表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/214

【過去編16】僕はクラスメイト達という名のオモチャを手に入れた

今回の光晃は今までで1番酷いです

何が酷いって・・・・もういろいろと酷いです

では、どうぞ

 言ってみれば意外と何とかなる。僕はそれを実感したのは特に面白くもないバラエティー番組とドラマを見た次の日、珍しく真理姉さんを含めた家族全員での食事の時だった


「ねぇ、父さんって録音機と小型カメラなんて持ってる?」


 この時の僕は内心、持っているはずがないと思って聞いてみた。持ってたらいいかなくらいの軽い気持ちだった。だけど、返ってきた答えは────────────


「持ってるが、何に使うんだ?」


 意外な答えだった。録音機も小型カメラも持っている。父はそう答えた


「あ、うん。ちょっと虫の生態を観察するのに小型カメラが必要で虫の鳴き声を録音したくてね」

「そうか。で、録音機と小型カメラは何台くらい必要なんだ?」

「何台って父さんは録音機と小型カメラを何台持ってるの?」


 録音機と小型カメラを父が何に使っているかなんて事には興味がなかったけど、この時の僕はできるだけ多くの録音機と小型カメラが必要だった


「録音機10台に小型カメラ10台だな」


 合計20台……いくら何でも数が多すぎる。でも、僕としては嬉しい誤算だった。


「そ、そう。じゃあ、録音機5台、小型カメラ5台貸してくれると嬉しいんだけど」

「光晃が観察する虫ってそんなに数が多いのか?」

「まぁ、数が多いかって聞かれればそうだね。多いね」


 僕の言う虫は昆虫ではなく、秀義を含めたクラスメイト達。数が多くなるのは必然だった


「そうか……ま、勉強熱心なのはいい事だ。で、いつ渡せばいい?」

「今日の夜でいいよ。急ぐものでもないし」

「わかった」


 今でも思うけど、案外言ってみるものだ。ないと思っていると意外とあったりする。で、食事を終えた後、僕は小学校へ、真理姉さんは大学へ、両親は仕事へと向かった。


「またか……」


 教室に入るとまた机の上に花瓶が置いてあり、クラスメイト達はニヤニヤしていた。これで3回目なんだけど、いい加減、同じやり方だとシラケるという事を学習してほしい。当時、イジメのターゲットになっていた僕はそう思った。


「おはよう、岩崎君!また花瓶が置いてあるね!」

「…………」


 ニヤついた顔で宮村さんが寄ってきた。多分、宮村さんは僕の机に花瓶を置いた犯人を知っている。でも、簡単に口を割る事はない。それに、この時の僕は秀義も宮村さんも人間としては見ていなかった


「あれ?無視?岩崎君、酷くない?」


 宮村さんの非難の声にクラスメイト達も賛同し、ヤジを飛ばす。けど、僕は無視していたわけじゃない


「君は誰?」

「なっ────!?」


 僕の発言に固まる宮村さんとクラスメイト達。そりゃ当たり前か。自分が見下しているであろう相手から忘れられてるなんて現場を目の当たりにしたら言葉も出てこないか


「話しかけてくるって事は僕の知り合いだろうけど、僕には机に花瓶が置かれているのを放置した挙句、ニヤついた顔で寄ってくる知り合いなんていないんだけど?」


 口ではそう言ったものの、内心ではワンパターンなやり方に飽き飽きしていた。


「ひ、酷い……」

「酷い?それは僕の事を言っているのかな?それとも、花瓶を置いた奴の事を言っているのかな?」

「岩崎君に決まってるじゃん!忘れるだなんて酷くない!?」

「酷いも何も興味のない人間の事を覚えていてあげるほど僕は優しくないよ?それに、僕の机に置いてある花瓶は男子トイレから持ってきたんだよね?トイレなんて不潔な場所から持ってきたものを置いた奴の方がもっと酷いと思うけど、君はどう思う?」


 社会生活を営む上で人の顔とか名前を覚えられない人間は嫌われやすい。という話を聞いた事がある。でも、その人に興味がなかったとしたらどうだろうか?覚えてなくても無理はない。で、普段勉強したり給食を食べたりする机にトイレから持ってきた花瓶を置く奴とクラスメイトの名前を忘れたと言う奴。どっちが酷いか?これは比べられるものじゃない。だって、比べる対象が間違ってるんだから


「そ、それは……」


 小学生だからこの問題は比べられるような問題じゃないという考えにはならないのか、答えを言いよどむ宮村さん


「答えれれないの?ねぇ?」

「それは……」

「質問の意味が理解できないならもっと簡単に言おうか?道端の石ころの存在を覚えてない奴と地面に落ちた食べ物を拾って食べる奴。どっちが酷いと思う?」

「そ、それは……地面に落ちている食べ物を拾って食べる人……だと思う……」

「だよね?で、さっきの質問だけど、全く興味のない君の名前を覚えてない僕とトイレなんて不潔な場所から持ってきたものを置いた奴。どっちが酷いと思う?ねぇ?」


 記憶力と清潔感じゃ比べるのは変だ。しかし、僕をイジメの対象にしたのが運の尽きだった。今ではそう思う


「そ、それは……と、トイレの花瓶を置いた人……」


 宮村さんは泣きそうになりながらもなんとか言葉を紡いだ。泣きそうになったからと言って僕は手加減しないし、泣いたからと言って許すつもりはない


「でしょ?で?君はさっき何て言ったっけ?」

「えっ……?」

「いや、“えっ……?”じゃなくて、さっき何て言った?確か、名前を知らないって言った僕に対して酷いって言ったよね?トイレから持ってきた花瓶を机に置く奴には何も言わないのに?ねぇ、それは何で?」

