してしまった
「やぁ、岩崎君。おはよう」
須山は隠すのを止めたのか、ニヤけ顔で声を掛けてきた。まぁ、須山とごく一部だったらニヤけ顔も隠すんだろうけど、クラス全体がこのイジメに加担しているんだ。隠す必要なんてなかったんだろう。
「おはよう」
僕はそれだけ言って須山の横を通ろうとした。しかし──────────────────
「岩崎君はこの光景を見ても何も感じないのかい?」
須山に呼び止められてしまった。この光景とは机の花瓶と黒板のデタラメの事だろう。
「別に興味ないし。それより、先生が来る前に黒板の落書き消した方がいいんじゃないの?」
「ぐっ……そ、そうだね……」
苦虫を噛みつぶしたような顔をしている須山。そして、内心じゃ『そろそろ机に花瓶と黒板に落書きに飽きてきた』と思っていた僕。小学校じゃ退学なんて聞いた事がないから退学に追い込むなんて事はできない。できて精々居ずらくしてやるか、転校させるくらいだ
「だよね?書いた奴と日直で早く消してくれないかな?その間に僕は花瓶を元の場所に戻してくるから」
そう言い残し僕は教室を出た。もちろん、カバンを背負ったまま。
「花瓶を置かれただけじゃ足りないか……」
クラスの連中が何かをした証拠にはなるけど、花瓶を置かれた場面の証拠だけじゃまだ足りなかった。理由は簡単。『一時的に岩崎君の机に花瓶を置かせてもらっていただけです。その後で戻すのを忘れていました』なんて言い訳されたら対処のしようがない。音声だって『芝居の練習してました』なんて言われたら少し苦しいけど、口が上手い奴なら先生を強引に納得させられる可能性があるからだ
「教科書を置いてきた方がよかったかな……?」
教科書代を出してくれている両親には申し訳ないけど、具体的な証拠を手に入れる為なら僕の持ち物を犠牲にするしかない。上手くいくっていう保証はなかったけど、失敗する可能性はゼロじゃなかった。
「あ、ここか……」
男子トイレにたどり着いた僕は花瓶が置かれていたような跡を見つけ、そこに花瓶を戻した。イジメなんて馬鹿馬鹿しいと思う。でも、ある意味でイジメを行っている人間に感心してしまう。僕の机に花瓶を置くためによくもまぁ、毎度毎度トイレまでこれたものだと
「そもそも、どうして僕なんだろう?」
小学生のイジメとはある意味で質が悪い。大人のイジメはイジメられている人間が気に入らないから等の明確な理由があったりする。しかし、小学生のイジメは流行っているからとかそんな理由だったりする。イジメられてる方としては迷惑な事この上ないけど、イジメている方は遊びの範疇だったりするので認識が違ってくる。僕はどんな理由であれ平穏な学校生活を壊す奴は潰すだけなんだけど
「考えたところで無駄か……」
考えても仕方ない事は考えないようにして僕は男子トイレから出て教室に戻る。
「よぉ、早かったな。光晃」
さっきは須山で今度は秀義か……今年は教師や教育実習生に絡まれたくないなぁと思っていた。しかし、小4ではイジメっ子と化した幼馴染(笑)に絡まれる。そう言えば、小4に秀義も一緒になって僕をイジメてきたけど、その時の証拠ってどうしたんだっけ?
「別に花瓶を戻しに行っただけなのに早いも遅いもないでしょ。それより、僕の前に立ちふさがらないでくれない?邪魔なんだけど?」
「くっ……それは悪かったな!」
「そう思うなら早く退けよ」
「ちっ……」
秀義も須山同様に苦虫を噛み潰したよう顔をして去って行った。教師然り、教育実習生然り、一言えば十も百も帰ってくる僕にどうして絡んでくるんだろう?これは多分、永遠に解けないであろう謎だ
「やっとウザいのがいなくなった……」
秀義がウザいのは今でも変わらないけど、この時は輪を掛けてウザかった
「あれあれ?岩崎君もう戻ってきたんだぁ~?」
須山、秀義のウザコンビから解放されたかと思った矢先、今度は宮村さんに絡まれた。
「何?戻ってきたら悪いわけ?」
僕が自分のクラスに戻ってきたら悪いと言われる道理はない。それに、戻ってこなきゃ授業を受けられない
「べっつにぃ~?ただ、よく戻ってこれたなぁ~と思っただけ」
人を値踏みするような態度を取る宮村さん。人を値踏みするような態度を取る人に聞きたい。アンタは人を値踏みできるような人間なのかと
「あ、そう。じゃあ、もういい?っていうか、絡まないでくれない?ウザいし」
「なっ!?こっちは心配してあげてるのに!!」
出たよ……心配してあげてる。これって他人想いの言葉だって言う人いるけど、実際は『心配している僕(私)カッコいい(可愛い)でしょ?』っていうしょうもないアピールだと思う
「頼んでないし、いらないよ。っていうか、さっさと戻れよ。うっとおしいな」
「そ、そんな言い方しなくてもいいじゃん!私は本当に心配で声掛けただけなのに!」
宮村さんが大声を出したせいでクラスメイトの視線が僕達に集中する。しかし、そんなもの僕には関係なかった。心配で声掛けただけ?人を値踏みするような態度で?
