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【過去編8】僕は初めて教師の言う事に逆らう

今回は光晃が初めて教師の言う事に反抗する話です

高校生の光晃は教師や教育実習生に反抗するのが当たり前ですが、初めての反抗はどんなものになるのやら・・・・

では、どうぞ

 両親が学校に乗り込んでから僕のクラスには担任の補佐が付き、教育実習生は一応、途中で実習打ち切りにはならず、何とか実習を終えたらしい。らしいと言うのは僕が学校をサボった事で校長が実習生の児童に深くかかわらないようにするという事を両親から言われた。そして、僕に絡んできた実習生に対し、母は『今回は多めに見るけど、次はない』と警告したと父から聞かされた。それから実習生は絡んでこなくなったし、担任も忙しいの一言で生徒の話を聞かないという事を止めた。でも、学校と言うのは体裁を大切にするところがあり、僕の担任は2年生最後の終業式で移動になる事を発表された。それから、時が経ち、僕は小学校3年生となった


「1年生、2年生と女の先生で今回は男の先生……」


 3年生になってから恒例とも呼べる教育実習生が来るこの時期、僕は2年生の頃のような事がないとは思いつつも気分は憂鬱だった。できる事なら実習生が来ている間は欠席したいくらいだった


「何だ?光晃、不安な事でもあるのか?」


 僕に話掛けてくるのは毎度お馴染み幼馴染の秀義。小学校に入学してから3年。立て続けに同じクラスだと最早呪われているんじゃないかと錯覚してしまいそうになる。でも、コイツと同じクラスになるのが高校2年の途中までになるとは知らなかった僕はこの頃はまだ単なる偶然程度にしか思ってなかった


「別に。ただ、1年生の頃や2年生の頃のような事にならないかって思っただけだよ」


 小学校3年生の僕は初めての男性教師という事で少しばかり期待をしていた。1年生の頃の担任はともかく、2年生の担任は酷かった。同じ女性教師と言えど1年生の頃の教師はマシな方。2年生の頃の教師は僕の学校生活では1位か2位を争えるくらいには酷かった


「今回は大丈夫だろ?2年生の頃よりはマシだって!」

「だといいんだけど」


 秀義の楽観的な部分は今でも変わってない。それどころか今の方が悪化してると言っても過言ではない。


「それより、今年の担任は名前からして男って事しかわかってないけど、どんな人なんだろうな?」

「別に、どんな人でもいいよ。それより、僕は少し寝るから。そうだな、紹介が僕の番に回ってきたら起こしてくれるように隣の席の子に伝えておいてくれない?」

「おう!まかせろ!」

「じゃあ、よろしく」


 僕は秀義に伝言を任せ、担任が来るまでの間、睡眠学習に励む事にした。だけど、知らなかった事とはいえ、この選択が間違っていたのかもしれないと今は後悔している


「い、岩崎君、た、担任の先生が来たよ、お、起きて」


 まどろみの中聞こえるオドオドした女子の声。おそらく僕の隣の席に座っている子だ。


「んぁ?もう来たの?」

「う、うん……ほ、ほら、あれ」


 女子の指さす先にいたのは割と若い男性。恐らくはあの男性が僕の担任なんだろう。この時の僕はそう思ったし、実際にその男性は僕の担任だった。若い先生だったって事もあってか男女問わずに人気はあったけど、若さゆえなのか、この男性教師が後にとんでもない問題を起こす事となった


 その問題は算数の授業中に起きた。今でも覚えているけど、考えてみればこの男性教師が僕の教師嫌いを加速させたと言っても過言じゃないような気がする


「せ、先生、お腹が痛いのでトイレに行ってきていいですか?」


 僕の隣のオドオドした女子が腹痛を訴えた。普通ならトイレは休み時間に行っておくべきだ。この言葉は誰もがきっと教師から1度は言われた事のあるであろう言葉だと思う。しかし、いくら体調を管理していても風邪を引く時は引いてしまう。


「ん?何だ?休み時間に行ってこなかったのか?宮村(みやむら)

「い、いえ、休み時間に行ってきましたけど、急にお腹が痛くなってしまって……」


 突然の体調不良は絶対にないとは言い切れない。それはこの宮村さんに限った事じゃなく、誰しもがある事だ。だけど、僕はこの男性教師からある意味で衝撃的な言葉を聞いてしまう


