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それぞれの戦い そのニ

遂にスタンピードと衝突したアムエナ率いる討伐隊。

割と早々に戦線を離脱したリルテを他所に、激化する戦場。

押し寄せる魔物に奮闘するも被害が大きくなりだした。

戦闘不能に陥る兵士や冒険者達。そして、リッパーベアを倒したのも束の間、ジュールもまた危機的な状況を迎えていた。

そう、戦場での武器の破壊が致命的であるその証拠にーー


「ジュール後ろだ!」


 アンリの声で振り向いた彼の背後に、火花放電を纏った無数の針が迫っていた。

 それはヤマアラシに似た魔物、サンキュパインの攻撃によるもので、近くで戦闘をしていた流れ弾であった。

 白金の鎧は熱や酸などの耐性は高いが、雷の属性は着用者までその効果が届いてしまう。

 例え致死性の威力はなくとも、ある程度の麻痺は避けられない。この戦場スタンピードで一瞬でも無防備になれば死を意味する。

 武器さえあれば難なく防ぐことが出来たであろうが、今の彼には避ける以外の選択肢はなく、広範囲に及び迫る針はその数も合いまり、現状のジュールには飽和攻撃で、全てを回避する事は不可能である。


 そう、()()()()と言われるデュランダルが本当に折れてしまったのであれば。


「クソッ、避けきれない……仕方ねえ!」


 折れたデュランダルの柄をギリリと強く握り、魔素を集中させる彼の手に、小盾サイズの魔法陣が広がる。すると半ば残っていた刃も、ジェンガを崩してしまった時のように崩れ落ちていく。

 更に大剣としての形を失い、これでもう本当に武器として使えなくなってしまったかに見え、それは諦めたかの様に微動だにしない様子からも、そう考えてしまうほどであった。


 その間にも閃光を瞬かせ矢のように走る針が迫る。


 着弾を目前にしてようやくジュールが動くーー


「行けッ!」


 その声に続き、辺りを爆風が吹き荒ぶ。


 乾いた衝撃音を伴い、間合いに入った針が次々と爆散したのだ。


 まるで艦艇に搭載されたファランクスの様に、正確に彼を含め、周囲にいた被害が出そうな討伐隊の範囲までの攻撃を無力化していた。


 魔法の類か、はたまた新型の武器なのか正体は分からないがジュールを元に、高速で飛来し迎撃する物体を捉えていた高レベルの冒険者は、何はともあれ助かったとばかりに汗を拭い、心の中で彼に感謝した。


 どうやら、サンキュパインの無差別攻撃は防げたようだが、魔物を倒した訳ではないので未だ危険である事には変わらない。

 続々と森から溢れ出る魔物を見て、彼は体力と集中力が十分に残っている内に()()決断をし、デュランダルの柄を再度握り直した。


「ジュール、あれを使うのか?」


 後ろの馬上から、その様子を見ていた兄が問う。


「あぁ、アンリ兄貴」

「じゃあ、ちょいと楽できるな」


 今から弟が行おうとしている事に、信頼を置いているのか、担いだ剣を肩にトントンと当てながら、呑気そうにジャンが吐露する。


「これやると調子悪くなるんだから、ちゃんと援護してくれよ?」


 そう言い、再度魔法陣を展開させると、リッパーベアに折られて足元に落ちていた範囲よりも広がったデュランダルの破片が、カタカタと振動し宙に浮かぶ。



スイヴェ(従え)!デュランダルッ!」



 ーーッシシフィ!



 浮いていた破片は消えた。

 一斉に空気を裂いた音だけを置いて。




「ガウァッ」「グォヴオォォオッ」「ギギッ」



 勢いよく彼から離れた破片は、まるで意思を持つかのように、こちらに向かってくる魔物の身体を、次々と槍のように突き抜けては目標を変え撃滅していく。


 血を流し地に伏していく小型の魔物や突然の痛撃に速度を落とす大型の魔物達。

 ジュールの周りで起こった風切音を切っ掛けにスタンピードの進行が緩んで見えた。


 遠目からは何が起こっているか分からない討伐隊だが、部隊から離れ、最前線にいる彼ら兄弟を見て推知し歓声が上がる。


「さすがウェルズ家の御子息!」

「魔法か何かか?にしても騎士なのにあの威力、化物かよ……まぁ、ありがてぇがな」

「貴族様万歳だ!もっとやってくれ!」


 ジュール達の着ている白金の鎧は有名で、白と見間違うほどの金属色はウェルズ家特有の物であり、大抵の国民であれば知っている程だ。

 中には稀に、リルテの様に知らない者もいるが、彼の場合は、育った所が遠い山奥なのと、本人が興味を持っていなかったのが要因である。


 そんな鎧から特定し、歓声の中に混じった声を聞きながら、ジュールは怪訝そうな顔をしていた。


「まったくこういう時だけだな、いい顔されるのは……」


 嘆息混じりに独り言ちるも、目の前の魔物達を目で追いながら魔素を消費続けるそんな彼の耳に、戦況の報せが入る。


「見ろ!スタンピードが左翼に流れていくぞ!」


 確かに、全体を見回すと少しずつではあるが進路が変わっている。

 スタンピードに対して小さくはない打撃を与えたが、この程度の攻撃で向きが変わったとは思っていないジュールは、何か他の原因があるに違いないと、不穏な動きに眉を寄せるのだった。


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初短編を投稿してますので、 是非そちらも宜しくお願います!!

【タイトル】

白銀のエクリプス
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