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【過去編1】今も昔も真理姉さんは僕の事が好きだと思う

今回から光晃の過去編スタートです

昔の光晃はどんな感じなのでしょうか?天真爛漫なのか、それとも、今みたく大して変わらないのか?

では、どうぞ

 これは僕がまだ葵衣と出会う前の物語。僕が教師や教育実習生を嫌いになる前の物語だ。と言っても何から話すか正直言って迷う。僕が教師や教育実習生を嫌い始めたところから始めればいいのか、それとも、真理姉さんと一緒に住み始めるキッカケから話せばいいのか……とりあえず、真理姉さんと一緒に住み始めた頃の話から始めるね。それは僕が小学1年生の6歳で真理姉さんが高校1年生の16歳の頃だった


「光晃!」

「く、苦しいよ……真理お姉ちゃん」


 この頃の真理姉さんは顔を合わせる度に僕に抱き着いてきた。そんな真理姉さんを僕は『真理お姉ちゃん』と呼んでいたし、口では苦しいと言いながらも抱き着かれるのは嫌ではなかった。


「いいじゃん!私、光晃の事が大好きだし」

「ま、まぁ、いいけど……」

「やった~!」


『大好きだから』と言われて許してしまうあたり僕も幼かったと思う。しかし、今思えば抱き着く理由が大好きだからっていうのは意味不明だ


「光晃、兄さん達が待っているから早く入りなさい」

「うん」


 この頃の父は今と変わらず。変わったところを挙げるなら家にいるかいないかくらいだ


「あらら~?光晃は真理ちゃんに抱き着かれて照れてるの~?」

「光晃、そうなの?私に抱き着かれると嬉しいの?」

「ち、違うよ!そんなんじゃないよ!真理お姉ちゃんまで何言ってるの!」


 母も家にいない事以外は今と大して変わらなかった。僕の異性関係でおちょくってくるところは昔から何も変わってない


「光晃、私に抱き着かれるの嫌……?」

「い、嫌じゃないよ」

「そうよね~、光晃は真理ちゃんに抱き着かれるのが嫌なんじゃなくて、照れてるだけよねぇ~」

「母さんうるさいよ!」


 僕は自棄になり、真理姉さんの家の中へ入った。この頃の僕って子供っぽい。実際、子供だったんだけど


「あ、光晃、待って」


 弄ってくる女性陣を尻目に僕は真理姉さんの家の中へとドンドン進む。今思えばこの頃から真理姉さんに対し思うところがあったみたいだ。とは言っても負の感情ではなく、純粋に『この人、僕の事好き過ぎないか?』という疑問だけど


「待ってってここは真理お姉ちゃんの家でしょ?それに、僕達が泊まる部屋はいつも一緒なんだから見つからないって事はないと思うけど」

「それはそうだけど、私は光晃と一緒にお家に入りたかったの!」

「あ、そう」


 気が短い人ならカチンときてもおかしくない僕の対応にもちゃんと返してくれる真理姉さん。幼い頃でこれだ。今の僕は真理姉さんからしたら相当捻くれているか辛辣になった。そう感じていてもおかしくはない


「うん!」


 ニパっと笑う真理姉さん。今は顔を綻ばせて笑う事は少なくなった。今度から少しだけ真理姉さんに優しくしようと思う


「それにしても相変わらず広い家だね。僕の家の倍はあるんじゃないの?」


 僕の家────正確には現在僕と真理姉さん、葵衣、紅葉さん、優奈が住んでいる家なんだけど、そこと比べると真理姉さんが住んでいた家の倍はある。幼い僕は身体が小さく、目線も低かったから大きいと感じただけかもしれないけど


「そう?私は大きいと感じないけど?」

「そりゃ真理お姉ちゃんはいつもいるからでしょ?久しぶりに来た僕にはそう感じたの」

「ふ~ん」


 ふ~んって……反応薄いね


「光晃、それは遠回しに俺の稼ぎが少ないと言っているのか?それとも、俺が貧乏性だって言いたいのか?」


 僕達の後ろを歩いていた父が嫌味たらしく聞いてきた。子供の言葉は時として大人を傷つける。それは聞いた事がある。だけど、僕は稼ぎがどうとか、貧乏性だとかの話はしていない。それに、子供の言う事に対して目くじらを立てるだなんて大人げない。僕も今は高校生となり、すでに大人に近い年齢だけど、そんな僕でもこんな反応はしないよ……


