そんな仕事じゃないです!
カツコツと黒板にテスト日程を書き終え、禿頭に手を置きながらアクセルが振り返る。前列に座る二名ほどの生徒が、反射した光に眼を瞬かせた事から、今日も剃り具合はバッチリのようだ。
「いいかー、テスト内容は実技と学科の両方だ。そして、実技は同じAクラスで一学年上の生徒と模擬戦になる。特に負けても構わない、実力を見るだけだからな。しかし、勝てれば評価点は高いぞ」
ニシッと歯を見せるアクセル。上級生を打ち負かしてやれという期待と、無理だと思うがやってみろという挑発を込めた眼を生徒達に向ける。
それはやはり、実習を積んでいる事が大きい。経験というのは一年違うだけで差が出るものだ。
しかし、今年入学した生徒でも、この短期間で魔法などを身につけて、急激に能力を伸ばす者もいる。
アクセルも冒険者時代は、実力を否定され無理だと言われた依頼を、完遂させて覆して来た男なので、そういう番狂わせを生徒達に期待しているのだ。
そして、ここにテストに向けて密かに燃える少年がいる。実力主義のミロンガルブ学園では、この学期末テストでクラスが上がる事もあるのだ。ならばこの機会を逃す手は無い。
Sクラスに上がり、生前では叶わなかった友人とより良い学園生活を送る為、それと言うまでもなく、獣人と仲良くなりたいという欲望も多分に含めて、リルテは鼻息を荒くする。
テスト内容の説明は進み、アクセルは学科についてを黒板に書いていく。
魔物学に算術、グランウェイン史と王国法など、これは現在Aクラスが行なっている教科全部にあたる。
学期末なので科目が多いのは仕方がない。
それが終われば夏季休暇が待っているのだから、生徒も気合を入れて取り組むのだ。
休暇をどう過ごすかを話すものも出ている中、そこに水を刺すようにアクセルは付け加える。
「言い忘れたが赤点の場合、夏季休暇中は補習だからな」
成績が悪い者を当然、学園としては見逃すわけにはいかない。
もし冒険者をやっていくのであれば、最低限の能力を身につけなければ命に関わる事なのだ。
だから、大きな戦争がなくなった今日でも、魔物がいる世界だからこそ、少しでも命を落としてしまう確率を下げる為に、シスミナがこの学園を作ったのだった。
日頃から、突発的なイベントを行なっては楽しんでいるようだが、長年生きてきた上で何も暇を持て余して、面白そうだから学園を創立した訳ではない。
しかし、生徒達は彼女の想いも知らず、教室が喧騒に包まれる。
そんな中、リルテの席から補習という言葉に涙目で顔を青くする、クロエの横顔がちらりと見えた。
確か、筆記科目の成績は良かったが実技の方はあまり得意ではないはず。
なのでリルテは後で一緒に組み手でもして、何かアドバイスできる事があれば教えてあげようと考えながら、しばらく観察していたら何やら小刻みに震え出した。
「(おぉぅ、大丈夫かな?)」
散歩中、飼い主にイヤイヤカメラ撮影されるチワワぐらいプルプルしている。
すると突然、頭からプシューと煙を上げたかと思えば、続いてどこからともなく白い鳩が飛び出てきた。
「(エッ!?)」
んな馬鹿な!限界を超えて壊れた!?
