【クリスマス編】クリスマスでも僕は変わらない
今回はクリスマス編です。
光晃達のクリスマスの過ごし方をご覧ください
では、どうぞ
僕は今までクリスマスを真理姉さん以外と過ごした事はない。小学校の頃のクリスマス会は時間の無駄だと思って出た事なんてなかったし、中学校も同じ理由で出なかった。高校はリア充グループがクリスマス会をやったような話を聞いた事はあるけど、僕は別にリア充のグループが何をしようとどうなろうと関係ない。
「はぁ……クリスマスは1人で読書する予定だったんだけど」
「「却下!!」」
「あ、あはは……」
僕の意見をもの凄い勢いで却下する真理姉さんと葵衣。そして、そんな2人の様子を見て苦笑いする優奈。いいじゃん!クリスマスに読書!最近じゃWeb小説をクリスマスに読む人だっているくらいだし
「はぁ……最初から僕の意見を聞き入れてもらえるとは思ってなかったけど、ものの見事に却下されたね」
真理姉さんと葵衣が揃い、クリスマスというイベントだと言う事を考慮したら答えは簡単に出てくる。真理姉さんと葵衣が僕の意見を聞き入れるわけがないってね
「光晃の意見を採用すると光晃はすぐに1人での活動をしようとするでしょ?」
さすが真理姉さん、僕の行動パターンをよく理解してらっしゃる
「当たり前でしょ?僕は騒がしいのが嫌いなんだから」
小学校のクリスマス会然り、中学校のクリスマス会然り、高校のリア充グループ然り、僕は騒がしいのが嫌いなんだよ
「で、でも、私は光晃とクリスマス会したいよ……」
僕とクリスマス会をしたいと目を伏せがちに言う葵衣。彼女のお願いとあらば叶えたい。だけど、僕以外はみんな成人している。別に成人しているのが悪いって言っているんじゃない。全員が酔いつぶれた時の心配をしているだけで
「僕以外はみんな成人してるでしょ?」
「「「うん」」」
「別に成人しているのが悪いって言ってるわけじゃないけど、酔いつぶれた時の世話って誰がすると思う?」
「「「…………」」」
僕の問いに黙り込む3人。この人達は酔いつぶれるまで飲む気だったのかな?そうじゃなかったら黙り込むだなんてしないよね?
「3人とも黙っちゃったけど、酔いつぶれた大人3人の介抱なんて僕は嫌だからね?」
「「「…………」」」
先程と同じように黙り込む3人。本当に酔いつぶれるまで飲む気だったのかな?
「さっきから黙ったままだけど、クリスマスの日まで世話したくないから僕は部屋に戻るね」
僕は黙り込んだ大人3人をリビングに放置し、自室に戻る。
「はぁ……こんな事なら葵衣の友達が提供してくれたマンションに住み続ければよかった……」
実家にいる事を今日ほど後悔した事はない。マンションならどんなバカでもご近所の事もあり遠慮するだろうけど、実家ともなるとその遠慮が薄くなる。
「別に葵衣達が二日酔いになろうと僕はどうでもいいけど、その前に酔いつぶれた大人3人を介抱する方の身にもなってほしいよ」
酔いつぶれた大人は気楽だと思う。世話は酔いつぶれてない大人か未成年に任せて自分は眠りこけていればいいんだから。でも、世話をする方はたまったもんじゃない。寝ている人間がどれだけ重たいかを知らないんだから
「こんな事なら家出すればよかった」
クリスマスだと言うのに家出すればよかっただなんていい考えじゃない。だけど、それ以上に僕は酔っ払いの世話が嫌だ
光晃が部屋に戻った後、私、真理さん、優奈の3人は一言も言葉を発する事ができなかった。真理さんも優奈もそれなりに酔いつぶれた人を今までに見てきたと思うし、お世話もしてきたと思う。その大変さはよく知っている。
「光晃、部屋に戻っちゃいましたね」
最初に言葉を発したのは優奈だった。
「そうだね……」
次は真理さん
「そうですね……」
最後に私
「光晃の気持ちも解るから強く言えないね……」
悲しそうに目を伏せる真理さん。私は大学の飲み会で、真理さんはおそらく教師同士の飲み会でそれぞれ酔いつぶれた人の介抱をしてきて解ってる。酔いつぶれた人のお世話がどれだけ大変かを。そして、優奈はお家の旅館で酔いつぶれたお客さんの介抱をして解っているんだと思うけど、酔っ払った人の介抱は女性の私達にとってはかなり大変
「「はい……」」
私達はただ光晃と一緒にクリスマス会したかっただけだけど、光晃にとってはクリスマス会もだけど、私達がお酒を飲んで酔い潰れるのが嫌みたいだった。
「私、光晃のお部屋に行ってきます」
私は真理さんと優奈の悲しそうな顔を見るのが嫌で逃げるようにリビングを出て光晃の部屋に向かった
僕が自室に籠ってどれくらいの時間が経っただろう?5分?それとも、10分かな?まぁ、どっちでもいいや。僕はクリスマス会のみたいに騒がしい催しが嫌いだ。だけど、それ以上に酒に酔っ払い、人に迷惑を掛ける奴が大嫌いだ
「葵衣達が酒を飲まないのなら参加してもよかったのかな……まぁ、無理だろうけど」
葵衣達が酒を一滴も飲まないのなら参加してもよかったと思う。けど、葵衣達にそんな事を求めても無駄だって事は解りきっている。日頃の葵衣や真理姉さんを見てたら酒を飲む事はほぼ確定だし、それを見ていた優奈が釣られてなり薦められて飲まないって保証はない
『光晃、いる?』
ノックと共に聞こえる葵衣の声。リビングで真理姉さん達と一緒にいるはずじゃなかったの?
