【教育実習実施前編最終】私は実習に向けての準備を進める
今回は葵衣実習実施前の最終回です
オリエンテーションで実習前の葵衣はどんな感じなのでしょうか?
今日、確認したところブックマークが50件を超えていました。ありがとうございます!
では、どうぞ
内諾活動を終えてから早いもので1年が経ち、私、水沢葵衣は大学4年になった。教育実習に必要な単位は2年と3年の間に取ったから教育実習に行くのには全く問題ない。必要な書類も大学に提出したし、実習校からも教科指導とHR担当が記された書類が大学経由で家に届いた。そして、現在、6月中旬。
「やっほー!葵衣!」
「やっほ~、美咲ちゃん」
私は大学内の食堂で親友の羽山美咲ちゃんとお昼を共にしていた
「オリエンテーションの連絡来た?」
「ううん、まだ来てないよ」
6月中旬だというのにまだオリエンテーションの連絡が来てない。相手は教師だから絶対に大丈夫だとは言い切れない。先輩に聞いた話だと1週間待っても連絡が来ない事だってあるって聞いた事があるし。はぁ、大丈夫かな?
「そっか……葵衣もまだかぁ……」
「うん……」
「「はぁ~」」
私達は溜息吐いた。家に来た書類には7月1日から15日の2週間と書いてあった。実習までまだ時間はあるとはいえ、オリエンテーションの連絡が来ない事に私も美咲ちゃんも焦りを感じている
「クヨクヨしても仕方ないけど、さすがに連絡が来ないのは不安だよね」
「そう……だね……」
「学校に電話すると催促してるみたいになるからしたくないよね……」
「うん……」
特に約束したわけじゃないから学校に『オリエンテーションの日程はいつ頃でしょうか?』なんて電話はできない。現場の教員は忙しい。私達が学校に連絡すると催促するみたいで気が引けるけど……いつオリエンテーションをやるかを問い合わせるのは実習を受け入れてもらうという立場である私達にはできる気がしない
「気長に待つほかないよね……」
「そうだね」
私達はオリエンテーションの連絡を今か今かと待っていた時、私の携帯が鳴った
「はい、もしもし?」
『水沢葵衣さんの携帯でしょうか?』
「はい」
『北南高校の黒田ですが、教育実習のオリエンテーションの件でお電話差し上げたのですが、今、大丈夫でしょうか?』
「はい」
『急で申し訳ありませんが、明日の午後3時頃なんて大丈夫でしょうか?』
明日の午後3時か……急ではあるけど、特に予定もない。
「大丈夫です。明日の午後3時ですね?」
『はい』
「わかりました」
『では、明日の午後3時にお待ちしております』
「はい。よろしく願します」
『よろしくお願いします。では、失礼します』
「失礼します」
今日まで悶々と待ち続けていたけど、オリエンテーションが明日に決まってホッと胸を撫で下ろす。
「葵衣、オリエンテーション明日になったの?」
「うん!」
私のオリエンテーションの日程は決まったけど、美咲ちゃんはまだ決まってない。私1人なら喜んでいたけど、美咲ちゃんの前では躊躇われる
「あ、ごめん、電話来たみたい」
オリエンテーションが決まった話をしていた時、今度は美咲ちゃんの電話が鳴った。
「はい、羽山です。はい、明日……わかりました。失礼します」
美咲ちゃんは電話を切り、私にVサインをしてきた。どうやら美咲ちゃんもオリエンテーションの日程が明日に決まったみたい
「オリエンテーションの日程決まったの?」
「うん!明日の午後3時だって!」
「私と同じだね!」
「うん!」
私達はオリエンテーションの日程が決まった事を喜んだ。1番嬉しいのは無事に教育実習が終わり、教員免許を取れた時だけど、今の私達にとってオリエンテーションの日程が決まった事が何よりも嬉しい
オリエンテーションの日程が決まった後、私達は準備の為、帰宅した。準備と言ってもスーツを出し、カバンにメモ用のノートと学校から渡される資料を入れるファイルを鞄に詰め込むだけなんだけど、準備しておいて損をする事はない
「お待たせ!美咲ちゃん!」
「いや、待ってないよ」
私と美咲ちゃんは北南高校の校門前でカップルみたいなやり取りをしていた。特に約束をしていたわけじゃないけど、同じ高校で同じ時間にオリエンテーションを予定しているんだから当たり前なんだけどね
「よかった。じゃあ、行こうか?」
「うん!」
私と美咲ちゃんは内諾活動と同じように玄関のインターホンを押した。前回と違うのは職員室じゃなく直接会議室に通された事くらいで待たされるのは同じ。でも、先生達は先生達で自分の仕事があるから仕方ないよね
待たされる間、私達は教科指導担当の先生とHR指導担当の先生がどんな人になのかという話題で盛り上がっていた
「教科指導の先生もHR指導担当の先生も優しい人がいいよね?」
「うん。怖い人だったりセクハラしてくる人だったら嫌だもんね」
事前に教育実習について調べたけど、教育実習中に現場の教員によるセクハラ、パワハラがあったり、指導をサボった挙句、唐突に実習を打ち切りにされたという話があった。私は無事に実習を終わらせたいからそれだけは嫌だ!
