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【過去編7】両親は学校をサボった事について怒らなかった

今回は学校をサボった事について家族会議するところからのスタートです

学校をサボった光晃を両親はどうするのか?

では、どうぞ

 リビング内を重い空気が支配する。その原因は僕と向かい合う形で座っている真理姉さん達だった。


「光晃……」

「…………」

「…………」


 悲しそうに僕を見つめる真理姉さんと無言のまま見つめる父と母。僕はこの日、嘘を吐いた。それ以前に学校をサボった


「何?文句でもあるの?」


 小学生ながら僕にだって意地があった。休み時間に1人で本を読んでいるだけで誰にも迷惑を掛けてないのに執拗に教育実習生に絡まれてウンザリしていた。それを担任に相談しても忙しいという理由だけでまともに取り合ってくれなかった事に対する反抗みたいなものだったけど


「お前、学校をサボったそうだな」


 沈黙の中、最初に口を開いたのは父だった


「そうだけど?それがどうかしたの?」


 今もそうだけど、僕は学校をサボる事を悪い事だとは思わない。お金を出してくれている人には悪いとは思うけど、実際の教育現場で働いている人間を心配させて申し訳ないなとは全く思わなかった


「いや、別にサボった事をどうこう言いたいわけじゃないんだ。ただ、どうしてサボったんだ?」


 開き直りとも言える反応をしたのにも関わらず父は僕を怒る事なんてせずにただ僕が学校をサボった理由を聞いてきた


「別に行きたくないから行かなかっただけ」

「そうか」


 素っ気なく返す僕に父は怒鳴るどころか普段と変わらない反応を見せる。どうして怒らないのか、この時の僕は気にも留めてなかった。しかし、今の僕が自分の子供を持った時に父と同じ反応を示すと思う


「光晃、担任の先生からの留守電を聞いた時は本当にビックリしたわよ~」


 そう言う母は父同様に怒鳴るわけでもなくいつもと同じ笑顔のままだった。普通は自分の子供が学校をサボったら怒鳴りつけてもいいものだと思うけど、今思うと母は父の通う高校の教育実習生だったから教育の何たるかを大学で学んで僕が学校をサボったのにも理由があると思ったのかもしれない


「そう。でも、僕は謝らないよ?」

「別にいいわよ。児童(生徒)にサボらせるような先生が悪いんだから」


 僕の両親は普通じゃない。小学生ながら僕はそう思った。普通は学校をサボった事を謝らせるようなものだけど


「2人ともそれでいいんですか!?」


 今まで僕の名前を呼ぶ以外で口を開かなかった真理姉さんが口を開いた。確かに学校をサボった事を怒りもしないだなんて変だよね


「いいのよ、真理ちゃん」


 母は今までと変わらない口調で答える。僕としては怒られない事は万々歳だ。だけど、世間一般の親からしてみればそれは間違っている。世間の親がどんなものかは知らないけど


「で、でもッ!光晃は学校をサボったんですよ!?」


 真理姉さんの言う通りだ。僕は学校をサボった。それを咎めないだなんて間違っている。当時、高校生だった真理姉さんはそう思ったに違いない


「真理ちゃん、授業中に児童(生徒)が居眠りしたり、サボったりするのはその先生の授業がつまらないって言っているか苦手科目かのどっちかなの。児童(生徒)に居眠りさせない、サボらせないような工夫をし、それでいて児童(生徒)が苦手科目に対して少しでも苦手意識をなくすような授業を先生はしないといけない。でも、光晃の担任の先生はそれができなかった。その結果、光晃が学校をサボった。それは担任の先生の落ち度とも言えるわ。光晃がどんな理由でサボったのかは私は知らないけどね」


 癪に障るけど、母のこの言葉を僕は教師と対峙する時によく使っている。児童(生徒)が授業中に居眠りするのは授業がつまらないかその科目に苦手意識を持っているから。つまらなかったとしても苦手意識を持っていたとしても教師は居眠りさせない、サボらせない授業を作らなければならない。僕はそう思う


「そ、それでも……」


 真理姉さんは反論しようとしているらしいけど、言葉が出なかった。自分にも覚えがあるのか、それとも、反論しようにも言葉が出ないのかは知らないけど


「真理ちゃん、今は理解できないと思うけど、あなたが教師を目指し、大学で学べば解るわ」


 反論しようにも言葉が出ない真理姉さんの意を汲み取ったのか、母は真理姉さんの頭を撫で、諭すように言った。この時の僕は真理姉さんが教師になるだなんて微塵も思ってなかった。


「は、はい……」


 これ以上反論できなくなったと観念したのか、真理姉さんは何も言わなかった。


「さて、私とお父さんはこれから小学校に行ってくるけど、その前に光晃、言う事があるわよね?」


 そう言って僕を見つめる母の目はいつもとは違い、厳しいものになった。


「何?今になって学校をサボった事を謝ればいいの?」

「違うわ。学校をサボった理由を説明しなさいと言っているの」


 僕に求められたのは謝罪の言葉ではなく、学校をサボった理由の説明。本当に変な親だ。


「わかったよ、説明するよ」


 僕は1人で本を読んでいるところに毎回教育実習生が絡んでくる事、担任にそれを相談しても“忙しい”の一言で取り合ってもらえなかった事がサボった理由だと説明した


「はぁ……なるほどね……教室でも図書室でもね……」

「…………」


 理由を聞いた母は呆れていた。それに対し、父は無言のままだった。


「光晃……」


 呆れる母、無言の父とは違い、悲しそうな視線を僕に向けてくる真理姉さんはこの時、何を思ったのだろうか?


