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【北南高校退学編最終】僕は秀義に呼び出される

今回は学校退学編の最終回です

秀義に呼び出された光晃ですが、呼び出された目的とは?

では、どうぞ

 葵衣と優奈が作った昼食を堪能した僕は食べ終わった後、特に何かするでもなく、ただのんびりと過ごしていた。しかし、夕方、秀義から『夕方に河川敷に来い』というメールを貰ったのが運の尽き。僕は現在、河川敷に来ている。


「この時期は冷えるし、僕には夕飯の準備もあるんだから早く済ませてほしいんだけどなぁ……」

「まぁまぁ、光晃、そう言わないで、ね?」

「そうだよ。光晃。秀義君だって好きで遅れているわけじゃないんだからさ」


 秋の夕暮、寒空の元で待たされてイラついてる僕を宥める葵衣と優奈。この2人は秀義から呼び出されたと言ったら自分達もついて行くと言って付いて来た。最初は止めたんだけど、葵衣と優奈に根負けし、結局許可してしまった。


「それにしたって遅すぎるでしょ。指定の時間からもう30分は経ってるし」


 秀義のメールには17時に河川敷に来いと書いてあった。しかし、現在、時刻は17時30分。指定された時間からすでに30分は経過している。社会生活において遅刻は結構な痛手になる。特に時間にうるさい企業なら尚の事。


「そうだけど……名倉君だって好きで遅れているわけじゃないと思うよ?」


 葵衣が遅れている秀義のフォローをするけど、葵衣は教師を目指している身だ。今から厳しくしろとは言わないけど、教師を目指している人間が遅刻を容認するのはどうかと思う。


「はぁ、葵衣に免じて後5分だけ待つけど、5分待って来なければ必要な物を買って帰る」


 退学届を出したから僕は北南高校の生徒ではない。それでも僕には家事がある。その時間を秀義を待つ事に割いている。本来なら10分待って来なかったら帰ってもよかったんだけどね


「「…………」」


 僕の宣言に無言の葵衣と優奈。何を無言になっているのか知らないけど、当たり前でしょ?僕にとって秀義は恋人でも何でもない。長時間待つ価値のある人間じゃない


「光晃!待たせたな!」


 遅れた事を悪びれるでもなく秀義達が現れた。てっきり僕は秀義1人で来るものだと思ってた。それはいいとして、時間に遅れる事、35分。ようやくだ。このバカ、少しは悪びれるとか謝罪の一言を言うとかなんかないの?


「時間に遅れて来ておいて謝罪の一言もないの?悪いけど、僕は帰る」


 遅刻してきておいて謝罪の一言もない奴に付き合うほど僕はお人好しじゃないし、優しくない


「わ、悪い!遅れたのは謝る!だから、俺……いや、俺達の話を聞いてくれ!」


 俺達?そう言えば秀義の隣りには理沙と何時ぞやのバカなオジサン、そして、真理姉さんがいた。真理姉さん以外は北南高校を退学した今となっては縁のない連中だ


「話?僕に今更何の話があるの?くだらない話なら僕は帰る」


 秀義は何回言っても理解しないバカ、理沙は自分の行いがどのような結果を生みだすか理解してないバカ、隣りのオジサンも理沙と同じ種類のバカ、真理姉さんは教師は無力だという事を理解してないバカ。僕の時間はこんなバカ達に奪われたのかと思うと怒りを通り越して悲しくなる


「そう言わずに聞いてくれよ!頼む!この通りだ!」


 そう言って僕に土下座までしてくる秀義。そこまでして僕にしたい話って何だろう?


「はぁ、わかったよ。話だけなら聞くから頭を上げてくれないか?いくら君がバカだとはいえ、河川敷で土下座しているところを見られたら誤解される」

「聞いてくれるのか!?」


 勢いよく顔を上げた秀義。僕に話を聞く義理なんてないけど、先送りにしたらしつこそうだ。新しい学校に行くにあたって北南高校との関わりは邪魔なだけ。できるだけ今のうちに消しておこう


「聞くだけならね」


 聞くだけ聞いて帰ろう。それで北南高校との関わりが消えるなら


「ありがとう!話があるのは俺じゃなくて理沙とこちらの方なんだ」


 秀義が後ろに下がり、理沙とオジサンが前に出る。てっきり秀義が話すものだと思ってた。だけど、この2人の話はある程度予想ができる。理沙は謝れって話だろうし、オジサンは理沙と援交した事を黙っておいてくれって事だろう。そんな連中の話に大した価値はないけどね


「そう。それで?君達の話って何かな?理沙の方は僕に謝罪の要求でオジサンの方は理沙との援交を黙っておいてくれっていう話かな?」


 それならそれで僕は帰るけどね


「ち、違うよ!私は岩崎に謝りたくて……」

「謝る?何を?」


 理沙が僕に謝る事なんてあったっけ?理沙が悪いと思ってないのなら無理に謝る事なんてないと思うけど?