「いるよ」
僕は短く返事をした。せっかくのクリスマスで葵衣は僕の彼女だ。冷たくする理由はない
『入っていい?』
「どうぞ」
葵衣が控えめにドアを開け、入ってきた
「光晃……」
悪い事をしたわけでも喧嘩したわけでもないのにオドオドしている葵衣
「何の用?」
「あ、いや、特別用事があるって事でもないんだけど……」
「そう。じゃあ、何の用で来たの?」
喧嘩したわけでもないのに葵衣に冷たく当たってしまう自分が恨めしい
「く、クリスマスなんだからみんなで一緒に過ごしたいなと思って……」
僕は『みんな』って言葉が好きじゃない。『みんな』って誰だよ。『みんな』でやればどんな悪い事でも許されるのか?それは置いといて、僕以外は全員成人してるんだ。そうなると絶対に酒が入り後が大変なのは僕になる。別に成人している葵衣達を妬んでいるわけじゃない。
「そう。葵衣達が酒を一滴も飲まないのならクリスマス会をしてもいいと思うよ?だけど、葵衣達は絶対に酒を飲むでしょ?そうなると歯止めが利かなくなり、自重する事もしなくなるでしょ?」
酒を飲むなとは言わない。だけど、自分の限界を知り、マズイと思ったら止める事ができないようなら飲むなと言いたいだけで
「そ、それは……」
身に覚えがあるのか葵衣は言い返せないでいる
「別に飲むなとは言わないけど、自重できないなら酒を飲まない。マズイなと思ったらその時点で酒を飲む事を止める。この2つを約束できるならクリスマス会やってもいい」
上から目線だけど、今日だけは酔っ払いの介抱は勘弁してほしい
「ほ、本当!?」
目を輝かせた葵衣が僕を真っ直ぐ見つめてくる
「うん。本当だよ」
こんな事で嘘なんか吐かない。約束さえ守ってくれれば僕はそれでいい
「わかった!真理さん達には私から言うから光晃も参加して!」
「はいはい」
その後、僕は葵衣に手を引かれ、リビングに戻った。そして────────────────
「「「メリークリスマス!光晃!」」」
「メリークリスマス」
クリスマス会が開始された。真理姉さん達のテンションは高いけど、僕のテンションは低いまま
「光晃!テンション低いよ!」
葵衣にテンションが低い事を言われてしまった。別にクリスマス会が嫌でテンションが低いんじゃない
「光晃、楽しくない?」
不安そうに聞いてくる優奈。
「葵衣さん、優奈さん、光晃はこのテンションが普通なんだよ」
さすが真理姉さん。僕の事をよく理解している。言われている事は失礼な事この上ないけど
「真理姉さん、僕の事を理解してくれていて大変助かるけど、言ってる事は失礼な事この上ないからね?」
「でも、事実でしょ?それに、優奈さんと葵衣さんはハイテンションな光晃を想像できる?」
「「ハイテンションな光晃…………」」
真理姉さん、事実だけど、オブラートに包んで言ってほしかった。優奈と葵衣はハイテンションな僕を想像しないでくれない?
「「ぶふっ!は、ハイテンションな光晃……」」
優奈と葵衣は勝手にハイテンションな僕を想像して吹き出さないでくれないかな?
