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【過去編9】僕は何故か保健室で怒鳴られる

今回は保健室で怒鳴られる光晃です

保健室で怒鳴られるだなんて早々ないと思います

では、どうぞ

「岩崎!!どういうつもりだ!勝手に授業を抜け出して!!」

「はぁ……」

「ううっ……」


 僕達の様子を見に来たデリカシーゼロの担任が入ってくるなり僕と宮村さんを怒鳴りつけた。と言ってもあくまでメインターゲットは僕だった。どういうつもりも何も僕は教室を出る前にちゃんと保健室に行くって伝えた。それなのに何を聞いてたんだ?小学生の僕は純粋にそう思った


「どういうつもりも何も僕は教室を出る前にちゃんと言いましたよね?保健室に行くって。それに、他の先生から聞いてませんか?僕達が具合悪いって」


 そもそもの間違いが保健室というケガをした児童や具合の悪い生徒が来るような場所で大声で怒鳴る事が間違っている。病院では静かにする。これが世間の常識なように保健室では静かにする。これも常識でしょ?


「俺の授業よりも体調を優先させるのか!!」


 高校生になってもこの言い分は理解できない。だというのに小学生にこの言い分を理解しろというのはかなり無理がある。それに、体調よりも授業を優先させろとは……どんな環境で育ったらこんな事を平然と言えるのかを知りたいと今でも思う


「当たり前でしょ?具合悪くて辛いのにどうして我慢しなきゃいけないの?」


 昔の人は少し熱があるくらいじゃ学校に行ってたという話を僕は叔父さん──────真理姉さんのご両親から聞いた事がある。それも、かなり幼い頃に。だけど、今はそんな理屈は通用しない。


「俺が子供の頃は多少腹が痛かったり、寒気がしたりしても我慢して授業を受けてたんだよ!!」


 コイツは小学生を相手に何を言っているんだろうか?僕が第三者ならそう思う。


「そうですか。でも、先生の時とは違うんで」


 僕が小学生の頃から今もそうだけど、人の価値観は変わり続けている。それに、こう言ったらアレだけど、昔は先生が子供に手を上げても保護者は何も言わなかった。でも、いつしか先生が子供に手を上げるのは体罰だと言われるようになった。僕個人の意見として力加減ができない教師が増えたからだと思っている


「屁理屈を言うな!!」


 保健室だという事を忘れ、怒鳴り散らす担任。この時は僕と宮村さんしかいなかったからいいようなものの、これで他の子がいたらどうするつもりだったんだろうか?まぁ、他の子がいなくても保健室で怒鳴り散らしていればどうなるか?そんな事はバカでも簡単に想像できる


「騒がしいと思って来てみたら……貴方は何を体調不良の子を怒鳴り散らして!!一体何をしているんですか!!」


 手の空いている先生が騒ぎを聞きつけ、やってきたと思ったら、まさかの教頭(男性)登場。


「きょ、教頭先生……」


 自分の独断場だと思っていたらしい担任は教頭の登場で顔が真っ青になっている。そりゃそうなるよね。児童2人に教師1人という状況で自分が1番上の立場にいたと思ったらそれよりももっと上の立場の人が来ちゃったんだもん


「もう1度聞きますよ?体調不良の児童を怒鳴りつけて貴方は一体何をしているんですか?」


 最初は担任と同じように怒鳴っていた教頭だけど、場所が保健室で僕と宮村さんがいるという事で怒鳴るのを止め、冷たい声で担任を問いただすところは担任(このバカ)とは違い、理性的だった


「あ、いや、ちょ、ちょっと指導を……」


 見苦しい……。保健室に入ってくるなり怒鳴り散らしておいて指導とは実に見苦しい。北南高校の教師もそうだったけど、自分の体裁を守る為に見苦しい言い訳をすると返って見苦しさが増し、自分の首を絞める事になるってどうして考えないかな?


「ほう、保健室という場所で体調不良の児童を怒鳴り散らすのが指導ですか……」

「あ、いや、それは……」


 教頭に図星を突かれ言いよどむ担任を見て小学生の僕は初めて教師という職業に就く人間は言い訳ばかりするような人間が選択する職業なんだ。そう思った。


「とにかく、私と一緒に校長室に来なさい!!」

「はい……」


 教頭と共に保健室から出ていく担任の後姿はリストラされたサラリーマンか逮捕された被疑者のように小さく見えた。校長室でどんな事を聞かれ、どんな事を話すのかは知らなかったし、興味もなかったけど、宮村さんにした事がバレるのは時間のだった。


「…………」

「…………」


 担任が教頭と共に去った後、残された僕と宮村さんはお互いに無言だった。目の前で自分のクラスの担任が教頭に怒鳴られ、連行される姿を見せられれば言葉が出てこないのは当たり前だった。


「せ、先生、行っちゃったね……」


 自分のクラスの担任が連れて行かれたというのに話をしようとする宮村さんには感心した。だって、僕は呆れて声すら出なかったから


「そうだね」


 僕がかろうじて言えたのはこの一言だけだった。というか、これ以上の返し方があるだろうか?


「こ、怖かったね……」


 宮村さんが言う『怖かった』とは教頭と担任のどちらを言っているんだろう?そして、この時の僕は本当に怒鳴り散らす担任が怖いとは思わなかった。それはどうしてだろう?最初に宮村さんがトイレに行きたいって言った時に我慢しろって返したから?それとも、担任よりも怖いものがあるのを知ってたからかな?