「あ、いや、それは……」


 宮村さんの目には涙が溜まっており、あと少し突けば泣き出してしまう寸前だった。


「それは?それは何?」

「そ、それは……」

「うん、それは?」

「それは……」


 宮村さんはとうとう何も言えずに泣き出してしまった。そんな宮村さんを見ていたクラスメイト達からは非難の声が上がる。中には『謝れ!』なんて言ってくる奴もいた。そして、言うだけじゃなく、それを行動に移すバカがいた。


「光晃!お前!女子泣かして恥ずかしくないのかよ!!」


 そのバカとは秀義だ。昔からそうだけど、状況判断ができないバカ。そして、他の連中と一緒で僕のイジメを楽しんでいるであろうバカ。


「女子?僕が泣かせたのは女子だったの?」


 この時の僕はバカになったわけじゃない。ただ、女子を泣かせたという自覚がなかった。ただ、それだけだった


「はぁ!?宮村はどう見たって女子だろ!?」

「へぇ~、あの子、宮村さんって言うんだ」


 僕は大袈裟におどけて見せた。秀義ほど扱いやすい奴はいなかった。コイツの怒りに火を点けるなんて簡単な事だった


「光晃!!お前!!」

「え?何?君は僕の事知ってるの?」


 この状況だけ見れば僕が完全に悪者で秀義が女子を泣かせた非道な男子を成敗しようとしている正義のヒーローになる。実際はイジメに加担した宮村さんを黙らせた僕に秀義が逆切れしているだけなんだけど


「俺はお前の幼馴染だ!!」


 クラスメイト達の煽りの声が飛び交う中、幼馴染宣言をする秀義……もといバカ。今もそうだけど、世間体が悪くなるから幼馴染って事にしてあるけど、僕は秀義を幼馴染だと思った事はただの1度もない


「え?僕に幼馴染なんていないけど?君、頭大丈夫?」


 僕に幼馴染なんていない。いや、このイジメ問題が起こる前だったら秀義を3千里譲って幼馴染と認識しただろけど、この問題で秀義もクラスの連中と一緒になってイジメをするようになってからは違う。コイツはただの道具だ。僕の使いたい時に使う道具。コイツの代わりなんていくらでもいる


「えっ……?俺は光晃の幼馴染じゃないのか……?」


 絶望したような顔を見せる秀義と幼馴染として認識してなかったので秀義がどうして絶望しているのかが理解できない僕


「うん、違うね。だって僕は君の事なんて知らないし、それに、僕の周囲には自分がされて嫌な事を人にする奴なんていないもん。君は僕の幼馴染だって言ってたけど、それって君の勘違いなんじゃないの?そもそも、仮に君が僕の幼馴染だとして、どうしてこんなバカみたいな事に参加しているの?」


 自分がされて嫌な事は人にしない。こんなの幼稚園児でも知っている事だ。でも、それを平然とする奴がいるから世の中って理解できない。そんな話は置いといて、コイツは自分が本気で僕の幼馴染だと思っていたらしい


「それは……いつも澄ましているお前をからかってやろうと思っただけで……」

「うん、からかうにしてもこれはそんなレベルじゃないよね?その辺りはどう思っているの?僕の自称幼馴染君?」

「そ、それは……悪いとは思っている……」

「ふぅ~ん、“悪いと思っている”ねぇ~……へぇ~悪いと思っているんだ~。で?」

「ご、ごめん……」


 このやり取りを見るとわかるけど、秀義はバカだ。今も昔も。僕は謝れとは一言も言ってない。


「いや、僕は謝れって一言も言ってないんだけど?」

「でも、さっき、で?って言ったし……」

「うん、言ったね。でも、謝れとは一言も言ってないよね?勝手に話を進めないでくれないかな?」

「あ、いや、さっきのは謝る流れじゃなかったのか!?」


 確かに、この流れなら謝るのが普通だと思うけど、僕は謝れとは一言も言わなかった。だって、謝罪なんて望んでなかったし


「流れ的にはそうかもしれないけど、僕は謝ってほしかったわけじゃないよ?」


 僕は謝罪がほしかったわけじゃなく、本当に悪いと思っているのなら関わらないでほしかった。ただ、それだけだった


「じゃ、じゃあ!どうすればいいんだよ!!」

「わお!逆切れ!悪いと思うなら謝るんじゃなくて態度で示してよ。あ、僕はなんか気分悪いから職員室に行ってから帰るけど、今の事は先生には内緒にしてあげるよ。だから、君達も僕が女子を泣かせた事を先生に言っちゃだめだよ?」


 それだけ言い残し、僕は教室を後にし、職員室に向かった。そして、その後、僕は花瓶の件を二枝に一切話さず、気分が悪いから帰ると一方的に伝えて帰宅した。


「さて、イジメなんてしている秀義達(オモチャ)でどうやって遊ぼうかな?」


 僕がクラスメイト達を人として見るのを止めた瞬間だった

今回の光晃は今までで1番酷かったです。

何が酷いって仲良くしていた女子の名前を唐突に忘れた挙句、幼馴染をいなかった事にしてるし・・・・もう狂ってるんじゃないかってくらいです

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