【許嫁問題編4】僕は話し合いの場所を決める
今回は話し合いの場所を決める話です
話し合いの場所はどこになるんでしょうか?
では、どうぞ
優奈と葵衣が仲良くなって1日が経過した。しかし、根本的な問題は解決していない。母達のバカな野望を阻止しない限りは僕と優奈に恋愛の自由はやって来ない。まぁ、父は1週間前に母だけでも寄越すと言ってたけど、具体的にいつになるかは聞いてない
「来る前に失踪するか」
元・母と亜優美から謝罪の言葉を聞く事すら面倒になっている僕。口だけの謝罪なんて聞きたくないし、その謝罪に意味はない
「光晃、唐突に何言ってるの?」
リビングにてテレビをボーっと見ていた僕に3人分の飲み物を持って現れた葵衣がツッコんできた。ホント、僕は唐突に何を言ってるんだろう?
「いや、なんかもう大人のバカな野望に振り回されるの疲れたし失踪するのもいいかなと思って」
僕だって大人になるから大人を見下すのはよくない。けど、バカな野望を抱く大人は身体だけ大人になって精神は全くと言っていいほど成長していない人は大人とは言えないと思うけど
「光晃……私達は今、葵衣の友達のマンションにいるんだから失踪しているようなものでしょ」
「確かに、優奈の言う通りだね」
僕は今、葵衣の友達のマンションにいる。僕も優奈も両親には伝えてないから事実上は失踪しているようなものだ
「でしょ?それを今更になって失踪はないでしょ」
僕は優奈の正論にグウの音も出ない。
「光晃がここにいるって事は真理さん達以外には教えてないよね?光晃のお母さんと優奈のお母さんが謝りに来た時に場所はどこにするの?」
葵衣の言う通り僕がここにいる事は真理姉さん達以外には教えてない。父も母も例外じゃない。父と母に教えてないって事は当然、丈一郎さんと亜優美になんて教えてない
「あー、ここは近所の事があるしなぁ……だからと言って喫茶店でってわけにもいかないし……結局は僕の家でって事になるね」
亜優美と元・母の関係がただの親友であり、僕と優奈の関係も少しは違っていたのかもしれない
「光晃の家には真理さんだけじゃなくて私のお姉ちゃんもいるって事を忘れてないかな?」
忘れていた。今、家にいるのは真理姉さんだけじゃなく紅葉さんもいるんだった……
「紅葉さんの事をすっかり忘れてた……」
真理姉さんにすら僕の現状を知らせてないのに紅葉さんなんて尚更知るはずがない。
「「光晃……」」
葵衣と優奈の呆れたと言わんばかりの視線。お願いだからそんな目で僕の事を見ないで……
「2人ともそんな視線を僕に向けないでよ。どこで会うかちゃんと考えるから」
バカな人間に使う時間ほど無駄なものはない。
「「よろしい!」」
葵衣、優奈、君達は僕の母親か何かなの?実年齢を考えると子供がいてもおかしくはないと思うけど
「はぁ……部屋に戻る」
僕は葵衣が持ってきてくれた飲み物を一気に飲み干し、自室へと戻った。
「元・母がいつ来るかすら未定なのに場所を考えるだなんて無理でしょ」
父からは母だけでも日本に寄越すと言われたけど、それがいつになるかは聞いてない
「催促するようで気が引けるけど、父に電話して確認しよう」
催促するようで気が引けるし、特別、元・母に会いたいってわけじゃないけど、日時が未定なのは場所を決める上では痛手だ
「バカな母2名が許嫁の約束だなんてバカな事をしなければこんな面倒な事にはならなかったのに」
ぼやいていても仕方ない。父に電話して確認しよう。そう決めた僕は机の上にあった携帯を取り、父に電話を掛ける
「あれ?出ないな……」
いつもなら1コールで出る父が今日に限って3コール過ぎても出ない。まぁ、高校生である僕と違って父は仕事をしているからすぐに電話を取れるはずがないのは当たり前の事なんだけど
「いつも1コールで出る父がおかしいのか」
僕はそう結論付け、電話切り、ベッドに寝転んだ。今まで1コールで出る父が仕事をしている立場の人間としてはおかしいかっただけ。それだけだ
「どうして僕が当事者にとってはた迷惑な約束をした人間の為に手間を掛けなきゃいけないのやら」
考えれば考えるほどバカバカしい。許嫁の約束だって僕がしたわけじゃない。母達が勝手にした約束だし、それに、僕はそんな話を聞いた事がない。当然、許嫁の話を知らない僕は彼女を作った。幼い頃から許嫁の話を聞いていたであろう優奈は今まで彼氏を作った事はないと思う。告白された事があるかどうかは知らないけど
「ん?電話か……」
マナーモードにしていた携帯が突然震えだした。電話かメールの着信だろうけど、多分、電話だろう
「ほらやっぱり」
携帯を確認すると『着信:父』の表示があり、僕はその電話を取った
「もしもし」
『光晃、さっき電話があったようだから折り返したんだが、何か用事か?』