「さっきも言ったけど、頼んでないし、いらないよ。それに、人を値踏みするような態度だったし、前に僕の机に花瓶が置かれていた時にニヤついてた人に心配されても全く嬉しくないから」
「そ、そんな……私は本当に心配で……」
「だから、君の心配なんて必要ないの。解る?」
我ながら酷い言い草だ。葵衣が実習生の時に言わなくてよかった……。言ったらどんな事になるか……嫌な予感しかしない
「岩崎君のバカ!!」
宮村さんはそう言って泣き出してしまった。そんな彼女を見て僕を非難してくるクラスメイト達。あれか。泣かせた奴が悪者で泣いた奴が被害者っていう事だね
「バカでも何でもいいよ。それに、泣いたら何でも許してもらえると思うなよ?心配した?ギャグとしては笑えるけど、本気で言ったとしたら笑えない」
ギャグの範囲だったら宮村さんの言った事は笑えるけど、本気だったら笑えない。矛盾しすぎている
「おい!光晃!宮村に謝れよ!」
泣いてる宮村さんを庇うかのようにして秀義登場。高校生となった今でもバカだけど、この頃って本当にバカだったんだ
「どうして?僕はいらない心配を素直にいらないって言っただけだよ?」
今なら例え必要のない心配であったとしても建て前ではお礼を言う。でも、小学生の頃というのは発達段階だったりするもので、本音と建て前を使い分ける事が難しいなんて子も中にはいる。小学4年ともなれば少しはそれを覚えるだろうけど。でも、それを踏まえた上で僕はあえて本音を言った
「それでも……口に出して言う事ないだろ!!」
秀義の言っている事は正しかった。ただ、この時点で証拠がないから何とも言えなかったけど、クラス単位でイジメがなかったらの話だけどね
「そうだね。このクラスの誰かが根も葉もない事を書いたり、僕を死人扱いしなかったら口に出して言う事もなかったんだけどさ……」
そう、イジメがなければ僕だってお礼を言うくらいはしたよ?
「だったら!!」
「でも、それはあくまでもこんなふざけた事をしてなかったらの話。僕にとってこのクラスなんて別にどうでもいいし」
イジメが起きる前からそうだった。別にクラスメイトがどうなろうと僕にはどうでもよかった。僕はただ休み時間には本を読んで静かに過ごせるような学校生活を望んていた。でも、教育実習生の下らない価値観によりそれは叶わぬものとなった
「光晃!!」
「大声で人の名前を呼ばないでよ。知らない人」
僕はそれだけ言って自分の席に着いた。余談として、宮村さんと秀義には1日中睨まれ、その視線には気づいていたけど、僕には関係なかったので放置した。で、放課後、カメラと録音機を回収した僕は自室いた
「早起きして学校に行ったんだから何か収穫があってくれなきゃ困るんだけど……どれ、収穫はあったかな?」
気の弱い人間なら自分の机にイタズラされている場面やその時のやり取りなんて聞くのが怖いと思うだろうけど、僕は別にそんな事は思わない。そんな僕は録音機の再生ボタンを押した
『須山君、またやるの?』
最初に聞こえたのは宮村さんの声。またやるのって事は前にもやったんだろうな。まぁ、知ってたけど
『当たり前じゃないか。岩崎君は俺に興味ないどころか俺の事を覚えてなかったんだし。それに、宮村だって岩崎から忘れられたんだろムカつかないのか?』
『ムカつくよ?当たり前でしょ?3年の時にあれだけ一緒にいたのに忘れるなんて最ッ低!!』
『宮村もだけどよ、名倉はどうなんだ?幼馴染の立場として岩崎に忘れられたんだ。どう思う?』
『ムカつく……俺はずっと幼馴染だと思ってたのに……光晃はそう思ってなかったんだ……』
僕はこれ以上この音声を聞いても無駄だと思い、停止ボタンを押した。それで得た収穫は秀義達はただのかまってちゃん。それだけだった。呆れてものも言えなかった。でも、主犯が須山だって事はわかったからよしとして、このイジメ?について少しだけ考える事にした
「バカ共がかまってほしいってのは理解したし、今回の事は僕にも原因が全くないわけじゃない。でも、アイツ等……邪魔だなぁ……」
構ってほしくて花瓶を置いたりしたのは理解した。けど、そういうのは小学校低学年で卒業しなきゃいけないと僕は思う。で、構ってほしくてしたのは理解したのはいいとして、じゃあ、これから須山、秀義、宮村さんをはじめとしたクラスメイト達が同じ事をしでかさない保証なんてない。
「彼等の想いを知ったところで僕には関係ないね。悪いけど、邪魔者は排除させてもらうよ」
カメラの中身は確認してなかったけど、音声さえあれば十分だった。須山達を排除するにはね
今回は光晃がイジメられる理由でした
最初に言いましたが、メチャクチャしょぼい理由でした。許す許さないはされた側の心次第だとして、それをしていいと言う理由にはならないと思います。あくまでも個人的な意見ですが
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました




