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【過去編3】僕はうっとおしい実習生がいなくなってくれて清々する

今回は光晃の教師、教育実習生が嫌いになった原因の一端が垣間見える話です

今時こんな実習生がいたらある意味でとんでもない事になると思う。という実習生登場です

では、どうぞ

 真理姉さんと一緒に住み始めてから早いもので数か月が経った頃、僕のクラスに教育実習生が来た。この頃は教育実習なんてものがあるだなんて知らなかった。なので来た実習生も『一緒に勉強する先生が来た』程度にしか思ってなかった。この頃の僕がどんな認識をしていたかは問題じゃない。問題なのはたかが数週間程度しかいない人間がやり過ぎると言う事だ


「岩崎君、どうして君はいつも1人なのかな?」

「どうしてって1人が好きだからだけど?それが何か問題あるの?」


 どうして1人でいるかなんて聞かれて正直に答える僕はまだいい方だ。自分が望んで1人でいるんだから。だけど、教育実習生の女はそれを良しとはしない。今思えば仮に僕がイジメられてたとしても教育実習生ごときが1人で立ち向かう問題じゃないと思う


「みんなと一緒に遊んだ方が楽しいよ?」

「僕は教室で1人で本を読んでいた方が楽しいんで邪魔しないでもらえる?」


 小学校には休み時間になったらクラスメイトと遊ぼうだなんて決まりはない。児童が休み時間に何をしていても教師や実習生には関係ない。そのはずなんだけど……


「いや!1人で本読んでるよりみんなと一緒に遊んだ方が楽しいよ!ほら、先生が説得してあげるからみんなと一緒に遊ぼ?」


 頼んでもいないのに余計なお節介を焼く実習生。こんな事してて実習を打ち切られても僕の知った事ではない。実習を打ち切られるだけならまだマシな方でこれが保護者の耳に入ったら人によってはクレームものだ


「嫌だよ。それに、本読んでるんだから邪魔しないで」


 小学校1年生に教育実習生だなんて言って理解できるはずがない。いや、理解してる子は理解してるけど、大抵の子は理解できてないと思う


「いや!みんなと一緒に仲良く遊びなさい!ほら!!」


 教育実習生は僕の腕を掴み、連れ出そうとする。女と言えど小学校1年生の僕は力では敵わない。もしかしたら痣ができてるかもしれない


「嫌だって言ってるだろ!!」


 僕は教室を飛び出した。


「あっ!待ちなさい!」


 教室から飛び出した僕を追いかけてくる実習生。小学校1年生と言えど意思のある人間だ。何でもかんでも思い通りになると思ったら大間違いだ。それに、待てと言われて待つバカはいない。僕は教育実習生の制止を無視して職員室へと駆け込んだ。高校生となった今では実習生や教師に言い返すけど、当時の僕は小学校1年生。同級生との喧嘩ならいざ知らず、教育実習生が問題を起こした時は職員室に逃げ込むに限る


「あら?岩崎君、どうしたの?そんなに慌てて」


 職員室に駆け込んだ僕は運がいいのか悪いのか、担任の女性教師に見つかった。小学生だし、身近に教育実習に行った人がいない限り教育実習がどんなシステムで行われているかなんてのは知る由もない。そんな当時の僕でも先生に危害を加えられそうな時にどうすればいいかなんて事は知っている。同級生に意地悪された時に先生に言いつける奴がいるけど、要するに教育実習生や教師に危害を加えられそうになったら職員室に避難すればいい。ただそれだけの話


「も、森川(もりかわ)先生に無理矢理お外で遊ぶように言われて逃げて来たんです!」


 状況が上手く説明できてないように思う。それでも、された事は素直に言った。


「そう。どうしてそうなったのかな?」


 僕の担任である女性教師は優しい事で有名な人物だった。いきなり児童を怒るとかはしなかった。


「ぼ、僕が教室で本を読んでいた時に森川先生が『みんなと一緒に遊んだ方が楽しいよ』って言って僕の腕を掴んで無理矢理……」


 そこからは恐怖も相まって言葉が出てこなかった。


「そう……とりあえず、森川先生にお話を聞いておくから岩崎君は図書室にでも行ってなさい」

「はい……」


 僕は教育実習生に見つからないルートで図書室へと向かった。その道中で教育実習生を呼び出す放送が校内に響き渡った。これを知ったのは後になってからで当たり前の事だけど、実習生が実習校で児童、生徒に暴行紛いの事をするのは実習受け入れ校としても、大学としてもマズイ事らしい。ま、当たり前だよね。真理姉さんが小学生の頃は病院も学校も禁煙じゃなかったけど、今は病院も学校も全面禁煙となっている。飲食店だって全面禁煙か分煙だ


 教育実習生の暴行紛いの事件が終わってから数日が経った。僕に暴行紛いの事をした教育実習生は僕に怪我がなかった事や初犯だった事から注意で済んだらしい。どうして僕がその事を知ったのかと言うと、あの後で担任から『森川先生には私からちゃんと言っておいたから』と言われたからだ。当の実習生からは何の謝罪もなかったけど。しかし、その一件で学習してくれたらどれだけよかった事か……


「岩崎君!本ばかり読んでないでみんなと一緒にお外で遊ぼうよ!私が説得してあげるから!」


 担任の話が本当ならこの実習生は数日前に注意を受けたはずなんだけど……あれかな?学習能力がないのかな?それとも、物覚えが壊滅的に悪いのかな?