「当たり前でしょ!」
「だよね!それより、そろそろ来るんじゃない?」
「そうだね」
そろそろ指導教員の先生が来ると思い、話を切り上げた。
コンコン
「「はい」」
「「「「失礼します」」」」
ノックの後に入ってきた4人の先生。その中には内諾活動の時に対応してくれた先生もいた。この人が私か美咲ちゃんの教科指導かHR指導になるみたいだけど、どっちかな?
「では、最初に水沢さんのHR担当と教科指導の紹介からします」
「はい」
学校の教育目標とかの説明が最初じゃないの?とは思うけど、オリエンテーションのやり方は学校によって違うと思う。だから、私はあえて何も言わない
「私が水沢さんの教科指導を担当する小谷です」
「よ、よろしくお願いします」
この男らしい女性が私の教科指導担当かぁ……熱血系だったらどうしよう……
「僕が水沢さんのHR指導を担当する川田です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
HR担当の先生の第一印象は爽やかな人。この人とは上手くやれそう
「北南大学4年の水沢葵衣です!よろしくお願いします!」
私の事は教頭先生に聞いていて知っていると思うけど、一応、自己紹介をしておく。相手が私の事を知っていたとしても自己紹介は大事だもんね
「「よろしくお願いします」」
私の担当の先生達とのあいさつが終わったところで次は美咲ちゃんの番なんだけど、私の担当の先生達と違って美咲ちゃんの担当の先生達は平均年齢が高いように見える
「次は羽山さんの担当の紹介ですね。では、先生方、よろしくお願いしますね。私は別の仕事がありますのでこれで自己紹介が終わった頃に戻ってきます」
教頭先生はそう言って出て行ってしまった。自己紹介なんて5分くらいで終わるのに、5分で終わる仕事ってなんだろう?
「では、私から。私が羽山さんの教科指導を担当させていただきます赤澤です」
「よろしくお願いします」
赤澤先生の第一印象はお淑やかなお嬢様みたいな人。そんな人だけど、私と同じように教育実習を経て教員になった。だから、この人も授業をするんだろうけど、この人が授業をしている姿なんて想像できない
「次は私ですね。私は羽山さんのHR指導を担当する西山です。よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします」
美咲ちゃんも教科指導とHR担当の紹介を終えたみたいだけど、教頭先生は紹介が終わったタイミングで戻ってくると言った。しかし、戻ってくる気配はない
「水沢さんと羽山さんの担当する先生の紹介が終わったようですね。では、我が北南高校について説明させていただきます」
「「はい」」
私達は北南高校の基本的な事から教育目標、校訓等の説明を受け、最後に私達が担当するクラス、私達がする研究授業の範囲について説明され、教科書を貸してもらった。そして、教育実習初日に指導案を提出する事を言い渡された。後、クラスの名簿もこの時に渡された。そして、帰り道──────
「葵衣の担当の先生達、若いね」
「そういう美咲ちゃんの担当の先生達はお淑やかというか、落ち着いた雰囲気だね」
私達はお互いの担当の先生達についての話をしていた。学校じゃ絶対にできない話ができるのは帰り道か大学の中だけ。原則として実習校の話を外でするのはよくない
「クラスの子達の名前、覚えなきゃね」
「うん」
私達はクラスの子達の名前を覚えなきゃいけない。名簿だから顔写真はないけど、せめて名前を覚えるくらいしないとね
「じゃあ、私、こっちだから」
「うん。またね」
私達は別れ、それぞれの家へと帰る。そして、帰宅した私は北南高校が自分から見てどんな学校なのかを実習日誌に記入し、それが終わった今、自分の担当するクラスの子達の名前を暗記すべく名簿とにらめっこをしていた
「井上寛一君……次が岩崎光晃君……あれ?岩崎君って確か1年前に先生に怒鳴られてた子だよね?」
私が去年、内諾活動に行った時、生徒指導室で怒鳴られていた生徒が岩崎君だった。美咲ちゃんは関わりたくないと言ったけど、私は怒らせたくないと言った子。そんな子が私の担当するクラスにいる。人の怒りの沸点なんて私にはわからないけど、岩崎君は怒らせてはいけない。私の直感がそう言っている
「私が去年行った時は1年生だったんだ……」
2年生のクラス名簿に名前があるんだから高校2年生なのは当たり前だけど、普通の高校生とは少し違う。直接会った事はないけどね
「扱いづらい子だったらどうしよう……」
教師に反抗している時点で問題のある子だとは思うけど、教師になるんだったら問題のある子から逃げちゃダメだよね!うん!問題のある子でも私は向き合う!頑張れ私!
「どんな子か知らないけど、私はちゃんと向き合うよ!岩崎君!」
私はこの時、その問題のある子に助けられ、オマケに恋人として付き合う事になるとは思いもしなかった。もちろん、私がそんな子を好きになるだなんて事も。
今回は葵衣教育実習実施前の最終回でした
教育実習前って人によりますが、葵衣はほとんどやる事がない状態で終わりました。今回の話から実習1日目に繋がり、光晃との初対面になります。昨日はとあるニュースを見たせいか思うところがあり、更新できずに申し訳ありませんでした
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