「そんな事一言も言ってないでしょ。それに、僕のお家の周りには他のお家もあるからあんまり大きなお家は建てられなかったって自分で言ってたでしょ。お父さん達には対して大きくないと感じても子供の僕にとっては大きく感じるの」

「そ、そうか……」


 マセた感じでものを言うのは僕の本質らしい


(りょう)、自分の息子相手にムキになるだなんてみっともないよ?」

「で、ですが、美波さん、俺にだって男の意地と父親の威厳がですね……」

「相手は自分の息子でしょ?父親の威厳はともかくとして、男の意地は関係ないでしょ!」

「はい、ごめんさない……」


 母に怒られてションボリする父。幼い頃は敬語ってものがあると知らなかったから仕方ない。しかし、幼いながらに僕は『どうしてお父さんはお母さんと違う喋り方をしているんだろう?』そう思っていた。まさか、僕の父が元・生徒で母が父の通う学校に教育実習生として来てただなんてこの頃は知らなかった。教師、教育実習生って言葉も知らなかった


「光晃のお父さんって尻に敷かれてるね!」

「尻に敷かれる?何?それ?」

「なんて言うのかな~?光晃のお母さんがお父さんに対して好きにする事かな?」

「へぇ~」


 ニュアンス的には間違ってないけど、真理姉さん……小学校1年生の前で尻に敷くはないでしょ……せめて、『光晃の家はお母さんの方が強いんだね!』くらいにしてよ。それにしても、当時、小学校1年生だった僕の前で『尻に敷く』だなんて言葉を使ってよいのやら……


「あ、光晃、解ってないなぁ~!お姉ちゃんの説明がそんなに下手だったのかな?ん?言ってみ?」


 僕の頭をグリグリしながら聞く真理姉さんの顔は母さんがよくする僕をからかっている時の顔をしていた。今もそうだけど、女とはいえ年下の僕が年上の真理姉さんに力で敵うわけがない。口喧嘩では勝てる自信あるけど



「い、痛いよ!真理お姉ちゃん!お姉ちゃんの教え方が解りづらいとかじゃないから!小学校1年生の僕には難しかっただけだから!」

「うむ!よろしい!」


 何がよろしいのかサッパリだけど、真理姉さんの機嫌は治った。大人になってもそうだけど、真理姉さんに『僕の方が年下で難しい、真理姉さんの教え方が悪いわけじゃないから』と言うと簡単に機嫌が治る。それは教師になった今でも変わらない。


「お父さん、お母さん、光晃達が来たよ!」


 真理姉さんは茶の間の襖を開けた。この頃の僕は小学校1年生だったから和風と洋風という概念がなかった。そのせいなのか、僕はどうして真理姉さんの家と自分の家に違いがあるのか等の事はわからなかった


「おー、光晃!元気だったか?」

「はい、おじさん!こんにちわ!」

「こんにちわ、光晃君」

「こんにちわ!おばさん!」


 父から口酸っぱく『仕事や勉強なんてできなくていい。だけど、あいさつだけはできる人になりなさい、間違った時はすぐに謝れる人になりなさい、してもらった時はすぐにお礼を言える人になりなさい』と言われてきた。幼稚園に入る前からそんな教えを受けてきた僕にとってあいさつするのは当たり前の事だった


「偉いぞ光晃。ちゃんとあいさつできるんだな」


 僕の元へやってきた叔父さんが頭を撫でて褒めてくれる。高校生となった今では誰かに頭を撫でられるなんて事がない。言うなれば幼子の特権だ。まぁ、高校生にもなって頭を撫でてほしいなんて思わないけどね


「そりゃ、俺の教育がいいからな!」

「亮の教育がいいんじゃなくて光晃の物覚えがいいからだ。自惚れるな」

「相変わらず兄さんは厳しいな……」

「当たり前だ。俺は自分にも他人にも厳しいんだよ」


 よく覚えてないけど、僕の叔父さん───真理姉さんにとってのお父さんは自分にも他人にも厳しい人だった。今の真理姉さんが自分にも他人にも厳しい人かと聞かれるとそうだとは言い切れない。教師という仕事をしているからとかは関係ない。


