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【閑話休題】僕は葵衣の意味不明なイタズラに付き合わされる

今回は閑話休題という事で葵衣の意味不明なイタズラに付き合わされる光晃です

葵衣のイタズラって何でしょう?

では、どうぞ

 北南高校を退学し、新しい学校にも慣れてきた。北南高校と違って教師は必要以上に絡んでくる事はないから僕としては過ごしやすい事この上ない。それは置いといて、僕は今、新しい本を探してショッピングモールに来ているんだけど、さっきから誰かに見られている。そんな気がする。


「僕の気のせいだとは思うけど、何だろう?この誰かに見られているような感じは……それも、1つや2つじゃない」


 ショッピングモールという人が大勢いる場所で見られていないという事はないんだけど、そういった視線じゃなく、何と言うか監視されているような感じがする。さて、どうしたものだろうか?


「とりあえず泳がせておこうか?勘違いかもしれないし」


 視線は気にはなるけど、とりあえず泳がせておく事にした。もしかしたら僕の勘違いかもしれないし


「さて、本屋に向かうか」


 僕を監視しているような視線は一先ず放置し、僕は本屋に向かう。僕を監視しているのであれば本屋まで付いて来るはずだし、ひょっとしたら見ているのは僕じゃなく別の人かもしれないし


「あのぉ~すみません」


 近くで女性の声がした。しかし、誰に声を掛けているかわからないし、僕には関係ない。そう思って僕は本屋へと向かおうとした。しかし……


「あの!!すみません!!」


 先程の女性の声が荒くなった。人に声を掛けられて無視するだなんて非道な人間も世の中にはいるんだと思っていたけど、肩を掴まれた時点で女性が僕に声を掛けてきた事は簡単にわかった


「はい?何でしょうか?」


 新手のナンパか何かかな?そう思って振り向いたら服装と容姿がかなり違う僕の彼女である水沢葵衣が立っていた。


「ブティックに行こうとしたら道に迷ってしまったので案内して欲しいんですけど……」


 うん?葵衣、君はこのショッピングモールに何回も来ているよね?そんな人がどうして道に迷うのかな?


「そこに総合案内所があるのでそちらで聞けばよろしいかと思いますけど?」


 僕の現在地は1階。本屋は2階。つまり、この階には総合案内所があるので僕がわざわざ案内する必要はない


「貴方に案内してほしいんですけど……」

「は、はぁ……」


 俗に言う特殊メイクを施され、口調まで変えて僕に近づいてきた葵衣。一体何を考えてるんだか……


「あー!!溜息吐いた~!」


 そりゃ口調と容姿を変えて白々しく声を掛けてきた彼女に対して溜息を吐く以外の反応をしろって言う方が無理でしょ


「そりゃ、初対面で道に迷いました、目的地まで案内してくださいって言われたら誰だって溜息を吐きたくなりますよ」


 相手が口調と容姿が違う葵衣だから特に何も言わないけど、これが本当に知らない人で初対面だったら何かを言われても無視する


「そ、それについては謝ります……で、ですが、貴方に案内してほしかったのは本当の事です」

「そ、そうですか……」


 こんな時、僕はなんて言っていいかわからない。しかし、口調と容姿が違うのが気になる。どうして葵衣は口調と容姿を変えて僕に話し掛けた?そう言えばテレビのバラエティー番組で恋人や家族が口調を変えて近づいて来たら気が付くかどうかっていう企画があったっけ?いや、まさかね


「それはいいとして、行きましょうか?」

「あ、はい」


 こうして僕は状況がよく理解できないまま変装した葵衣と共にブティックへと向かう。何がどうなっているのやら……


「着きましたね」

「そうですね。では、僕はこれで失礼しますね」


 これ以上、葵衣のおかしなイタズラに付き合う気なんてないので僕はブティック店の前で葵衣と別れようとした


「ま、待ってください!」

「何でしょうか?」

「で、できれば私のお洋服を選んでほしいんですけど……ダメ……ですか?」


 葵衣の狙いが何かサッパリわからない。葵衣は何を狙っているんだろう?


「ダメではありませんが、僕は本屋さんに行きたいんですけど?」

「そ、それってダメって言っているのと同じじゃないですか……」


 ダメだとは一言も言っていない。ただ、僕は本屋さんに行きたいって言っているだけで


「ダメとは言ってませんよ?ただ、僕にも予定というものがあると言っているだけです」


 僕は葵衣に告白されるまで彼女なんていた事なんてないし、親しい異性もいなかった。まぁ、真理姉さんがいたから異性と全く触れ合ってなかったかと言われればそうじゃないけど


「そ、そうですか……予定があるのに引き止めてしまってすみませんでした……」


 葵衣の表情はまるで捨てられた子犬のようだ。時と場合によるけど、僕は女性の泣く姿や泣きそうな表情には滅法弱い


「はぁ、少しだけなら付き合いますよ」

「本当ですか!?」

「ええ、本当です」


 付き合うと言った途端に太陽のように顔を輝かせる葵衣。現金なものだ


「じゃ、じゃあ、早く行きましょう!」

「はいはい」


 嬉しそうな顔で僕の手を引きブティック店に入る葵衣を見て僕はほっこりしかけた。しかし、僕は葵衣の服選びに2時間付き合わされたという事を言っておこう。女性の服選びってどうしてこうも時間が掛かるの?