「うん。元・母はいつ来るのかなと思ってね」
『あー、伝えてなかったな。母さんは3日後に日本に着く。場所の指定とかあれば俺から伝えておくぞ?』
3日後か……意外と早いな。それにしても、場所はどこにしよう……大勢の前で恥を掻かせるのなら喫茶店だし、身内の厳しい視線に晒させるのなら僕の家だけど……僕の元・母はいとして、亜優美の方は仮にも旅館を切り盛りしているし、公衆の面前で恥を晒して旅館の評判が落ちたら目覚めが悪い
「じゃあ、僕と真理姉さんが住んでる家に来るように言っといてくれない?」
『わかった。母さんにはそう伝えておくが、光晃』
「ん?何?」
『喫茶店じゃなくてよかったのか?』
自分の結婚した相手が醜態を晒すかもしれないのにどうして父は公衆の面前で恥を掻かせるように仕向けようとするかな
「元・母が醜態を晒そうと関係ないけど亜優美の方は旅館があるでしょ?亜優美が醜態を晒すのは別にいいんだけど、それが原因で旅館の評判が下がったりしたら丈一郎さんや従業員の方々に迷惑が掛かるからね。僕と真理姉さんが住んでる家に呼んで身内からの厳しい視線だけに留めておこうってわけ。だから、これでいいの」
『お前がそういうなら俺は構わないが……なぁ、光晃、俺は母さんを甘やかし過ぎたのか?』
「そんな事、僕が知るわけないでしょ。だけど父さんも丈一郎さんも自分の妻に好き勝手やらせ過ぎたとは思うけど」
父と丈一郎さんが自分の妻を甘やかし過ぎたかどうかだなんて僕は知らない。だけど、自分の妻に好き勝手やらせ過ぎたのは事実だと思う。その結果が今の状況なんだし
『そうか……そうだよな。俺が母さんに好き勝手やらせ過ぎた結果が今の光晃達の状況だもんな……』
父は僕達の状況を考えて自分を責めているらしい。ここで追い打ちを掛けたくはないけど、言うべき事はキッチリ言っておこう
「そうだよ。父さん丈一郎さんが元・母と亜優美に好き勝手やらせ過ぎた結果がコレなんだからね。これからは自分の妻をしっかり管理してよね」
『ああ、もちろんだ』
父の声に覇気はなかった。まぁ、妻は自分の夫をしっかり管理してほしいものだし、夫は自分の妻をしっかり管理してほしいものだ
「しっかり管理してくれるのなら僕はそれでいい。じゃあ、切るよ」
『ああ……』
僕は父との通話を切った。電話越しの父には元気がなかったけど、自分の妻に好き勝手やらせていた代償だ。僕は同情なんてしない
「はぁ……話し合いの場所に僕の家を指定したけど、真理姉さんだけじゃなく、紅葉さんもいるんだよなぁ~」
僕は紅葉さんの事をあまり知らない。だけど、研究授業の日には生徒である僕に頭を下げてまで妹である葵衣を守るように言ってきた。北南高校の職員という立場上仕方のない事だったとはいえ妹を守るために生徒である僕に頭を下げた。つまり、紅葉さんに僕の現状を知られた時にはどうなる事やら
「考えただけでも憂鬱だ……」
いくらノリが軽い紅葉さんと言えど今回の事を知ったらブチ切れるに違いないよなぁ……
「葵衣に確認してみるか」
紅葉さんの怒りの沸点がわからない以上、妹である葵衣に聞くしかない
「こうなったのも全て元・母と亜優美のせいだ」
僕は元・母と亜優美に文句を言いながらも自室を出てリビングに向かった
「あれ?もう出てきたの?」
「案外早かったね」
リビングに行ったら葵衣と優奈がポテチを摘まみながらバラエティー番組を見ていた。
「あ、うん、母達との話し合いする場所が決まったから報告しに来たのと葵衣のお姉さんについて聞きたい事があって来た」
話し合いの場所が決まったのも葵衣に聞きたい事があるのも本当の事だ。嘘は吐いていない
「私に聞きたい事?何?」
葵衣はキョトンとした顔で僕を見る。
「紅葉さんの事なんだけど」
「お姉ちゃんの事?」
「うん。紅葉さんってどういう時に怒るのかな?って思って」
「お姉ちゃんは滅多な事じゃ怒らないけど、自分が裏切られた時とか、家族を傷つけられた時には怒るよ」
僕に頭を下げてまで葵衣の事を託す人間だ。家族を傷つけられて怒るのは当然だと思う。裏切られた時に怒るのは当たり前だと思うけど
「マジか……ところで、葵衣のお姉さんは僕の現状を知ってたりは……」
「するね」
紅葉さんに説明する手間が省けたのはいいけど、僕としては紅葉さんがブチ切れてないかという不安が新たに発生した。この問題が終わったら母とは正式に縁を切ろうと思う。関わってたら僕はストレスでいずれ倒れそうだし
今回は話し合いの場所を決める話でした
話し合いの場所は光晃と真理の住んでいる家に決定しました!許嫁問題を早く片付けて葵衣が教育実習に行くまでの話を書かなきゃいけないと思う今日この頃・・・・
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