「お久しぶりです、お義兄さん、姉さん」

「うむ、久しぶりだな。美波さん。あとついでに亮も」

「俺はついでか!」


 叔父さんのちょっとしたボケに父が突っ込む。これは僕達が小谷家に来る度に行われる恒例の行事だった。そして、僕達そっちのけで話を始めるため、僕は毎回、真理姉さんの部屋で遊ぶ。


「全く、お父さん達は……」


 僕を部屋へ拉致した真理姉さんはプリプリと怒っていて、その頬はリスの如く膨らんでいる。


「まぁまぁ、お父さん達だってお話したい事があるんだからそんなに怒らないで?お姉ちゃん」


 そして、なぜかそんな真理姉さんを宥めつつ、叔父さん達を毎回フォローするのが僕の役目だった。


「ん~!大人ぶる光晃も可愛い~!」

「ま、真理お姉ちゃん!いきなり抱き着かないでよ!」

「えへへ~」

「く、苦しい……」


 高校生の頃の真理姉さんはどういうわけかスキンシップが激しかった。今ならその理由も何となく解る。1人っ子だった真理姉さんはきっと寂しかったんだ。下に弟か妹がいなかったから。でも、毎回毎回抱き着かれてたら身が持たなかったのも事実だった


「あ、ご、ごめん……」

「ぜぇぜぇ……」


 真理姉さんから解放された僕の息は上がっていた。小学校1年生だし、この頃は体力もなかったから仕方ないっちゃ仕方ない。


「だ、大丈夫……?」

「だ、大丈夫だよ……」


 やり過ぎたと思ったのか、不安気に僕を見つめる真理姉さんと警戒心丸出しの僕。叔父さん達が僕達そっちのけで話をするのと同じで真理姉さんの抱き着き癖には慣れていた。だから、別に怒りはしない。それに、何だかんだで楽しいと思う僕もいた。そう、叔父さん達があんな事になるまでは……


「光晃!大変!叔父さん達が!!」


 部屋で勉強していた僕の元へ慌てた様子の母がやって来た。普段慌てる事のない母が慌てているのを見て相当大変な事が起きている。そう思った


「叔父さん達がどうかしたの?」


 相当大変な事が起きているとは思っていてもそれがどんな事かまでは小学校1年生の僕には想像もできず、叔父さん達に何があったかを聞くので精一杯だった


「叔父さん達が事故に遭って亡くなったって真理ちゃんから電話が来たの!」


『亡くなった』この言葉の意味を当時の僕は理解できなかった。でも、母の慌てようから2度と戻って来ないくらいは理解できた。


「え……?」

「だから、すぐに準備して真理ちゃんのところへ行くわよ!!」


 驚く僕を余所に母は身支度をし、僕の分の荷物もまとめ、驚くしかできない僕の手を引いて真理姉さんの家に向かった。真理姉さんの家に向かう途中、僕はずっと混乱したままだった。どうやって列車に乗ったかなんて当然、覚えてない。当たり前でしょ?叔父さん達の突然の死。小学校1年生には重すぎる出来事だったんだから。


 真理姉さんの家に着いた僕達はインターホンを母が鳴らし、真理姉さんに出迎えられた。そして、出迎えてくれた真理姉さんはいつも遊びに来た時みたいに抱き着いてこなかった。逆に全く元気がなかった。最初はそれがどうしてか解らなかったけど、今思えばそれは当然の事だと理解できる。自分の両親が死んだんだ。元気もなくなる


「光晃、ゲームしてるなり本読んでるなりしてていいから真理ちゃんのお部屋に行ってなさい。お母さんは真理ちゃんと少しお話があるから」

「うん……」


 真理姉さんとどんな話があるのかは知らないけど、当時、子供だった僕には聞かせられない話だというのはすぐに解った。僕は母に言われた通り、真理姉さんの部屋に行ったけど、ゲームをする気にも本を読む気にもならなかった。何もしないでただ、ボーっとしてる。


「真理お姉ちゃんとお母さんは何を話しているんだろう?」


 ゲームをする気にも本を読む気にもなれない僕は真理姉さんと母が何を話しているかが気になっていた。







今回から過去編がスタートしました

今回は今の光晃が昔を振り返る形にしてみました。ぶっちゃけ、光晃は真理の呼び方と両親の呼び方以外はあんまり変わってないと思います

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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