「そうか。我慢しろ」


 この男性教師は言うに事欠いて我慢しろと言った。今でもハッキリと覚えているけど、コイツは教師として以前に人として最低な人間だ。この時はクラスにいた全員が我が耳を疑った事だろう


「さ、さっきからずっと我慢していてげ、限界なんです……」


 涙目で限界を訴える宮村さんからは冷や汗が流れていて傍から見ていた僕にでも限界だという事がわかった。それでも、この男性教師は────────────


「限界だろうが今は授業中だ。我慢しろ」


 我慢しろとしか言わない。そんな男性教師の態度に男子は非難の言葉を浴びせ、女子は口には出さないけど、軽蔑の眼差しを送っていた。


「で、でも……」

「でもじゃない!今は授業中だ!それに、トイレは休み時間に行ってくるものだ!」


 今までは男女問わずに人気があった僕の担任。しかし、ここにきてデリカシーゼロの最低な人間だという事が露呈した


「はあ……」


 僕は深いため息を吐いた。この状況ではため息を吐く以外のリアクションが取れなかった


「何だ岩崎、何か言いたい事でもあるのか?」

「いえ、別に。それより、宮村さんが具合悪いみたいなので、トイレに連れて行ってから保健室に行きます」


 僕は泣きそうになっている宮村さんの手を引き教室を出ようとした。しかし────────────


「待て、今は授業中だ。勝手に席を離れるんじゃない!」


 男性教師に止められてしまった。どうして授業に拘る?小学生ながらに僕はそう思った


「僕は先生の授業よりも宮村さんの体調を優先させます。行くよ、宮村さん」

「う、うん……」


 僕は宮村さんの手を引き、教室を後にした。僕が初めて教師に面と向かって言い返した瞬間であり、教師の目の前で堂々と反抗した瞬間でもあった


「じゃあ、僕は水飲み場で待ってるね」

「う、うん……」


 デリカシーのない担任を目の当たりにした後だったからか、僕は女子トイレの前で待つ事はせず、トイレの側にある水飲み場で宮村さんを待つ事にした。小学校3年生の僕でもデリカシーのない大人を見た後だとさすがに考えるさ


「お、お待たせ……」


 トイレから出てきた宮村さんは手を拭いていたハンカチをしまった。間に合ったのはよかったけど、問題はその後だ。教室に戻るとデリカシーゼロの担任が待っている。かと言って体育館や図書室では他の学年、他のクラスが使っているかもしれない。残された道は1つしかなかった


「別に待ってない」

「そっか……でも、ありがとう」


 ハニカミながら僕を見る宮村さん。それを一瞬、可愛いと思ってしまった僕。葵衣には絶対に言えないぼくのエピゾードだ。


「僕も起こしてもらった事あるからお互い様だよ。それより、これからどうしようか?」

「え?教室に戻るんじゃないの?」


 普通なら宮村さんの言う通りだけど、担任は普通じゃない。デリカシーに欠け、自分の授業を優先させようとするような人間だ。教室に戻ればどうなるかくらいは小学生でも簡単に予想できる


