【許嫁問題編2】僕はある意味で無理難題を突きつける
今回は父に無理難題を突きつける話です
学生にとっては可能かもしれない問題でも大人にとっては難しい問題かもしれません
では、どうぞ
元・母から突然、謝罪の電話があってから数時間後、僕は新しい学校を探していた
「丸山学園に月見高校か……」
携帯でホームページを見ている限り丸山学園も月見高校もいい雰囲気ではある。だけど、具体的にどんな教師が勤務しているかが書いてない。そこは入ってみてからのお楽しみって事ね
「光晃はどっちがいいの?」
携帯を見る僕の横から葵衣が覗き込んで聞いてきた。僕としてはどっちでもいいんだけど。教師の質さえよければ
「僕としては教師の質さえよければどっちでもいいよ」
教師の質さえよければどっちでもいい。それは本心だけど、第三者にとっては抽象的だと思う。何を持って教師の質がいいと言える?僕にとって教師の質がいいって言うのは居眠りをした生徒を指導しなきゃいけないけど、授業がつまらないって言ったらちゃんと直す的な意味での質だ
「光晃の求める質と私や水沢さんが思ってる質って違うと思うからその辺詳しく」
優奈に僕の求める質と優奈と葵衣が思う質じゃ意味が異なるという指摘をされてしまった。まぁ、当たり前か。人間の価値観はそれぞれ違うし
「優奈や葵衣の想像する教師の質って言葉遣いとか、生徒をちゃんと指導できるかとかだと思うけど、僕の求めている質ってのは授業がつまらないって指摘したら改善できるか否かだよ。教師として言葉遣いがちゃんとしている事や生徒をちゃんと指導できるってのは当たり前の事だから」
教師として正しい言葉遣いができるのは当たり前の事だし、生徒をちゃんと指導できるかってのも当たり前の事だ。それが仕事なんだから。まぁ、面白い授業ができるかどうかってのは別問題だけど、それじゃなくても居眠りする生徒が少ない方がいいに決まっている
「そ、そっか……光晃、私の研究授業って面白かった?」
葵衣は今更になって研究授業が面白かったかどうかを聞いてきたけど、僕はあの時、授業の内容よりも葵衣がテンパって授業を中断しないかどうかしか頭になかったから面白いか面白くないかで言えば……わからない。だけど、退屈はしなかった
「あの時は葵衣がテンパって授業を中断させないかどうか心配でそれどころじゃなかったから何とも言えないけど、退屈はしなかったよ」
そもそも、教師や教育実習生が嫌いな僕に授業が面白いか否かを聞く事自体が間違っている
「そ、そっか……退屈しなかったんだ」
僕は面白かったとは一言も言ってないのに嬉しそうにする葵衣
「光晃、そこはハッキリ面白かったって答えてあげたら?」
優奈からハッキリ答えろって指摘されるけど、あの時は本当に授業どころじゃなかったから答えようがない
「いや、その時は実習担当の事とかあってそれどころじゃなかったんだよ」
言い訳みたいに聞こえるかもしれないけど、本当に野呂が過去にしでかした事とか調べなきゃいけなかったから大変だった。まぁ、何とかなって今があるんだけどね
「光晃がそれどころじゃないって言うなら私はこれ以上何も言わないよ」
優奈はそれ以上追及してい来る事はなかった。葵衣もそうだけど、優奈も僕が言いたくない事を無理に聞いてこない
「光晃、お父さんから電話だけど、出なくていいの?」
「はぁ……出なくてもいいけど、それだと後が大変そうだから出るよ」
電話が鳴ってるのは音でわかったけど、父からの電話だって事は葵衣に言われて初めて知った。
「光晃、早く出た方がいいんじゃない?」
葵衣の言う通り、早く出た方がいい。じゃないとうるさいし
「わかってる。ちょっと電話してくるね」
「「うん」」
僕はリビングを出て自室に移動した
「もしもし、何?」
自室に移動した僕は父からの電話に出た。元・母の次は父か……用件はなんだろう?
『光晃、お前、母さんを切り捨てたのか?』
用件は元・母を切り捨てたのかという確認だった。父が電話してきたって事は元・母が父に報告したんだろう
「そうだけど、それがどうかしたの?」
『はぁ……母さんが泣きながら切り捨てられたって言ってたが、本当だったとは……』
「何?文句があるなら聞くけど?」
『私も母さんと亜優美さんがした事は知っているから文句はない。だがな、光晃』
「何さ」
『少しくらい母さんの話を聞いてやってもいいんじゃないか?』
父は少しくらい話を聞いてやってもいいんじゃないかだなんて言うけど、僕が話を聞けば絶対に優奈と結婚させる方向に話を持って行くだろうって予想できないのかな?
「嫌だよ。話を聞いたら最後、元・母は優奈と結婚させる方向に話を持って行くでしょ?それに、僕に許嫁がいるならどうして僕に彼女ができる前に言わなかったの?いや、それ以前にどうして僕が幼い頃に言わなかったの?おかしくない?」
葵衣と付き合う前か幼い頃に言われたのなら僕だって許嫁の話を受け入れたかもしれない。だけど、葵衣と付き合ってから言われても困る。葵衣と優奈、どっちかを選ぶのは僕なんだから
『それは悪いと思っている。母さんも私も。だから母さんはお前に謝ろうとしてお前に電話したんだ』
謝ろうとして電話するのはいいけど、謝罪って普通本人の目の前に来て頭を下げる事を言うんじゃないの?
