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それは折れやすいです!

 

 学期末テストの告知で騒ついた教室は、アクセルの一喝で落ち着きを取り戻した後、授業を再開した。

 生徒達はいつも以上に真剣で、余程夏休みが欲しいのか身の入り方が違う。その辺りに学生らしさが見られる。

 それに学園が休みの間、冒険者として依頼を受けて、生活の為にお金を稼がなければならない者や、卒業後の事を考えて、今から冒険者のランクを上げようとする者も多いのだ。だから必死に補習を回避しようとするのは当たり前である。


 因みに、リルテはまだ冒険者ギルドでの身分登録をしていないのだが、この先学年が上がれば単位を取る為にギルドの依頼を受けなければならないので、夏季休暇中に登録をしに行く計画だ。

 それは、学園生活で必須だから登録を受けようとしただけで、決してジュールとルーに見せびらかされたので、羨ましくて登録を急いだ訳ではない。

 特にルーにはここぞとばかりに弄られて、最後の方は「ンィイ゛イ゛ィーッ」と、悔しさのあまり唸り声をあげていたが、あくまでこの休暇に冒険者登録をするのは計画の内なのである。


 アクセルによる、顔に似合わない理論的で分かりやすい授業が終わり、リルテは先程考えていた、クロエの不得意な実技テストをクリアする為、力になりたいとクロエに持ち掛けた。

 そして、二つ返事で了承した彼女と一緒に、訓練場で先程から組手を行なっている所だ。当然の如く、メイドさんも少年にピタリとくっ付いて来ており、何気にしっかりと仕事をしている様で、特訓の休憩時には飲み物を用意して、二人に手渡したりしている。


「クロエは相手の攻撃に怯えて、行動が遅れがちだね。警戒するのはいいけど、怖がってると身体が萎縮して動きが悪くなるから、僕と回数をこなして慣れていこう!」

「確かにちょっと怖いのはあるっス……」


 少し俯きながらクロエは答える。本人にも自覚があった様だ。その点リルテは小さい頃から父親から訓練を受けているので戦闘において足が竦む事はほぼない。

 それに、村からそう遠くない森には、人型の魔物であるゴーレムやリビングアーマーも出現するので、対人戦を想定した訓練もフレットに受けていたから、騎士団長の息子として鍛えられていたジュールには及ばないながらも、対人戦におけるアドバイスぐらいは出来るのだ。


「元々の身体能力は良いと思うし、慣れていけば相手を翻弄出来るくらい俊敏に動けると思うよ」


 クロエのダガーによる刺突を往なし、距離を保ちつつ声を掛けるリルテ。

 恐怖に耐性を付ける為、剣の振り上げ等で牽制を掛けながら手数を増やし、そこで生まれた大きな隙には攻撃を加え、反復して身体に教え込んでいく。

 割と斬撃を受けているので、普通なら服が破れてセクシーな状態になったりするのだろうが、そんなラッキーは残念ながら起こらない。そう、漫画やアニメのお約束なんて此処にはないのだ。

 その訳は、ミロンガルブ学園の制服が魔物の糸で作られており、防刃強度が高い為である。とはいえ訓練用で刃を潰していても、防御魔法は展開されていないので、打撲傷は出来ているだろう。ただ痛い事には変わりない。

 だけどクロエはそれよりも気になる所があったようで、


「うはぁあーまじっスか!?じゃあ分身も出来る様になれるっスね!」

「い、いやっそこまではどうかな……」

「このままいけば、私がNINJA様に並ぶのも時間のもんだーー!?」


 ダガーを持つ手に衝撃を受け、唐突に言葉を切る。

 何故ならクロエの籠手には綺麗な形でフォークが刺さっていたからだ。


「失礼しました。食器を磨いていたら手が滑りました」


 そう言い、メイドさんは理不尽を働いたにも関わらず、しれっと頭を下げてそこはかとなく決めてらっしゃる。

 一体全体何故こうなったの?と目を点にする少女を置いて、マスターたる少年はメイドさんに向けて言う。


「もぉ〜、ルーさん気を付けてよ。シルバーは折れやすいんだから」

「注意するとこ、そこじゃないっス!?」

「スプーンは曲がりやすいから気を付けてね?」

「それも違うっス!そもそも今此処で磨く必要ないんでスよ!そして一番言いたいのは滑ったの範疇を超えてるって事っスよ!?ホラホラッめっちゃ刺さってるんですけど!」


 見てよこれ!私被害者ですよ!と、最後は口調も普通になるくらい、猛然とアピールするクロエに、手を顎に当てて少し考えたフリをしたリルテは、最もらしく適当に言い捨てる。


「きっと不意の攻撃にも対応できる様にする為だよ」


 マスターのフォローにコクリと頷く。


 クロエは自分の為を思ってくれていたのに疑ってしまい申し訳ないと少し表情を落とした。

 しかし、ルーの手をよく見れば、全ての指の間に様々なカトラリーがキラリと輝いているではないか。


「いやいやッ確実に殺りにきてるっス!だいたいそのカトラリー達はどっから出てきたんっスか!?」

「執事とかメイドってこうゆうもんじゃないの?」

「どこの世界にそんな奴いるんスか」

「……え?」

「心底驚かないでほしいっス」


 某黒い執事さんを思い浮かべていたのだろうがそれは前世の世界での創作。しかも、それがデフォルトではない事に気付いていない。

 ミウドレンにおいても、普通の意味であくまでメイドはチートキャラではないのだ。

 ただ、ルー(人工スライム)を見ていればそう思い込んでも仕方がないかも知れないが……。




ふのぉっ!ぐぅぬぬぬぬぬっ!


ーーバタン!ダンッ!



どぉうじゃ!見たか!このティア様が勝ち取ったぞ!!お前なんてチョチョイのチョイでミートオンザショートボーンなのじゃ!


キシシッ!これで此処は我の者じゃ!

これも我の『自分が出ている回、宣伝作戦』が上手く行ったからじゃの。


べ、別にお前達のおかげで感謝している、なんて思って無いんじゃからな。勘違いするのではないぞ!フンッ


さてさてまずは我、これだけは先に言いたいんじゃったーー


やっぱりクロエにスポット当てて来てるじゃろ!


ま、まぁここが確保出来たから良しとしてやるかの。

しかし、此奴は商人を目指しておる様じゃが、あのメルシエ商会にでも入りたいのかの?確か、我が活発に行動しておった時代にもあった商会だったと思うのじゃが?

あそこは 12英雄(ドゥーズエロー)と関わりがあった様な……だからまだ残っておるのかの〜。

何にせよかなり手広くやっておる所で、我はあそこの『ストロベリーまんじゅう』が大好きなのじゃ!


我の好物が知れて良かったのぉ〜。

だから、存分に差し入れてくれても構わんからの!山盛り来てもペロリと食べてやるぞ!


そこのお主、期待しておるのじゃ!!


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初短編を投稿してますので、 是非そちらも宜しくお願います!!

【タイトル】

白銀のエクリプス
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