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【過去編11】僕は宿題の存在を初めて知る

今回は宿題の存在を初めて知る話です

実際に私は小学校1年生の頃に出た長期休みの課題が宿題とは認識していませんでした

では、どうぞ

 母が保護者説明会に参加すると聞かされた次の日、僕はいつも学校に来て、授業を受ける。いつもと変わらない1日を過ごしていた。いや、ある一点を除いていつもと変わらないと言い直そう。そのある一点とは……


「せんせー、トイレに行きたいです!」


 授業中にトイレに行きたいだなんて事を元気よく言うバカはこのクラスにおいて秀義を置いて他にいない


「あ、ああ、行ってこい……」


 そう、普段は授業中のトイレを許すはずのない担任がトイレを許した。おかしいのはそれだけじゃない。無駄な元気が今日に限ってない。小学生の僕でも解ってしまう。母が言っていた保護者説明会の内容が大まかではあるけど。


「先生、今日はトイレに行くのダメだって言わないんですね」


 普段の授業なら先生が発言の許可を出すか話し合いの時間でもない限り僕は自分から発言する事はない。でも、この時は不思議と言葉が出てしまった


「あ、ああ、我慢は身体に毒だしな」


 黒板の方を向いていて表情はわからなかったけど、担任の背中からは哀愁が漂っていた。母が言っていた保護者説明会の内容はこの担任のしてきた事についてと質疑応答。それと、処遇の発表だ。僕としては別に担任がどうなろうとどうでもよかった


「そうですね」


 僕はそれだけ言って話を終わらせた。いくら教師が嫌いだとしても沈んでいる人間を追い詰めるような趣味はない


「岩崎君……」


 隣の席に座っている宮村さんが心配そうに僕を見ていた。


「何?」

「お母さんから話は聞いてるよね?」


 お母さんというのは僕の母の事だろう。僕は宮村さんのお母さんとは1度たりとも話した事はない。でも、話って何の事だろ?保護者説明会の事?それとも、母親同士で会話した事かな?


「今日の保護者説明会の事?それとも、僕の母さんと宮村さんのお母さんが話したって事?」

「どっちも」

「聞いてるよ」

「だよね……」


 宮村さんが何を言いたいのかがサッパリわからなかった。要領を得ないっての?普段から周囲に対して怯えているような感じだったから仕方ないと言えば仕方ないんだけどさ


「うん。昨日、言われた。それがどうかしたの?」


 母から担任についての話や宮村さんについての話があったからといって僕には関係なかった。どちらにも最初から興味なんてなかったし


「う、ううん、何てもないよ!」

「そう?ならいいんだけど」


 顔を真っ赤にして否定する宮村さんを見て僕は深くは聞かなかった。聞いたところで僕に必要な情報か?と聞かれたらそうじゃないから。それから、授業は進み、あっという間に放課後。そして、帰宅となった


「あ、そうか……今日は2人とも遅いんだっけ……」


 僕が帰宅した時に家に誰もいないのは当たり前の事だから忘れがちになってしまうけど、この日は両親は保護者説明会で帰ってくるのが遅い。父からは保護者説明会に参加するだなんて話は聞いてなかったけど、多分、母と一緒に保護者説明会に参加するであろうというのは僕の予想だった


『ただいま~』


 僕が帰宅してからしばらくして真理姉さんが帰宅。高校生の真理姉さんが僕より早く家を出て、僕より遅く帰宅するのは当然の事と言えば当然の事だ


「はぁ……帰ってきちゃった……」


 この頃の僕は真理姉さんが嫌いじゃない。だけど、学校では宮村さんに絡まれ、家では真理姉さん。この両極端の2人の相手をするのは小学生で元気が有り余っている年頃でもキツイ。方やローテンション、肩やハイテンション。これで疲れるなと言う方が無理だ


「な~に~?光晃はお姉ちゃんが帰ってきて嬉しくないのか~?」


 高校生にしてこの酔っ払いのような絡み方。この時、僕は心の底から真理姉さんに酒なんて飲んでほしくないと思ったね


「別に嬉しくないとは言ってないでしょ」


 真理姉さんの前で取り乱したら負け。これは今も昔も変わらない


「ふぅ~ん、じゃあ、嬉しいんだ?」


 問:真理姉さんが帰ってきて嬉しいか嬉しくないか?答え:別にどうも思わない。真理姉さんには昔からこう答えている


「別にどうとも思わないよ」


 嫌だと答えると泣くし、嬉しいと答えると抱き着くし。だったらどうとも思わないって答えた方が幾分かはマシだ。そうだなぁ……例えるなら大雨が降ってたとして、大粒か小粒かの違いだけどね


「ぶーぶー、光晃、可愛くない!」

「うん、そうだね、可愛くないなら大人しく部屋に戻ってね」


 教師や教育実習生は指導目的で絡んでくる。でも、この頃の真理姉さんは違う。純粋に従弟に絡んでくる。それも、可愛いから。自分で言っててキモイとは思うけど。で、話を戻すけど、自分の意図してない反応されたら絡まないのが普通じゃない?


「ぶーぶー、光晃が冷たい……」

「冷たくないよ。はぁ……」


 僕はいつもこうだ。別に冷たくしたつもりなんてないのに冷たいと言われる。慣れろとは言わないけど、従弟の人間性くらい理解してほしいものだ


「あー!!溜息ついた!!」


 真理姉さんが指差して非難してくる。僕にどうしろと言うんだ?こればっかりは今でも解らない


「僕だって溜息ぐらい吐くよ。真理姉さんは一体僕にどうしてほしいわけ?」


 普段と同じ反応を示せば冷たいと言われ、溜息を吐いたらそれに対して非難する。じゃあ、僕はどんな反応をすればいいんだ?