「ぼ、僕はここで本を読んでいた方が楽しいからいい」

「そんな事言わずに!さぁ!」

「い、いいよ!僕は本を読んでいた方が楽しいんだから!」


 何度も言うけど、担任の話が本当ならこの実習生は注意を受けたはずなのに同じ事を繰り返している。北南高校の教師に負けず劣らず学習能力がない


「大丈夫だよ!君の孤独体質は私が何とかしてあげるから!」


 今でも思うけど、僕は孤独体質なのかな?それはいいとして、僕は1人でいる事に対し、何の不満もないし、友達が欲しいとも思わない。それは高校生となった今でも変わらない。にも関わらず、頼んでもいない事を勝手に何とかすると言われても困る


「孤独体質が何かは知らないけど、僕は友達が欲しいって思ってない!大きなお世話だよ!」


 小学校1年生に孤独体質なんて理解できるはずもない。単に知らないだけってのもあるだろうけど。それでも、この実習生がしている事は大きなお節介、余計なお世話だ


「あ!待ちなさい!岩崎君!」


 僕は数日前と同じように教室を飛び出し、職員室へと駆け込んだ。


「あら、どうしたの?岩崎君?」


 数日前と同じように担任に声を掛けられた。教育実習生に絡まれ、職員室へと駆け込み、担任に声を掛けられる。全てが数日前と同じ。


「も、森川先生にまた無理矢理お外で遊びなさいって腕を掴まれて逃げてきました……」

「ま、また?前に注意したはずなのに……」


 僕の話を聞いて驚愕の色を露わにする担任。注意したのであれば同じ過ちは犯さないと思うんだけど……


「で、でも、お外で遊びなさいって……」

「はぁ、わかったわ。森川先生と私と校長先生でお話するから前と同様に図書室にでも行ってなさい」


 僕は前回と同様に実習生に見つからないように図書室へと向かった。そして、前回と同様に校内には実習生を呼び出す放送がかかる。前回と違うのは『校長先生がお呼びです』という言葉が追加されているところくらいだ。北南高校に来る実習生もそうだけど、実習に来る前に大学で何を教わってきたんだ?自分の価値観は遠慮なく押し付けなさいって事かな?


 教育実習生が校長に呼び出された次の日、僕に外で遊ぶ事を強要した実習生は学校に来なくなった。小学生の頃はどうして来なくなったのかな?と思ってたけど、今思えば実習期間中に問題を起こしたんだから実習を打ち切られるのは当たり前の事だったんだ。


「森川先生が来なくなったけど、どうしたんだろうな?光晃、何か知らないか?」

「僕は何も知らないし、思い出したくもないね」


 真理姉さんが高校生でまだ大学で教職課程を取ってなかったから教師のなんたるかを知らない。しかし、教職課程のなんたるかを知ったところで僕の教師・教育実習生嫌いが簡単に治るはずなんてない。小学校1年生の頃の担任がどれだけ優しかろうとその後の教師がゴミだったら意味がない。それはともかく、秀義は実習生が問題を起こして来なくなったって事を知らないし、知ろうともしなかった。小学生の頭じゃ説明されても理解できない部分があると思うけど


「俺、結構好きだったんだけどなぁ……森川先生の事」

「そう。来れなくなって残念だったね」


 秀義は教育実習生が僕に暴行紛いの事をしたなんて事は露知らず、呑気に来なくなった実習生の事を好きだったと言ってるけど、それは表面だけ見れば好かれる実習生だとは思うよ?でも、裏面は嫌がる児童を無理矢理にでも自分の思い通りにさせようとする奴だ。大人しい児童(生徒)の親には評判の良い教師がいる。しかし、ヤンチャな児童(生徒)の親からしてみれば単なる無能教師と評判の教師なんて腐る程いる。つまり、何が言いたいか言うと、秀義みたいに元気に外で友達と遊ぶような奴からは好かれるけど、僕みたいに1人で読書していたいような奴からしてみれば最悪な実習生だったという事に他ならない


「なんだよ~?光晃は寂しくないのか?」

「寂しくないよ。むしろ、僕の平和な休み時間を脅かす脅威がいなくなってくれて清々したよ。後、秀義」

「ん?何だ?」

「ウザい」

「光晃~」


 秀義がウザいのは高校生になっても治ってない。高校生になっても治ってないという事は当然、中学の頃もウザかった。小学校の頃はどうだったか?だなんて考えるまでもない。ウザいに決まっている。幼稚園の頃なんて覚えてないからカウントしないけど


「抱き着かないで」


 僕は秀義を引き剥がしながら自分に異常なくらい絡んでくる教育実習生がいなくなってくれた事を内心、喜んでいた。人の不幸を喜ぶわけじゃないけど、児童(生徒)としてはたかが少しの間だけしかいない人間に干渉される謂れはない。実習が終わってしまえば児童(生徒)と教師でも何でもない。赤の他人だし


今回は光晃の教師、教育実習生が嫌いになった原因の一端が垣間見える話でした

信念を持って実習に臨む事はいい事なんですが、やり過ぎたりすると児童(生徒)からは疎まれたりします。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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