【北南高校退学編4】僕は葵衣に期待してない事を話す
今回は光晃が葵衣に何の期待もしてない事を言う話です
光晃に期待してないと言われた葵衣はどうするのか?
では、どうぞ
無言で俯く葵衣をリビングに残し、僕は自室に戻った。自室に戻った僕は何かを考えるでもなく、ただボーっとしていた。そんな時、葵衣が部屋を訪ねてきていきなり土下座してきた。それはよくないけど、この際放っておこう。それでいきなり捨てないでと言われた僕はどうしたらいいの?
「何をどう考えたら僕が葵衣を捨てるのかな?」
元々僕は自分に寄ってくる人間には興味がない。葵衣から初めて好きだと言われた時にも特に気にしなかった。いや、それどころか教育実習中に何考えてるんだと疑問に思った。しかし、いつしか僕も葵衣に好意を寄せていた。そんな僕がどうして葵衣を捨てると思うの?
「だ、だって、光晃、冷たいし……」
冷たく接した=捨てるという方程式が理解できない。っていうか、僕が周囲の人間に冷たいのはいつもの事だと思うんだけど……
「葵衣、僕が冷たいのって割といつもの事だと思うんだけど?」
「それはそうだけど、いつもの光晃は冷たさの中にも優しさがある。だけど、今の光晃からは冷たさしか感じないよ」
「それは気のせいだよ。僕はいつもと同じだよ。まぁ、葵衣が冷たいだけで優しさを感じないと思っているのなら心当たりがあるんじゃないの?」
「…………」
僕の指摘に黙り込む葵衣。まぁ、僕が口に出さなくても葵衣には心当たりがある。それが何かってのは大体見当は付いてるけど
「葵衣の心当たりってのは僕を話も聞かずに問いただそうとした事でしょ?」
「うん……」
「この際だからハッキリ言うけど、葵衣が僕の話を聞かずに問いただそうとしたり、何かをさせようとする事なんてもう慣れっ子だし、葵衣が僕の話を聞いてくれる事なんて期待してないから」
「…………」
僕の本音にまたも黙り込んでしまう葵衣。だけど、今回の事もそうだけど、文化祭の準備段階から解っていた。葵衣が僕の話を聞かずに僕が悪いと決めつける事なんてね。もし、葵衣が僕の話をちゃんと聞く人間だったら僕はこんな事は言わない
「黙っちゃったところ申し訳ないけど、僕の話を聞くって事に関しては葵衣に何も期待してないから」
何も期待してない葵衣とどうして付き合っているのか?最初の頃は好きだから付き合っていたけど、今となっては自分がどうして葵衣と付き合っているかだなんて僕自身がわからない
「光晃……」
葵衣も目からは大粒の涙が流れていた。何も期待してないは言い過ぎたかな?
「どうしたの?何で泣いてるの?」
「だって、光晃に何も期待してないって言われたのが悲しくて、悔しくて……」
「その通りじゃん。教員もそうだけど、葵衣は僕が何かをしでかした時に公平な判断よりも自分に降りかかる面倒事を早く済ませたいだけでしょ?違う?」
「違うよ……私はそんなんじゃないよ……」
「じゃあ、どうして話を聞く前に優奈と一緒に僕を問いただそうとしたのかな?まぁ、理沙を泣かせたのは事実だけどさ」
僕が理沙を泣かせたのは事実だ。しかし、教師になり、非行を行った生徒を指導する時に必要なのは結果に対しての指導は大切だけど、その前にどうしてそれをしてしまったのかを聞くのが大切だと思う
「だって、光晃が女の子を泣かせたって聞いたから……」
「それは間違いないけど、僕がなぜ女子を泣かせたか、泣かせた理由を聞くのが筋なんじゃないの?何?葵衣も北南高校の教師達と同じなの?」
僕が葵衣にされた事は北南高校の教師達と何も変わらない。
「違うよ!!私は北南高校の先生達とは違うよ!!」
僕の問いを力一杯否定してみせる葵衣だけど、僕からしてみれば葵衣も北南高校の教師達も大して変わらない
「否定するだけなら誰でもできるよ」
否定するだけ、言うだけなら誰だってできる。しかし、言った事を実行するのは相当の努力が必要だ
「それじゃ……それじゃ光晃はどうしたら私に期待してくれるの!?」
どうしたら期待してくれるのも何も僕は始めから誰に対しても何の期待してないんだけどなぁ……
「いや、そもそもが僕は誰に対しても何の期待もしてないんだけど?」
「えっ…?」
葵衣は驚いたような顔をしているけど、僕にとっては当たり前の事であり、今に始まった事じゃない
「驚いているところ申し訳ないけど、僕は真理姉さんにも秀義にも葵衣にも何の期待もしてないよ。当たり前じゃん」
「えっ……?で、でも、光晃は私と付き合ってるんだよね?私の事が好きだから私と付き合ってるんだよね?」
「そうだけど?好きじゃなかったら恋人になるわけないじゃん。でも、それと期待しているかどうかは話が別だよ」
僕が葵衣と付き合っているのは好きだから。それは間違いないけど、だからと言って期待しているかと聞かれれば答えはNOだ。
「私って期待されてなかったんだ……」
「うん。期待はしてなかったね。真理姉さんを見てると解ると思うけどさ、教師って自分の思い通りにならない生徒は力づくで従わせようとする節があるじゃない?それに、葵衣は教育実習生だった。大学卒業したら教師になる人に期待なんてできるはずないよね」
別に教師になる事が悪いと言ってるんじゃなくて、学校は学校、家は家とメリハリを付けろ。ただ、それだけなんだけどね。まぁ、力で人を従わせようとする奴なんて教師じゃなくても嫌われるだろうね
「光晃……私が期待されてないのって今回の事があったからなの?」
