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【過去編10】僕は担任について聞かれる

今回は担任について聞かれる話です

光晃は担任についてなんて答えるのか?

では、どうぞ

 保健室の騒動があったその日、僕は普段通りに帰宅した。思えばこの頃はすでに感覚が狂ってしまったように思う。だけど、問題は僕の感覚が狂っている事じゃなかった。時は少し進み、保健室の騒動から1か月がたったある日の事だった


「せ、先生、気分が悪いので保健室に行ってきていいでしょうか?」


 今回は1人の男子が体調不良を訴え、保健室に行きたいと言い出した。前回、僕と宮村さんを保健室で怒鳴りつけ、教頭と校長から何等かの指導を受けたとしたら保健室に行く許可を出してもいいはず。しかし──────


「ダメだ。授業が終わるまで我慢しろ」


 前回の指導の成果なし。僕と宮村さんの時同様に授業を優先させ、男子の訴えは却下された


「で、でも……うっ……!」


 何かを言いかけた男子は余程気分が悪かったのか、吐きそうになっている。何かを言いかけて吐きそうになるだなんんて限界が近いのだろう


「でもじゃない!今は授業中だ!それに、俺ならその程度なら我慢する」


 コイツは前回の一件から何も学習してない。いや、むしろ悪化の一途を辿っている。


「先生、少しいいですか?」


 この男子を助けてやる必要なんてない。だけど、その後の事を考えると僕は意見せずにはいられなかった


「何だ?岩崎?」


 心底うっとおしそうにした担任が僕に視線を向けてきた。


「別に先生が授業を優先させるのはいいんですけど、彼が吐いた後の処理は誰がするんでしょうか?当然、先生がしてくれますよね?いや、それ以上に吐いたところを隣で見せられた子はどう思いますかね?今は4時間目ですよ?」


 この担任がバカじゃない限り今が4時間目であり、この後に何があるか理解しているはずだ。それに、隣の席じゃなくても他人が吐く場面を目撃するのはキツイものがある


「だから何だと言うんだ?体調が悪いのなら休み時間に保健室に行けばいいだろ?」


 それで前回は僕と宮村さんが抜け出した。そして、保健室まで来て怒鳴りつけたから教頭に連行されたって忘れてないか?


「はぁ……もういいです」


 僕は席を立ちあがり、限界なのを必死に堪えている男子の手を取り、教室を出た。担任が何か喚いているような気がするけど、それは気にしない。僕は宮村さんにした時と同様に男子をトイレに連れて行き、その足で保健室に行った。案の定担任は保健室まで怒鳴り込んできて教頭に連行された。ここまでは宮村さんの時と全く同じだった。だけど、問題はこの日、僕が家に帰り、両親が帰宅した後に起こる


「ねぇ、光晃」

「何?母さん?」


 リビングでゲームをしていると母が声を掛けてきた。母が息子に声を掛けてくる事は普通の事だし、親子の会話で学校の事を話すのも別に変な事じゃない


「光晃の担任の先生ってどんな人?」

「どんな人って、若い人だけど?」


 突然担任がどんな人と聞かれても返答に困る。小学生だった頃も今でもそうだけど、担任の先生がどんな人かって質問が1番困る


「私が聞いてるのは担任の先生はちゃんと光晃達の事を考えられる人なのかって聞いてるの」


 担任が僕達の事を考えられる人かという質問の答えはNOだ。自分の授業を優先させ、児童の事なんて全く考えてない


「さあ?どうなんだろうね?僕はあの人に興味なんてないから知らないよ」


 別に担任が宮村さんやクラスの男子にした事なんて隠す事でもないし、僕に担任をかばう理由なんてない。でも、それ以上に興味がない


「そう……ねぇ、光晃」

「何?」

「あなた、この前宮村さんって子を助けたらしいわね」

「助けたってわけじゃないけど、まぁ、トイレに連れて行った後で保健室に一緒に行ったけど。それがどうかしたの?」


 僕からしてみれば宮村さんを助けた覚えはない。トイレに連れて行った後で保健室に行った。その程度の事だった


「この前、宮村さんのお母さんからお礼の電話があったの。『お宅の光晃くんが娘を助けてくれたみたいでありがとうござます』ってね」


 宮村さんのお母さんから電話があったんだなんて初耳だった。それ以上に宮村さんが僕の話を家でしている事が意外だった


「そう。でも、僕は宮村さんを助けた覚えなんてないよ。ただ、起こしてもらった恩を返しただけ」


 母や宮村さん本人にこんな話をしていいのかは知らないけど、隣で漏らされでもしたら大変だった。それもあったのかもしれない


「宮村さん本人からも助けたわけじゃないって言われたけど、自分はものすごく助かったって言われたわよ?」

「本人がそう思っているのならそれでいいんじゃない?」


 助けた、助けてないは本人がどう思うかだ。僕は助けたわけじゃないって思っているし、宮村さんは助けてもらったと思っている。そう思っているならそれでいいと僕は思う


「まぁ、人の価値観なんてそれぞれだからいいんだけど、問題はこの後よ」

「問題?僕は何も悪い事なんてしてないけど?」


 僕は悪い事をした覚えがない。問題があろうはずもない


「光晃が悪い事をしてるかしてないかの問題じゃないの。問題は光晃の担任の先生の方よ」


 この時の僕は言われている意味がよく解らなかった。宮村さんのお母さんもそうだけど、保護者は常に担任を見ているわけじゃない。僕達が学校に行っている間、仕事をしている親だっているし、専業主婦として家事をしている親だっている。授業参観でようやく担任と対面できるかどうかってレベルだ。それに対して僕達は学校に行っている以上、担任と接する時間が多い。問題があると言われても問題がありすぎる場合、どれが問題なのかが解らない


