戻ってきました!
ミロンガルブ学園は、ミリュンヌ湖に浮かぶ小島にある立地上、色々な絶景スポットが存在する。
学園の中央で、シンボル的にそびえ立つ鐘楼からは周辺が一望出来るし、城壁の南側からはヴューリオンの街が見下ろせる等、どの場所も休憩時間やランチタイム、放課後に生徒達がよく利用しているのだ。
そしてその一つ、男子寮の裏手には朝日が望める場所がある。
水面に映る陽がキラキラと輝き、美しい光景が広がるのだが、生徒が来る事はほとんどない。
島の入り口から最も奥にあるので、訪れ難いというのもあるが、近くで寮生活している男子が、そういうものに興味がないというのが一番の理由であろう。
だから、そんな場所に男子が態々訪れる時は、女の子を早朝デートに誘う時ぐらいである。ただここは男子寮の裏手だ。
その男の結末は推して知るべし。
ともあれ、このスポットはスペース的には広く、朝の運動をするにはもってこいの場所である。
鳥のさえずりや、さざ波の音が心を癒してくれる中で、適度に身体を動かせば気分を一新させてくれるだろう。
しかし、そこに先程からそんな癒しの朝のBGMを邪魔するように、カンカンと木剣のぶつかり合う音が続いている。
「フゥー、やっぱりジュールには勝てないや。剣も重いし、まともに受けると体勢が崩れて、直ぐにキックか体当たりで押し込まれちゃうよ」
「そこはやっぱ、身体の軸とか重心の置き方が大事だな。それに体術ならレラルの方がすごいぞ。足捌きが違うからな。あー、そういえばあいつ、もう授業に復帰してたわ」
早朝練習で生徒が沢山いる訓練場を避けて、人のいないこの場所で、リルテとジュールは剣の稽古をしていた。
勿論、「何とかの星」に登場するお姉さんの様に、木の陰から見守る風を装いつつ、明らかに存在感を出しているルーを無視して。
王都から戻り二日が過ぎた。
学園ではスタンピードの話を聞いた生徒から質問攻めに会う日が続き、部屋に帰ってくる時にはグッタリしていたリルテとジュール。
落ち着いて身体を癒したいと思っていた二人を気遣ってくれたのは、意外にも寮生達だった。日頃モテモテのジュールと、メイドさんを側に置いているリルテに、いつも嫉妬と羨望で血の涙を流している彼等だが、皆二人を心配していたのである。
そのお陰もあり、朝の日課を再開出来るまでに体調は回復していた。
そんな話題で沸いたミロンガルブ学園であるが今日も授業がある。
リルテはジュールと別れ、生徒の中にメイドさんがいるという光景に慣れた、いつもの1年Aクラスへと向かう。
「おはよー、リルちゃんっ!今日もかわいいね♪」
「ちょ、ちょッ!近い近い!」
教室の扉を開けると同時に、腕を組まれたリルテは顔を赤くし混乱した。左腕に当てられた柔らかい感触がいきなり襲ってきたので無理もない。
タレ目気味な目で、リルテの顔を覗き込み反応を楽しんでいるのは、GDLリーダーにしてクラスメイトの少女だった。
彼女の拘束から必死に左腕を離脱させようするも、力を入れていない様に見えるのに、どうにも振りほどけないでいる。
「ストップです。まったく、あなたはいつもどうやって私のガードを抜けてくるのですか……」
「んー、……姉妹愛の力?」
間にルーが入ってくれたので、何とか離れる事が出来てリルテはホッとする。
見た目は細腕なのに、一体彼女のどこにそんな力があるのかなどと、不思議に思っていた事も忘れてしまう程に、余裕はなかった様だ。
そんな彼とは別に、ルーは疑義の念を抱く。
風の噂で、GDLなる組織が結成されたとルーは知っているので、雰囲気が出ている者からの接触を阻止していたのだ。
しかしこの子はどうしても止められない。
これまでにも、彼女は事あるごとにリルテと接触を図ろうとするので、常に警戒を怠らなずにいた。それなのに、自身が得意とする気配探知に引っかからず、接触を許してしまっている。
それを姉妹愛などと片付けられてしまい、先日の猫仮面の事と言い、ちょっと自信をなくすメイドさんであった。
何とかルーが引き剥がし、ようやく解放されたところで先生が教室の扉を開け入ってくる。相変わらずキラリと光る禿頭が眩しい。
「よーし、全員いるなー。授業を始める前に学期末テストの日程を伝えるぞ」
口々に不満を漏らす生徒達を眺めて、リルテはムフーっと表情になる。
学園の外ではスタンピードに遭遇してしまったものの、今は平和で安全な学校に帰ってきたのだと実感出来たのだった。
GDLリーダー「おはよー、リルちゃんっ!ーーー」
ーーギャルッ
メイドさん「(ハッ!またマスターに接触を許してしまう!そうはさせないッ!)」
ーードン!!
マスター「なっ!真横から現れた!?」
メイドさん「(またやられたっ!)」
チュミミーー〜ン