今回の事がなくても僕は葵衣に期待なんてしてない。長い目で見てもそうだ。仮に僕と葵衣が結婚し、僕が教職以外の職業、葵衣が教職に就いてたとしよう。今の葵衣を見ると僕に何かトラブルがあると必ずと言っていいほど僕の話を聞かずに疑ってかかってくる。そんな人に何を期待しろって言うのやら
「いや、今回の事がなくても僕は葵衣に期待なんてしない。だけど、僕に何かトラブルがあった時、今の葵衣を見てると僕の話を聞かずに疑ってかかってくるでしょ。そんな人に何を期待するの?これでわかったでしょ?葵衣には何も期待してないってことが」
自分でも酷い事を言ってる自覚はある。だけど、そんな事知った事ではない。
「ど、どうしたら光晃に期待してもらえるようになるのかな……?」
葵衣は涙を流しながら問いかけてくる。さて、涙を流しながら問いかけてくる葵衣に無理難題を突きつけるか、それとも、幼稚園児でもできそうな要求を突きつけるか……
「僕が葵衣に期待するか決めるのは理沙を泣かせた理由を言った後の葵衣を見てから決めるよ」
結局僕は無理難題を押し付けるでも幼稚園児でもできそうな要求を突きつけるでもなく、今回あった事を話してから決める事にした。
「わかったよ」
「じゃあ、簡単にまとめて話すけど─────────」
僕は葵衣に学校に退学届を貰いに行った事、その帰りに真理姉さん達に見つかり、理沙に絡まれ、文化祭の失敗についての謝罪を要求された事や理沙の援助交際について黙っていた理由を話し、その結果、理沙が泣いたという事を話した
「そうだったんだ……そんな事があったのに私は光晃の話を聞かずに問い詰めようとしてたんだ……」
「うん。まぁ、問い詰められた時に一瞬、葵衣を捨てようかって事も考えたけどね」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
葵衣はしばらく僕に涙声で謝り続け、後半は本当に泣いていた。
「落ち着いた?」
「うん……」
「さて、落ち着いたところで話を続けるけど、文化祭の事について、僕が女装する事になったのはどうしてだか覚えてる?」
理沙が泣く原因になった文化祭。その文化祭でどうして僕が女装しなくてはならなかったのか。その理由について葵衣に聞いてみた。別に覚えてなくてもいいんだけど
「たしか、女装したら補習授業を免除するっていう理由だったよね?」
「うん。正確には僕1人の為に補習授業なんてできないって理由だから免除とは少し違うんだけど、それはこの際どうでもいい。問題は補習授業ができない理由だよ」
「補習授業ができない理由?」
葵衣はキョトンとした顔をしている。まぁ、補習授業ができない理由なんてあんまり想像できないか
「そう。補習授業ができない理由は教師達が暇じゃないから」
「なに……それ……?」
「さぁ?」
今日の葵衣は沈んだり泣いたりキョトンとしたり驚いたりと忙しいなぁ~。それは置いといて、教師が暇じゃないて理解に苦しむ理由で補習授業ができないと言われるのは頭が痛い
「えっ?だって、単位が足りなくて補習授業ができないなら課題を出せばいいじゃん!えっ?それもしなかったの?」
さすがは教職課程を取ってきただけはある。そう、単位が足りないけど、補習授業ができないのなら課題を出せばいい。またはボランティア等の奉仕活動でそれを補うとか。いくらでもやり方はあったはずなのに女装しろと来たものだ
「それもなかったよ。しかも、真理姉さんも見たがってるとか言われたしね。まぁ、それが嫌で僕は文化祭準備をサボった。後は葵衣も知っての通りだよ」
「うん」
「それで、退学届を貰いに学校に行ってその帰りに理沙に絡まれ文化祭の失敗に対する謝罪を要求さてたけど、葵衣なら僕の性格知ってるよね?」
「うん」
僕はしつこく絡まれるのは好きじゃない。周囲に毒を吐く。しつこく絡んだらどうなるかなんて彼女の葵衣なら簡単に想像できるだろう
「どうせ退学するし、最後だからいいかと思って理沙の援助交際を黙っていた理由を話したら勝手に泣いた。これが僕が理沙を泣かせたという話の真実だけど、葵衣は今の話を聞いてどう思う?理沙の自業自得と思うか、女子を泣かせてしまった僕が悪いと思うか」
僕としては守りたい存在じゃない奴の悪行を黙っていたので感謝されど恨まれれる覚えなんてないんだけど
「理沙ちゃんが光晃にしつこく絡んで過去の悪行をバラされただけだし、理沙ちゃんの自業自得だと思う。それに、援助交際なんてしたら自分がどうなるかくらい高校生だったら想像できると思う」
葵衣にしては珍しく厳しめの意見だった。これは少しだけ期待してみてもいいのかな?
「そっか。今の言葉を聞いて葵衣に少しだけ期待できそうだよ」
「本当!?」
「うん。北南高校のバカ共よりはマシってレベルだけどね」
「それでも、光晃に期待されるんだったらいい!」
葵衣は満面の笑みを見せた。その後、優奈も帰ってきた。しかし、優奈とは一言も言葉を交わす事はなかった。だからと言って僕は気まずさなんて感じなかったけど、優奈は気まずそうにしていた。それと、優奈と同じように気まずそうにしてたのが真理姉さんだという事を言っておく
今回は光晃が葵衣に何の期待もしてない事を言う話です。
光晃は結局葵衣を生かさず殺さずという方法を取りました。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