「つ、疲れた……」

「す、すみません、2時間も付き合わせてしまって……」


 疲れ切っている僕を見て葵衣はシュンとしている。選ぶ本人はいいとして、付き合わされる方は疲れるという事を再確認したところで時刻は現在、12時。言うまでもなくお昼時だ。さて、本屋に行くか


「いえ、構いませんよ。では、僕は本屋に行くので失礼します」


 僕は今度こそ葵衣と別れて本屋に向かおうとした。が、しかし……


「わ、私も行きます!」


 今度は付いて来ると言い出した。何なんだ?本当に……勘弁してよ


「いや、付いて来ても退屈だと思いますよ?」


 これ以上振り回されてたまるかと思い、葵衣の提案をやんわり断る


「大丈夫です!退屈なんてしませんから!」

「そうは言いますけど、本当に退屈ですよ?」

「大丈夫です!」

「は、はあ……貴女がそう言うなら付いて来て構いませんけど、本当に退屈ですよ?」

「構いません!」


 何なんだ?と思いつつ僕は葵衣と共に本屋へと歩き出した。聞きたい事はいろいろあるけど、とりあえず本屋に行きたい。聞きたい事は昼食の時にでも聞けばいい。


「本当に何なんだ?」


 今日、珍しく真理姉さんも葵衣も優奈も紅葉さんも外出していて僕1人だったから久しぶりに本屋に行こうとこのショッピングモールに来た。だけど、いきなり声を掛けられたと思ったらメイクにより容姿を変えた葵衣に遭遇した。そして、洋服選びに付き合わされるだなんて今日は厄日だ


「さぁ!本屋ですね!」

「そうですね」


 本屋に着いたからって店の前で宣言しなくても見れば解るよ葵衣。これで教員になるって言うんだから世も末というか、日本の将来が心配になる


「入りましょう!」

「そうですね」


 もうどうにでもなれ。僕は今日初めて葵衣のイタズラに付き合わされたけど、こんなに疲れるとは思わなかった。


「さて、今日は掘り出し物あるかな?」


 特に欲しい本はない。しかし、何か掘り出し物があれば買う。それが僕のスタイルだ。本にしてもゲームにしてもね


「何かいいものありましたか?」

「ええ、それなりに掘り出し物はありましたよ」


 掘り出し物の本を買った僕は葵衣と共に本屋から出てフードコートへと足を進める。僕は葵衣と違って買い物に時間を掛ける事はしない。何より葵衣の服選びに時間を取られて疲れているから一息つきたい


「うわぁ、どこもいっぱいですね」

「そうですね。まぁ、お昼時ですから仕方ないんじゃないんですか?それでもピークは過ぎたと思いますけど」


 ピークは過ぎたとはいえ、フードコート内は人でごった返していた。


「ど、どこに座りましょうか?」

「どこにしましょうか?」


 人でごった返しているフードコートはとてもじゃないけど、僕達2人が座れる場所を見つけ出すのも困難な状態だ。この中から開いている席を探すのは難しい


「と、とりあえず空いている席を探しましょうか?」

「そうですね」


 人でごった返しているフードコート内を空いてる席を求めて彷徨い歩く。これだけ席があるんだから2人分の席くらいあるはずだ。あるよね?


「あ、光晃さん!ここ空いてますよ!座りましょう!」

「そうですね。ここにしましょうか」


 空いている席を見つけ、僕の名前を呼ぶだなんて我が彼女ながら間抜けだと思う。指摘したら葵衣はなんて答えるんだろう?


「さて、何を食べるか決まりましたか?」

「いえ、まだ決まってません。食べるものを決める前に1つだけよろしいでしょうか?」

「はい?何ですか?」


 向かい合って座る僕と葵衣の間に妙な緊張感が漂う。本来なら緊張なんてする理由はないけど、カミングアウトとか、何かを見破る時って妙に緊張するなぁ……


「葵衣はいつまでその妙な口調で話すの?」

「え……?」


 僕の指摘に葵衣は驚いたような顔をする。この顔はバレてないと本気で思っていた顔だね。


「バレてないと思った?」

「う、うん……」

「容姿や口調は変えてたみたいだけど、人間には変えられない部分ってあるんだよ?どんなに変えようとしても変わらない部分がね。何だと思う?」

「な、何……?」

「声とか目つきだよ」


 声も目つきも変えようとしたら変えられる。声ならば声帯手術をしたりしてね。まぁ、声優って仕事があるくらいだから手術なんてしなくても変えられるかもしれないけどね。目つきについてもそうだ。ちょっと工夫するだけで変えられるだろうけど、葵衣を追いつめるにはこれで十分だ


「そ、そっか、じゃあ私の変装は最初から無駄だったんだ……」

「うん。葵衣は口調や容姿は変えてきたけど、声や目つきは全く変化してなかったよ?それで、これは番組か何かの企画?」

「う、うん……」

「やっぱりね」


 後で知った事だけど、葵衣達はバラエティー番組の企画に応募し、見事に当選した。そして、その番組の企画のターゲットとして選ばれたのが僕。真理姉さん達はグルだった事を聞かされた。しかし、最初から変装した女性が葵衣だという事に気が付いていたと葵衣を始め、スタッフの人に言ったらガッカリしたような顔をしてたけど、やるならもう少し上手くやってほしかったよ


今回は閑話休題という事で葵衣の意味不明なイタズラに付き合わされる光晃でした

次回は光晃の過去編をやろうと思います。実習期間よりも後日談の方が長くなっている気がする今日この頃

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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