「そう……だね……」


 どんな風に答えていいか判らなかった僕は宮村さんの意見に同意するしかなかった。でも、不思議な事に2人とも泣いていない。僕は……まぁ、いいとして、宮村さんは女子なので泣いてもいいはずだけど、どうして泣かなかったんだろう?それは今でも謎のままだ


「と、とりあえず、この事はお母さんに言わないとけないのかな?」

「さあ?どうだろう?」


 学校で教師に怒鳴られた事って親に伝えるのが普通だって言うなら僕は北南高校では常に怒鳴られていた。それを随一親に電話報告しなきゃいけないくなる。でもまぁ、保健室で休んでいただけなのに怒鳴られるのは理不尽か


「私と岩崎君は具合が悪くて休んでいただけで怒鳴られる事をしたわけじゃないんだよ?」


 宮村さんの言う事は正論だった。確かに保健室で休んでいただけで怒鳴られる謂れはない。でも、実害があったわけじゃないし、別に親に言うほどの事でもないとも思う。


「それはそうだけど、僕達は先生に何かされたわけじゃないし、別にお父さんとお母さんに言う必要なくない?」


 これに付け足すのであれば『先生に怒鳴られただけで手は出されていないんだから両親に言うほどの事でもない』だ。手を出されて怪我でもしたのなら話は別になってくる。特に顔とかの目立つ場所なら尚更だ


「それはそうかもしれないけどさ……お母さん達に心配掛けたくないし……」


 心配掛けたくないか……確かにどの親も教師を信頼して学校に子供を預けてるわけだし、それが腹痛を訴えてもトイレに行かせてくれない、保健室で休んでいたら入ってくるなり怒鳴られる。これじゃ保護者は納得しないだろうとは思う。小学生の子供から『トイレに行きたいって言ったらダメだって言われた、保健室で休んでいたら入ってくるなり怒鳴られた』と聞かされた親はなんて思うんだろう?


「宮村さんがそうしたいなら好きにすればいい。僕の名前も出してくれていいよ」


 別に悪い事をしたわけじゃないから名前を出されても構わない。それに、危うくなるのは僕の立場じゃなくて担任の立場だ。


「うん!ところで、岩崎君は先生の名前を呼ばないよね?どうして?」


 1年生の頃も2年生の頃も僕は担任の名前を1度たりとも呼んだことはない。別に呼ぶ理由もなければ呼ばない理由もない。


「う~ん、別に呼ぶ理由もなければ呼ばない理由もないからかな?」

「ふ~ん。ところで、岩崎君は私の名前知ってる?」

「いきなり何?自己紹介なら最初の頃にしたでしょ?」

「それはそうなんだけど、岩崎君ってクラスの子の名前をちゃんと覚えてるのかなと思っただけだよ」


 この頃の僕は親しい人間なんて秀義くらいしかいなかったし、それでいいと思っていた。秀義の事を親友と思っていたわけじゃない。だけど、腐れ縁としては認識していたし、何かあれば秀義に聞けばいい。だから、秀義以外と会話する必要がなかった


「どうだろう?別に他の子の名前をフルネームで覚えている必要はないから苗字は知っていても下の名前は覚えてないかなぁ……」


 クラスメイトの名前をフルネームで覚えている必要はない。苗字だけで十分だ。フルネームでと聞かれたら僕は覚えてないと即答できる自信があった。


「私は宮村だからいいとして、“佐藤”とか、“山田”とかの多い苗字の子を呼ぶときはどうするの?」

「秀義に用がある“佐藤”さんや“山田”さんに伝えてもらう」


 秀義は高校に入っても僕に話しかけてくる。僕は望んでないのにだ。人聞きが悪いと思うけど、僕が望んでないのに話しかけてくる秀義を最大限利用する。僕と秀義の関係はこのくらいが丁度よかった。今も昔も


「名倉君は伝書鳩じゃないよ?」


 僕の答えにガチトーンの宮村さん。常にオドオドしている挙動不審な女子としか思ってなかったけど、言う時は言うんだ。この時、僕の宮村さんに対するイメージが少しだけ変わった


「そんな事言われても秀義から僕に話しかけてくるし、僕は別にクラスの子に興味なんてないし」


 過去に人間関係で嫌な事があったわけじゃないけど、僕はクラスの子に興味はなかった。それでも、協力して何かをする時は協力するし、それに、自分から喧嘩を仕掛けたりもしない。純粋に興味が沸かないだけで


「じゃあ、どうして私を助けてくれたの?」

「宮村さんには起こしてもらったっていう恩があるし、席が隣だったから」


 僕にとって宮村さんを助ける理由なんて起こしてもらった恩を返す、席が隣だったからで十分だった


「え?それだけ?」


 僕の返答に戸惑っているのか、目を白黒させる宮村さん。何となくだけど、たったそれだけの理由で助けるだなんて信じられないと言ったところか


「うん。それだけ。それ以上の理由がある?」

「あ、いや、ない……けど……」


 宮村さんからしてみれば大した事ないと思うだろうけど僕は小さな事でも受けた恩は返す。父からも『どんなに小さな恩でも受けたら返しなさい』って言われて育った。父を尊敬しているってわけじゃないけど、幼い頃からの習慣や癖って簡単に治るものじゃない








今回は保健室で怒鳴られる光晃でした

今回の担任教師の言い分は全力で理解できないようにしてみました

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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