「教室に戻ったら先生に怒られるでしょ」

「う、うん、で、でも、今は授業中だし……」

「確かにそうだけど、お腹痛いって言ってトイレにも行かせてくれないような先生のところに戻ってまたお腹痛くなってトイレに行きたくなったらどうするの?」


 僕が最も気になっていた部分はそこだった。腹痛でトイレに行きたくなったと訴える児童に対し、我慢しろと言い放った担任が2回目を許すはずがない。


「そ、それは……」


 僕の言葉に言いよどむ宮村さん。当たり前だよね。僕だって同じ事を聞かれたら言葉に詰まるもん。それに、小学生だった僕には保健室に行くくらいの考えしか浮かばなかった


「戻って怒られるよりも保健室で休ませてもらった方がいいよ。僕も少し寒気がするし」

「そ、それなら早く言ってよ!」


 本当は寒気なんてしなかった。だけど、意地でも教室に戻ろうとする彼女を保健室に連れて行くには嘘を吐くしかなかった


「い、いや、本当は言おうと思ったけど、中々言い出せなくて……」

「そ、それって、私のせい?」


 何をどうすれば宮村さんのせいになるのかは知らない。だけど、僕は教室を出る時『保健室に行ってくる』と言い残し出てきた。出てくる時は別に何も考えてなかった


「違うよ。元々体調が悪い状態で学校に来た僕のせい。それより、保健室に行こうか。先生にはそう言って教室を出たんだし」

「あ、そうだったね……お腹痛くて忘れてたよ」


 トイレに行ってから少し落ちつたみたいだけど、その前は本当に辛かったんだと思う。僕が言った事を忘れるくらいには。


「まあ、仕方ないよ。お腹の痛みの方が勝ってたんだし」


 僕は宮村さんの手を引いて保健室に向かった。そういえば、誰かの手を引いたのは葵衣と出会うまでは後にも先にも宮村さんしかいなかったけど、彼女は元気でやっているのかな?何もなければ僕と同じ年のはずなんだけど……中学は別だったし……まさか、北南高校に入学しました。なんてないよね?


「うん!」


 先程とは一転し、明るい表情を見せる宮村さんを見て僕は『もしかして教室にいるのが嫌だったのかな?』とふとそう思った。これは後で知った事なんだけど、不登校の子の中には保健室登校はできても教室に入る事ができない子がいるって聞いた事がある。でも、宮村さんは普通に教室にいたし、きっと気のせいだと思う。


『ほけんしつのせんせいはいません』


 保健室の扉には養護教諭不在のプラカードがぶら下がっていた。保健室にいないからと言って職員室にいないとは限らない。


「保健室の先生いないから職員室に行ってみようか?」

「うん……」


 僕は宮村さんの手を引いて保健室から今度は職員室を目指す。今もそうだけど、職員室で何か聞かれたらされた事やあった事を正直に話せばいい。


「失礼します」

「し、失礼します……」


 職員室に入った僕達は保健室の先生がいる事を願った。僕は体調が悪いわけじゃないけど、宮村さんはそうじゃない。それに、保健室がダメとなると僕達には校長室以外に逃げ場がない。


「あら、岩崎君と宮村さんどうしたの?」


 出迎えてくれたのは僕が1年生の頃の担任だった。保健室に先生はいなかったけど、この人が残っていてくれて助かった


「宮村さんがお腹痛いらしくて保健室に行ったんですけど、保健室の先生がいなかったんで来たんです」


 僕の寒気の事は言わず、宮村さんの腹痛だけを話す。僕の寒気は真っ赤な嘘だから話したところで意味はない。それこそ気のせいだとか言われたらそれまでだし


「そう……でも、保健室の先生は今いないの……」


 何てことだ……保健室の先生は保健室にいないだけかと思っていたけど、実はそうじゃなかった。学校自体にいなかった。高校生となった今では保健室の先生がいない事くらいなら何とも思わない。保健室がダメなら別の場所でサボればいい。だけど、小学校は違う。保健室こそが合法的にサボれる有効な場所だったのに……


「そうですか……でも、宮村さん、お腹痛いって言ってるんでできれば保健室で休ませてあげたいんですけど……それに、僕も何だか寒気がして……」


 言うつもりはなかったけど、この時ばかりは仕方なかった。こうでも言わないとデリカシーのない担任のいる教室に逆戻り。それだけは絶対に避けたかった


「保健室の先生はいないけど、私が代わりに行って鍵を開けるわ」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」


 僕達は先生にお礼を言い、先生は保健室のカギを取りに一旦離れた


「まさか保健室の先生が職員室にもいないとは……」

「そ、そうだね……」


 宮村さんはどう思っているか知らないけど、僕は避難先さえ確保できればそれでよかった。本音を言うなら出迎えてくれたのが教頭とかならもっとよかった。


「でも、保健室に行く事ができたから嘘は吐いてないよ。それに、先生に何か言われたら職員室で聞いてみてくださいって言えばいいんだし」


 僕達の対応をしてくれた先生は僕の1年生の頃の担任。こう言ったら失礼かもしれないけど、年齢だってデリカシーゼロ担任よりも上だと思う。教師歴=年齢とは言いたくないけど、少なくともデリカシーのない方よりはあると思う。そんな人に保健室に行ってましたよなんて言われたら黙るしかない。


「そ、そうだね……」


 僕達は保健室のカギを持って戻ってきた先生と共に保健室に行った。だけど、本来は保健室の先生じゃないので職員室に戻って行ってしまった。それについて何か言うつもりはない。文句を言われたら言い返せばいい。僕がダメだったら親に言えばいい。


今回は光晃が初めて教師の言う事に反抗する話でした

これは・・・・光晃が悪いのか、それとも、デリカシーのない教師が悪いのか・・・・

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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