「僕の担任は問題だらけで何が問題なのか理解できないんだけど?」


 問題だらけの担任から目立った問題を理解しろって方が無理がある


「そうね……親よりも光晃達の方が先生といる時間が長すぎて何が問題なのかが判らなくなっているのね」


 母の言い方はまるで僕の感覚が狂っている。そう言わんばかりのものの言い方だった



「母さんの言い方じゃ僕がおかしいみたいに言っているように聞こえるんだけど?」


 朱に交われば赤くなるとはよく言ったもので、問題だらけの担任と接しすぎたせいか、僕もそれに感化されつつある。今思えばそうだったのかもしれない


「そうは言ってないんだけど、今の言い方だとそう言っているように聞こえるのも無理はないわね」

「母さん、本当はそんな事を言いたいんじゃないんだよね?」


 大人の世界には本音と建て前っていうのがある。幼稚園児か保育園児の時から小学校低学年くらいの頃は本音と建て前なんて言葉は知らなかったから人の気持ちを考えて言いなさいなんて言われてた。だけど、それが後に本音と建て前だって事を理解した。それはいいとして、この時の母は要領を得ないっていう事が僕でも解った


「そうね。隠しても仕方ないから言うけど、光晃の担任の先生がお母さん達の間で問題になったのよ」


 僕は担任のしてきた事を詳しくは知らなかった。保護者の間で問題になったと言われて心当たりがあるとしたら授業中のトイレ禁止、児童の体調不良に考慮しないところくらいだった


「そう。僕は授業中のトイレ禁止とか、保健室に行きたいと言っても『授業中だ!』って言っていかせてもらえないところくらいしか知らないよ?」


 今になって小学校3年生の時の担任を思い出してみると児童に手を上げる事はあまりなかった。と思う。僕がされてないだけで他の子はされていたかもしれないけど。でも、授業中のトイレ禁止や保健室に行かせてもらえないなんて事は当たり前のようにあった。それが体罰だと言われればそれまでなんだけど


「その授業中のトイレ禁止、保健室に行きたいと言ってダメだって言うのが体罰になるんじゃないかって言ってる家もあるのよ」

「そうなんだ。それで?お母さんはどうするの?」


 本来なら母がした話は小学校3年生の子供にするような話じゃなかった。自分の担任が問題になっていますよ?何も知らない子だったら信じられないと言った感じだ


「一応、明日の保護者説明会に参加するつもりではあるわ」

「そう。行ってらっしゃい」


 僕が知る限りじゃ授業中のトイレダメ、保健室ダメは2回。1回目は宮村さん、2回目は吐きそうになった男子。学校の問題として取り上げるには数が少なすぎると思う。トイレ、保健室関連ではこれだけで僕は保健室で怒鳴られた事もある。最終的には教頭に連行されたけど


「そういうわけでお父さんとお母さんは明日の夜は帰りが遅くなるから真理ちゃんと2人でご飯食べてね」

「わかったよ」


 次の日の夜は父と母が遅くなるから真理姉さんと2人で夕飯を済ませろ。普通なら話はここで終わりだ。でも、母は違った


「明日の夜は遅くなるって話をしたついでに、光晃、もう1つ言ってない事あるわよね?」


 話が終わったと思ったけど、どうやら母の中じゃまだ終わりじゃなかったみたいだ


「ん?言ってない事?ないと思うけど?」


 いつも仕事をしている両親には感謝していた。僕は学校であった事なんていちいち話す事でもないから言わなかっただけで隠してたわけでも何でもない


「光晃、保健室で怒鳴られたって宮村さんのお母さんから電話で聞いたんだけど、本当?」

「あー、その事か……興味なさ過ぎて忘れていたけど、本当だよ。その後で教頭先生に連れて行かれたけど。それがどうかしたの?」


 僕からしてみれば保健室で怒鳴られた事なんて気にする事じゃなかった。教頭先生が来なければ。教頭が来たことによって保健室で怒鳴られた事は僕にとって取るに足らない事になった。来なかったら多分、両親か真理姉さんに言っていただろうと思う


「なんでもないわ。ただ、どうして言わなかったのかなと思って」


 どうして言わなかったのかという問いの答えは決まっていた。聞かれなかったから。それに、言う必要がなかったから


「宮村さんの事もそうだけど、言わなくてもいいかなと思ったからだよ」


 学校の事を言う必要なんてない。それに、学校で何があるかなんて書類で十分でしょ。僕が口で言う必要なんてない。小学生の頃は両親や真理姉さんが嫌いというわけじゃなかった。だからと言って好きだと言うわけでもないけど。両親は仕事、真理姉さんは学校。それぞれ忙しいのに僕の学校の事を話す必要はないと思ってはいたけどね


今回は担任について聞かれる話でした

光晃の親は共働きですが、子供の担任について全く知らないというのは拙いんじゃないか?と思う今日この頃。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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