「光晃はお姉ちゃんに優しくするべきです!!」


 優しくって言われてもなぁ……そんなの感じ方の問題になってくるでしょ?


「優しくって言われてもどうしたらいいかわからないよ」


 優しいという言葉の意味が知りたいのなら辞書を引けばいい。しかし、具体的に優しくするってなると話は別になってくる。そもそも、優しくしてほしいならまず自分が人に優しくしろって話だけどね


「え?光晃でも知らない事ってあるの?」


 真理姉さんは僕を何だと思っているか知らないけど、僕は物知りでもなんでもない。それは今でも変わらない


「僕は何でも知っているわけじゃないし、それに、優しいって辞書で引けば意味は出てくるだろうけど、お姉ちゃんが優しいって感じるかは知らない。だから、お姉ちゃんにとって何をすれば優しくするって事になるのかを教えてほしい」


 僕にとっての優しくするって事と真理姉さんにとっての優しくするってのは違う。人間なんだから価値観が違うのは当たり前なんだけどさ


「わかった。じゃあ、まず抱きしめて」

「…………」


 僕、小学生ながらにドン引き。何がドン引きって真理姉さんが『()()は抱きしめて』って言った。つまり、次があるって事だ。ハグした後は何をさせられるのかを考えただけでも憂鬱になる


「どうしたの?早く早く」


 真理姉さんの期待の眼差しが僕を捕らえた。言い出しっぺは僕だから断れないんだけど、この頃の僕に一言言いたい。安易な考えで発言しないほうがいいと


「はいはい……」


 嫌ではあったけど、真理姉さんの言う事を聞いてしまうあたり僕が真理姉さんを切り捨てられないのは小学生の頃から変わらないみたいだ


「はいは一回!」

「はい」

「よろしい」


 高校生なのに母親みたいな事を言う真理姉さんをそっと抱きしめた。今でも思うけど、真理姉さんは僕なんかに構っていていいのかな?真理姉さんって好きな人とかいないのかな?


「静かだね」

「うん」


 真理姉さんを抱きしめてから5分が過ぎた。さすがに無言に耐え切れなくなった僕が口を開き、それに真理姉さんが答える。そんなやり取りが始まった


「今、何時かな?」

「うーん、5時くらいかな?」

「そっか。ところで、今日の夜はお母さんとお父さん遅くなるって聞いてる?」

「うん。光晃の小学校で保護者説明会があるから遅くなるって聞いてるよ」

「「…………」」


 事務的なやり取りをして再び無言。


「そろそろいいかな?」


 葵衣に対してもそうだけど、人を抱きしめるって意外と疲れるんだよ。長い時間、同じ体制なんだから。


「うん……」


 僕が抱きしめるのを止めるとそれを名残惜しそうにしている真理姉さん。言っておきますけど真理姉さん?この当時の僕は小学生で貴女は高校生ですよ?いろいろと拙いって事と僕達は従姉弟同士。法律的には何の問題もないけど、まさか、真理姉さんはそんな目で僕を見てないよね?大丈夫だよね?僕には葵衣がいるんだし


「さてっと、今は何時かな?」


 僕はリビングの隅にあった置時計に目をやる。時計は6時を指していた。


「お姉ちゃん、もう6時だよ?晩御飯どうしようか?」


 6時って事は夕飯時だ。だと言うのに僕達は夕飯の準備を何もしていないかった


「うーん、冷蔵庫に何かあったっけ?」


 僕もそうだったけど、真理姉さんも帰ってきてから冷蔵庫を確認してなかった。1人暮らしをしているか、家事を日常的にしてない限り飲み物を取る以外で冷蔵庫を開ける事はない。それに、水分だけ補給するなら水道水で十分だし


「さぁ?何かはあるでしょ」


 さすがに冷蔵庫に何も入ってないというのはないと思うし、僕が家事をしている今となってはマメに買い出しはしている。なくなっているものはすぐに補充する


「そ、そうだよね!」

「うん、多分何かはあるよ」


 何もないって事はないと思いつつも僕達は冷蔵庫を開ける事にした。結果から言うと冷蔵庫にあったのはラーメンの材料だった。何もないよりはマシだけど、さすがに見た時に遠回しに夕飯はラーメンにしろ。そう言われている気がした


「夕飯も済んだから暇になっちゃったね」


 小学生の僕はともかく、高校生である真理姉さんは課題とかないのかな?とは思わなかった。それもそのはず。今までの担任は宿題なんて夏休みか冬休みの長期にわたる休みにしか出さなかったから知らないのも無理はない


「そうだね、暇だね」


 宿題の存在を知らない僕は真理姉さんの言葉に同意してしまうわけで、特にやる事も真理姉さんとの共通の話題もなかった


「光晃は学校で宿題って出ないの?」

「宿題?何それ?」


 意外にも話を振ってきたのは真理姉さんであり、その話題が宿題についてだった。


「え?宿題を知らないの?」

「うん」

「じゃあ、今までどうやって勉強してたの?」

「え?教科書の問題をやってたけど」

「はぁ……」

「?」


 この時の僕は真理姉さんが吐いた溜息の理由が理解できなかった。宿題を出さない先生もいる。これを知ったのは後になってからだった事を補足として言っておく。この時の僕は平和なひと時を過ごしたけど、翌日、僕の担任が保護者説明会で呆れた言い訳をしていた事を母親に聞かされた



今回は宿題の存在を初めて知る話でした

実際、私は小学校1年生の頃に出た長期休みの課題を宿題とは認識していませんでした。あれは夏休みと冬休みに出る何かだと思っていましたが、今、思えばアレも宿題なんですよね・・・・面倒だからできるものは休みの前半に終わらせた記憶が・・・・

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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