その様子にビクッとなりつつ、心配して席を立とうとしたのだが、一瞬リルテとの間にいる生徒でその姿が隠れた。そして、次にクロエが見えた時にはいつも通りの笑顔を向け、舌を出してこちらに顔を向けている。
頭の上にクエスチョンマークを浮かべ混乱する少年。
多分、彼女の表情から察するに、つまりは驚かそうと仕掛けた悪戯が成功したということだろう。だって満足気にケラケラ笑っているのだから間違いない。
数秒呆けていたリルテは、その様子でようやく理解できたようで、どうやったのか気になりつつ、心配した気持ちを返せと思いながらも、無駄に手が込んでいる事だと小さく嘆息する。
そして、もしかして自分は寝ぼけていたのかもしれないと、瞼を擦りながら改めてクロエの事を確認してみたのだが、今度はこちらに向けて口パクをしながら、どこかでみた事のある人差し指を横に振る動作をしていた。
「(んンン?……ま・ぼ・ろ・しー、っじゃないよ!)」
リルテの心の内を読んだかのようなふざけたジェスチャーに対し、えっ?てゆーかこっちの世界にもそれ流行ってんの?と戸惑いながらも小声で突っ込みを入れる。
昼休みの時も大体こんな感じで揶揄われているから、反射的に対応してしまう。明るく接しやすいところがクロエのいいところなのだ。
そして、こうしてふざけあえるのも友達ならではだと、内心では楽しんでいるリルテである。
前世では諦めていた同世代との交流が叶い親しくしてくれる人も出来た。やはり学園に入学したのは正解だったと、選択した自分を労うようにうんうんと肯いていたら、ふと後ろから肩を叩かれた。
メイドは主人の後ろに従うものという持論で、アクセルを捻じ伏せ(物理的対処有り)、勝手に後ろの席を陣取っているルーがいる。
クロエからの流れ的に、嫌な予感を抱きながらも無視する事が出来ないリルテは、仕方なく後ろを振り向く。
やっぱり、予感は的中。
そこには顔のパーツを失くし、ツルリとした顔面のホラーメイドさんがいた。
「ギャャー!何やってんの!?怖いよ!」
意味の分からなさも相まって声を大きくして慌てるマスター。
その反応を一通り見て、スライムらしく徐々に元の顔へ戻したルーは、若干引き気味のリルテにグッと拳を胸の前で作り、勢いよく言い放つ。
「マスターを困らせるのは私の仕事です!」
「それ、メイドとしてどうなの!?」
今のクロエとのやり取りを見て火が付いたのであろう。
思い通りの反応を得られて、リルテの言うようにおよそメイドとしては駄目な発言をしたのに、満足したようなドヤ顔を決めている。
マスター愛にも程がある。
だが、リルテとしてはそんなところで対抗意識を燃やさないでほしいと思うばかりだ。
それは今だけの話ではなく、何かとこういう事が起こるからで、特にあのスキンシップの多いクラスメイトの少女が絡む場合は、確実である。なので、自然とルーに向ける視線は戒めを込めたジト目になっていた。
そして、そんな眼を向けられた本人はというと、
「あぁッ!いつもキラキラ輝く眼もいいですが、そういう視線もいいです!」
もう溜息しか出なかった。
だからこの件に関しては諦めたのだが、それよりも気に掛かるのは、周りに人がいるのに顔の形を変えていた事だ。
幸いにもリルテにしか見えていなかったようだが、もし他の者に見られていれば、ルーが人外であるとバレてしまいかねない。
もうちょっと自分が特別な存在であるというのを隠して欲しいと思う少年であった。
ティア「キシシッ!皆の者よ、ハッピーニューイヤーなのじゃ!
今年も『異世界だけど学校は平和じゃないんですか?』を宜しくなのじゃ!!
とゆうか、なんか挨拶をしろと言われて此処に来てみたはいいが、我はここ何十話も出ておらんぞ!
絶対誰か分からんじゃろ!そんな奴にこんな大役任せるなよ!贔屓が過ぎるぞッ!
だから、とっととテンポ良く投稿をしろと言うておったのに、まったく……
まぁいい、チャンスは活かす主義じゃからな、ここで存分に我のアピールでもしてやろう。
何せ今後の鍵を握っているのは我じゃろ?え?新章は別の者にスポットがあたる?もしや露骨に出てきているクロエとかいう奴か!?
くぬゔゔぅぅ〜〜早く我を出すのじゃ!!
あれか?人気の差とかなのか?
だったらこっちにも考えがあるぞ!
皆の者よ、24話「出会いです!」を見まくるのじゃ、そしたら<ぴぃぶい>とかゆうやつが上がって我の出る話が早まるかも知れん!大事な挨拶を冒頭でやったのだ、こういう勝手くらい許されるじゃろ。
ん?だ、誰じゃ貴様!や、やめろ!どこを掴んでおる!おいおいッ、出口の方へ引っ張るでない!
本格的に本編に出られるまでは、この場所を乗っとるからのッ!我は絶対此処を動かんぞぉおおぉぉぉッーー!!」