「まぁ、いいわ。とにかく、私達は小学校に行ってくるわね」


 そう言って母は無言の父を連れ、出て行った。そして、リビングに僕と真理姉さんだけが残された


「僕も部屋に戻るね」


 真理姉さんと2人きりでいたくなかったわけじゃないけど、僕はただ何となくリビングにはいたくなかった


「待って」


 リビングを出ようとした僕を真理姉さんが引き留める。今でもそうだけど、真理姉さんは人の話をよく聞くようなタイプじゃない


「何?学校をサボった話ならお父さんとお母さんが許してくれたから真理お姉ちゃんに怒られる覚えはないんだけど?」


 真理姉さんは僕の身内だ。でも、所詮は従姉。両親が許してくれるからと言って何をしてもいいというわけじゃないけど、たかが従姉に説教をされる覚えはない


「別にその事をとやかく言うつもりはないよ。ただ、どうして相談してくれなかったのかなって思っただけで」

「別にお姉ちゃんに言う事でもないでしょ」


 この言葉に他意はない。親戚にもそうだけど、いちいち学校であった事を従姉に報告する義務も義理もない


「それでも、一言くらい相談してほしかったな……」


 この時の真理姉さんは泣いてないのにどうしてか泣いてるように見えた


「今度からそうするよ」


 関係ないと突き放すのは簡単だけど、悲しそうに僕を見る真理姉さんを突き放す事なんてこの時の僕にはできなかった。そこまで冷酷じゃなかったってものあるけど


「うん。それからもう1ついいかな?」

「何?」

「ここじゃなくていいから私と一緒にいてくれないかな?」

「なんで?」

「1人は寂しいから」

「僕の部屋でいいなら別にいいけど」

「うん!」


 僕と真理姉さんはリビングから僕の部屋へ移動する事になった。


「…………」

「…………」


 僕の部屋に移動したのはいいけど、なぜか2人とも無言だった。高校生になった今は別に誰かと気まずくなろうとも関係ない。僕がそれを気にしないし、それに、気まずくなるのは教師か教育実習生に限定されるし


「ねぇ、光晃」


 重い空気に耐えかねたのか、先に口を開いたのは真理姉さんの方だった


「何?」

「いつも本ばっかり読んでて楽しい?」

「楽しいからいつも本を読んでるんだよ」


 楽しいからいつも本を読んでいる。楽しくなかったら教育実習生の言う通り他の同級生と表を駆け回っている


「そう。でも、いつもいつも本ばかり読んでると飽きない?」

「別に。学校で友達と遊んでいる方が飽きるよ」

「どうして?」

「決まってボール遊びか鬼ごっこ、後は戦いごっこしかやらないんだもん」


 学校にゲームとかを持ち込んじゃいけないって言うのは理解できる。だけど、そのせいか遊びがパターン化してきているのも事実。でも、なくなったとか、盗まれたとかのトラブルを避けたり、勉強の妨げになるようなものを持ってきちゃいけないっていうのも理解できないわけじゃない。小学生の頃なんて特にそうだ。ゲーム等以外のものがなくなっても大問題になるのにゲームなんて持ち込んでなくした日にはどんな事になるやら……


「男の子はやんちゃだからね。それも仕方ないよ」


 そう言って笑う真理姉さんの顔は今とは違って幼い。真理姉さんが老けているとか、老けて見えるとか、ゴリラに見えるとかじゃないよ?ただ、高校生だし、10代だから!本当にそれだけだからね!


「遊びがそれしかないなら本を読んでいた方がマシだよ」


 パターン化した遊びはいつもやってると飽きる。たまにやるから面白いのであって、いつもやりたいかと聞かれれば僕はやりたくないと答える


「そっか。でも、学校をサボるのはどうかと思うよ?」


 僕は真理姉さんのこの言葉で何かが切れるのを感じた


「うるさいなぁ、別にいいでしょ?僕が学校に行こうが行かなかろうがさ。お姉ちゃんに何の関係があるの?」

「ご、ごめん、そんなつもりで言ったわけじゃ……」

「じゃあ、どんなつもりで言ったの?」

「担任の先生が嫌なら保健室とか、校長室にいたらよかったんじゃないかなって思って……」


 真理姉さんの目には薄っすら涙が溜まっていた。小学生に言われただけで半ベソを掻く高校生。


「今度からそうするから泣かないで」


 小学生の僕でも解る。真理姉さんは泣くとめんどくさい。今はマシになっているけど、当時は泣いたら最後、何を要求されるかわかったものじゃなかった。1番キツかったのは一晩抱き枕にされた事。あれが1番キツかった


「な、泣いてないもん……」

「はいはい」


 僕は真理姉さんの頭をそっと撫でた。これを今の真理姉さんが見たら何て言うんだろう?そして、葵衣や優奈にも見られたらどんな事を言われたものか……


 余談として、小学校から帰ってきた父と母は出かける前と同じ呆れたような顔をしていた。何を言われ、何を話したのかは知らないけど、父と母にとっては呆れるような内容だったんだろう。これだから教師や教育実習生は嫌いなんだよ。もう1つ余談として言うと、翌日から教育実習生が僕に必要に絡んでくる事はなく、担任にはなぜか補佐が付いていた。中学校の副担任は理解できるけど、小学校の担任補佐は理解できなかった



今回は学校をサボった事について家族会議するところからのスタートでした

光晃の両親は学校をサボった光晃を叱るのではなく、どんな原因があるにしろサボらせるような学校と担任に問題があると思うようです

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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