「文化祭で岩崎が嫌がっているにも関わらず女装させようとして挙句、岩崎が学校に来なかった事に対して謝罪を要求した事だよ……」

「そう。誰に言われたかは知らないけど、僕はもう北南高校の生徒じゃない。それで?そっちのオジサンの話は何?」


 理沙の謝罪は僕が北南高校に在学していれば許す許さないの話になるけど、退学した今となっては別にどうでもいい。だけど、オジサンの話はそれ以上にどうでもいい


「あ、ああ、私の話は理沙ちゃんとの援助交際について学校側に報告しないでほしいんだ。もちろん、都合のいい話だって言うのは理解している!だけど、私にも家族がいるんだ!何とかお願いできないかな?」


 オジサンの話は案の定、援交について黙っていてほしいという話だった


「黙っているかどうかを決める前に、オジサンは理沙と肉体関係を持ったの?」

「えっ……?」

「いや、“えっ……?”じゃなくて、理沙との肉体関係はあるのか聞いてるの。で、あるの?ないの?」

「あ、ある……」


 オジサンは少し小さな声であると答えた。そっかぁ……あるのか……まぁ、あってもなくても関係ないけど


「そう。まぁ、あってもなくても僕には関係ないけどね。どっちにしろ学校には報告するし」


 肉体関係があってもなくても学校側には報告する。いや、違うか。録音データを学校にメールで送信するって言った方が正しいか


「そ、そんな……私には家族がいるんだ!それに、最近になってようやく家族と解り合えるようになってきたんだ!!」


 そう。理沙とオジサンが関係を持つようになった原因はこの2人の家族にあった。それを考えると別にバラされたところで何の問題もないと思う


「理沙とオジサンが関係を持つ原因は家族にあったわけだし、今更解りあうもなにもないでしょ?まぁ、家族に相手にされないからってバレたらマズイ事になりそうな行為をするなんてバカ以外の何物でもない」


 オジサン達にはこう言ったけど、実際、大人と付き合いたい高校生もいるって言うのもまた事実だって事は黙っておこう


「し、しかしだな……」

「しかしもかかしもないよ。理沙とオジサンが援交してしまったのは確かだけど、そこまで2人を追いつめたのは2人の家族でしょ?バラされたところで家族が壊れる事はないでしょ?元はといえば家族が原因でそうなったんだからさ。会社を解雇されたり、学校を退学になったりしても家族は温かく見守ってくれるさ」


 僕としては心の底からどうでもいいから早く終わらせたい。理沙の家族もオジサンの家族もどうでもいい


「い、岩崎、私達の為に黙っておいてくれないかな……?」


 泣きそうになりながらも僕に懇願してくる理沙。だどさ、理沙。僕にとって君には1円の価値もない


「理沙、僕にとって君は何の価値もない。北南高校もそうだけどね。退学した僕なんて放っておけばよかったのに、どうしてこんなところに呼び出して話し合いをしなきゃならないのやら……これ以上は時間の無駄だから帰るね?」


 不正は絶対に許せない。そんな正義感を僕は持ち合わせていない。どんな人間でどんな職業に就いたって不正を働く奴は働くし、真面目な奴は真面目だ。真面目な奴だって間違いを犯す。当然、取り返しのつかない間違いだってあるけど、転んで怪我して成長するのが人間だと思う。だけど、この2人は何だ?転んで怪我するどころか僕に不正の片棒を担ぐように言ってきた


「ま、待って!黙っていてくれたら何でもするから!だから!お願い!学校には言わないで!」


 土下座せんばかりの勢いで頭を下げる理沙。そんな理沙を見て僕は携帯を取りだす


「はぁ、仕方ないか……」

「だ、黙っててくれるの!?」


 希望に満ちた目で理沙は僕を見つめてくる。携帯を取りだしたのが時間を確認する為だとでも思っているのは無理もないと思う。しかし、僕がやるのは北南高校のメールアドレスに前もって移しておいた理沙の援交宣言の録音データを送る事。そして、今、それが終わった。携帯には『送信しました』の文字があった


「まぁ、僕の()()()は何も言わないよ。理沙とオジサンが泣きそうな顔してるしね」


 そう、僕の口からは何も言わない。口からはね


「「あ、ありがとう!!」」


 理沙とオジサンは2人揃って頭を下げる。僕の口からは何も言わないってだけでメールを送信しないとは一言も言ってない


「別に。君達には興味がなくなっただけだよ。それに、早く帰りたい。もう帰っていいかな?」

「う、うん、私達の話は終わったから帰っていいよ。ありがとね、私のした事を黙っててくれて」

「興味がないから僕の口からは何も言わないだけだよ」


 理沙達との話し合いが終わり、葵衣、優奈、真理姉さんと共に家への帰路に就いた。その道中……


「ねえ、光晃」

「何?真理姉さん」

「理沙さん達のした事を本当に黙っていてあげる事にしたの?」


 理沙達同様、真理姉さんも僕がした事について理解してない。僕は『僕の口からは何も言わない』とは言った。だけど、『学校に音声データを送らない』とは一言も言ってない。つまり、僕が直接伝える事はしないけど、メールで送らないとは一言も言ってない


「僕の口からは何も言わないだけだよ。時間の無駄だからね」

「そう。光晃は優しいね」


 何を勘違いしたのか、真理姉さんは優しいと言った。別に優しくしたつもりはないんだけどな……


「僕は優しくないよ」


 優しいという部分を否定し、家に向かって歩く。そう、僕は優しくない。


 この後の話を少ししよう。僕は無事、新しい学校を決め、無事に転入する事ができた。その間に真理姉さんから理沙の援交宣言の音声データを学校に送り付けた事を咎められたけど、『僕の口からは何も言わないと言っただけで音声データを学校に送らないとは一言も言ってないよ』って言ったら黙った。そして、これも聞いた話だけど、理沙は退学し、オジサンは会社を解雇されたらしい。ま、理沙もオジサンも運が悪かったと諦めるんだね



今回は学校退学編の最終回でした

秀義に呼び出された理由は理沙達が過去にした事を黙っていろというお願いの為でしたが、光晃が直接口に出して言うことはありませんでした。まぁ、音声データは学校にメールで送りつけましたけど

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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