「そう。でもさ、謝罪ってちゃんと本人の前に来て頭を下げる事を言うんじゃないの?僕は電話越しの心がこもってなさそうな謝罪なんていらないよ」
『それを言われると私は何も言えないな……』
「だろうね。元・母に僕に謝りたいなら直接来て頭を下げろって伝えてくれない?あ、来る時は亜優美と一緒にね」
僕は元・母と亜優美が僕の元へ来て頭を下げる事をしないってのは知っている。教師や教育実習生が絶対生徒に謝らないのと同じ理屈だ
『あ、亜優美さんはともかく、私と母さんは海外にいるんだぞ?そっちに行くのに何時間掛かると思っているんだ?』
亜優美は日本にいるけど、父と元・母は海外にいる。日本に来るにはそれなりに時間が掛かる事だって知っている。だけど、そんな事は僕の知った事じゃない
「さあね。どこにいようと僕の知った事じゃないよ。それに、その程度の事もできずに言う事を聞かそうとするならアンタも切るよ?それでもいいならそこにふんぞり返ってろよ」
悪いけど僕の─────いや、僕達の将来をオモチャのように弄ぶような真似をするなら父でも僕は切り捨てる。それが僕、岩崎光晃
『わ、わかった……私は仕事があるから行けないが、母さんだけでもそっちに向かわせよう』
電話越しの父は元・母だけでも僕の元へ来るようにしてくれた。別に会いたくはないんだけど。それよりも早く新しい学校を決めたい
「わかったよ。じゃあ、元・母だけでも寄越して」
『あ、ああ……母さんには伝えておく。それにしても、元・母か……』
「何?呼び方に対して文句でもあるの?」
『いや、ない』
「用件がそれだけなら切るよ?」
『ああ、じゃあな』
「うん」
僕は父との電話を切った。父も大変だね。理解できない行動を取るバカ共と僕の間に立たされるだなんて
「さて、電話も終わったし、戻るか」
電話が終わった僕はリビングに戻る。
「光晃、おかえり」
リビングに戻った僕を笑顔で出迎えてくれる葵衣。葵衣の笑顔を見ていると父や元・母、亜優美の事なんて忘れてしまいそうになる
「うん、ただいま」
はぁ……葵衣と優奈とどこか遠いところに行きたい。うるさい元・母や亜優美、真理姉さんや秀義のいないどこか遠いところに。まぁ、今のところ優奈に恋愛感情はないけど、一緒にいて楽だし。
「光晃、お父さんからの電話の用件って何だったの?」
優奈はオレンジジュースと3人分のコップを持ってやって来た
「僕に元・母や優奈のお母さんと仲直りしろだって」
本当は父に元・母を切り捨てたのが本当かどうかを確認されたけど、それは黙っておこう。聞かれてないし、それに、言いふらす事でもない
「そっか。それで?光晃はお母さん達と仲直りするの?」
「さぁね。謝罪に心がこもっていれば仲直りすると思うけど、今のところは何とも言えない」
僕は元・母達と仲直りする気は今のところない。
「そう……でも、謝ったら許してあげてもいいんじゃないの?」
「それは優奈が優しいから言える事であって僕じゃとても言えないよ」
そう、許してあげたらって言葉は優しい優奈だから言える言葉で僕は許す気なんて微塵もない
「「光晃……」」
悲しそうに僕を見る葵衣と優奈
「優奈と葵衣が悲しそうな顔をしたって僕は元・母達を許す気なんてないよ?」
自分の子供はいえ人の人生をバカみたいな夢の為に弄んだ。正義感が強くない僕だってそれが許しちゃいけない事だってくらい解る
「光晃、本当にお母さん達を許す気はないの?」
再度確認する優奈。この人は本当に優しい。だけど、優しいだけじゃ通用しない事だってある
「ないよ。優しい優奈はどんな事をされても許しちゃいそうだけど、今回はそんなわけにもいかないんだよ」
今回の許嫁問題は簡単に許していい問題じゃない。だって、傷つかなくていい事で傷つく事になるだろうし。恋愛で複数の異性が1人の異性を好きになるって事がないわけじゃない。だけど、今回の問題は両親達がちゃんと伝えていれば回避できた問題だ。それをしなかったという事は両親達にとって大した問題じゃなかったって事だろうし
「光晃が許せないと思うなら私は何も言わないよ」
優奈は僕に必要以上に意見を言ってこない。それは優奈が優しいからなのか、それとも、口では両親達の味方をしていても内心では怒り心頭なのかもしれない。
「優奈が何を思ってるは僕は知らないし、それを探り出す術を持っていない。だけど、本心を言わなきゃいけない時はしっかり言わないと言えけないと思うよ」
正直、僕を否定しない人と一緒にいるのは居心地がいいけど、その人に我慢させてまで一緒にいたいとは思わない
今回は父に無理難題を突きつける話です
学生にとっては可能かもしれない問題でも大人にとっては難しい問題になるって事なんてよくあるかもしれません
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