「葵衣も優奈もそれ以上笑うと嫌いになるし、2度と口も利かないからね」
「「それは嫌!!」」
口を利かないと言った瞬間、優奈と葵衣は即座に僕に詰め寄ってきた
「さっきの言葉は取り消すから2人とも一旦離れてくれない?」
飲み物が酒じゃなく、ソフトドリンクだから嫌な臭いはしないけど、近いのは勘弁して……2人とも胸が当るから健全な男子高校生にとっては毒だから
「「嫌いにならない?」」
「ならない」
「「口も利いてくれる?」
「利くから」
「「じゃあ離れる!」」
優奈と葵衣は満足した様子で僕から離れた。
「今のは光晃が悪いよ」
元々の原因を作った真理姉さんには言われたくない。そもそもハイテンションな僕とか言わなきゃこんな事にはならなかったんだから
「元々の原因を作った真理姉さんには言われたくないよ」
「それもそうだね」
特に悪びれる様子を見せない真理姉さん。少しは悪びれろよ……
「自分が悪いと思うなら少しは悪びれてもいいんじゃないの?」
「私の性格を知ってるでしょ?」
「まぁね」
真理姉さんは僕の従姉だ。真理姉さんが僕の性格を知っているように僕も真理姉さんの性格を知っている。教師として見るならこの性格は最悪だ。悪いところを指摘しても直らないんだから
「「あーっ!光晃が真理さんとイチャついてるー!」」
真理姉さんと話しているだけなのにイチャついてると勘違いしてる葵衣と優奈
「イチャついてないから」
酔っ払ってないのにテンションが高い葵衣と優奈。どうしてこんなにテンション高いの?
「「本当?」」
「本当。真理姉さんとは性格について少し話していただけだから」
性格について話をしているだけでイチャついてるなら僕は常に真理姉さんとイチャついてる事になるんだけど?
「光晃、私とイチャつくの嫌なの?」
誤解を解けたと思ったのに真理姉さんが余計な事を言いだした
「「光晃……?」」
真理姉さんが余計な事を言ったせいで葵衣と優奈は再び僕に疑いの目を向けてくる
「はぁ……」
僕は溜息しか出ない。クリスマスにまでどうして僕が疲れなきゃいけないんだか……
「光晃、楽しくない?」
先程まで疑いの目を向けてきた葵衣が今度は不安そうな目で僕を見つめてくる
「楽しいよ。今までよりずっとね」
「そう?よかった」
不安そうに僕を見つめていた葵衣は答えを聞いた瞬間、嬉しそうな表情になった。今日の葵衣は不安そうな表情をしたり、嬉しそうにしたりと忙しいなぁ……ま、主に僕が関係する事だけど
「暑いから涼んでくるかな……」
僕は目の前ではしゃいでいる真理姉さん達の邪魔をしないようにリビングから出た
「少し1人になるか」
玄関で涼んでいてもいいけど、少し1人になりたくて僕は靴を履き、外へ出た
「う~、さむっ!」
冬だから当たり前だけど、外は寒い。
「いくらリビングが暑いからって外に出る事はなかったかな?」
リビングが暑いからといって外にまで出る事はなかった。玄関にいるだけでよかったのにどうして僕は外へ出てきたんだろう?自分で自分の行動に疑問を抱く
「「「光晃……?」」」
そろそろリビングに戻ろうかと思っていた時、後ろから僕を呼ぶ3つの声
「真理姉さん、葵衣、優奈……」
振り向くと真理姉さん達がコートも羽織らずに立っていた
「クリスマス会、楽しくなかった?」
真理姉さんは捨てられた子犬みたいな表情で尋ねてきた
「楽しくなかったわけじゃないよ。ただ、リビングが暑かったから出てきただけ。声を掛けなかったのは楽しそうにしているところを邪魔しちゃ悪いなと思ったからで別に家を出て行くとかじゃないから安心して」
真理姉さん達が何かを言いだす前に黙って外へ出てきたわけを話しておかないと変に邪推する可能性があるから話す。
「「「そっか……」」」
わけを聞いて安心した様子の真理姉さん達。そもそもがこんな寒い日にコートも羽織らずに家出するバカはいない。いたとしたらそれ相応の理由がある人だけだ
「寒いし、そろそろ─────あっ……」
「「「ん……?」」」
上から冷たいものが落ちてきた。雨じゃないよね?
「雪か……今年はホワイトクリスマスになるね」
「「「うん!」」」
僕は真理姉さん達に手を引かれ、家の中に戻る。今年は今まで生きてきた中で1番とは言わないけど、それなりに楽しいクリスマス会になった。本当は騒がしいの嫌いだけど
今回はクリスマス編でした
光晃はクリスマスでもテンションが低いままでした。ハイテンションで『イェーイ!』とか言ってる光晃の姿なんて想像つきませんよね……?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!




