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それぞれの戦い そのイチ


「ドォォウリャーッ!」


 白金の鎧に紅を散りばめてまた一体、中型の魔物を手に持つ大剣で大地に沈める。

 豪快に叩きつける様は、もはや鈍器という方が相応だ。

 その特徴故に、動きが制限されてしまうので、早々に馬から降りて戦闘を行っていたジュールは、デュランダルの切っ先を地面に触れさせ、深く息を吐き出す。


 この剣を手にしてから会得した呼吸法と、学校で学んだ身体強化魔法により、その剣速は空気を唸らせ衝撃波をも周囲に放っている。

 リルテがその場にいたとしたら、さぞ目を輝かせていた事だろう。何せ、側を走り抜ける小型の魔物を軽く吹き飛ばし、近づく事さえ出来ない様は無双者そのものだったのだから。魔法で敵を一掃するシスミナ達の次に、討伐数が多いのは彼かもしれないという戦い振りだった。

 彼は右翼部隊の前線で奮闘しており、ターマガントボアやガストウルフなどを次々と倒している。

 そして呼吸を整えた今、脅威になり得る次の魔物を探そうと、相棒を肩に担ぎ移動しようとしていた。


「ジュール手を貸せ!彼方に大型の魔物が現れた!」


 後方から同じく、白金の鎧を纏った二人が馬に乗って駆けてきた。彼等は王城を出る際にジュールと共にいたもので、戦場であるはずなのに爽やかさを放っている。


「分かった、アンリ兄貴!」

「おぉー、お前一人で中型をやったの?」

「ああ、こいつを振り回してると味方の事を考えなきゃいけねえからな、一人の方が楽だ」

「たしかにな。それにデュランダルなら一撃だから効率もいいか、まぁ無理はするなよ」

「ジャン兄貴もな」


 実に家族のように親しげな会話。それもそのはず、何を隠そうジュールとは兄弟の二人。

 容姿が似ていたのはやはり双子だからで、微妙な違いではあるが、しっかりとした口調は兄のアンリ、少し緩い雰囲気がある方が弟のジャンだ。

 王都では一応名が知れた双子なのだが、情報の入りにくい田舎から出たばかりのリルテが知らなかったのも仕方がない。それに一般生徒が王城に入れる事や、騎士団と行動を共にするなど、夢にも思っていなかった事だろう。


 そのまま二人を追走していたジュールの前方に見えたのは、小屋を思わせる巨体のリッパーベア。見た目は大きな熊だが、ジュールの腕ほど長く大きな爪を持つ。

 その爪により四肢で駆ける移動スピードは早くないが、最前線にいる魔法隊の攻撃を搔い潜って来たのだから油断はできない。

 彼等とてそれが分かっているので連携を取るための手サインを交わし始めた。

 目標は砦の方に向かい真っ直ぐ進んでおり、リッパーベアの右前方目掛けて交わる進路をとり、三人は攻撃を始める。


「「いくぞジュール」」

「分かってる」


 合図と共に先行して前に出たアンリが、馬上からすれ違いざまに目標の左肩を斬りつけた。


 声を上げ、スピードを緩めるリッパーベア。

 すかさず、アンリの後ろから流れるようにジャンが馬から飛び降り、地面を滑りながら太ももを斬る。


 息のあった攻撃を受けて、完全に足を止め立ち上がり、反撃に大きく鋭い鉤爪が振り下ろされる。

 しかし、ジャンはまだ相手の間合いから抜け出せていない。


 このままでは上下に体を引き裂かれてしまう!

だが、そこへ少し遅れてジュールが飛び込んで来る。


 鉤爪と衝突し波紋を広げる金属音。

 互いの間にある空気が弾けた。


 その攻撃を、大剣の峰で弾き返した弟の横をすり抜けて、ガラ空きになった胴体をジャンが水平に斬りつける。


 三人による波状攻撃にぐらりとするリッパーベアだが、その巨体は見せかけでなく倒れはしなかった。

 普通の熊でも圧倒的な筋肉量とその体を覆っている硬質な毛の為、うまく攻撃を入れなければ刃など深く通らない。ましてや魔物であり、その攻撃力にも増して防御力は厄介である。なので四足歩行からわざと立ち上がらせて、急所を露わにする様に仕向けたのだが、それでもまだ倒すには足りないようだ。


『グゥルォォォオォッ!』


 怒気を孕んだ咆哮と同時に、眼が赤くなり爪も同じ色を帯びた。

 次の瞬間、先ほどよりも強力なスキル《テアリンクロー(細断爪撃)》がジュールを襲う。


 スピードに加え、重さの桁も格段に上がった一撃に、鈍い衝突音を打ち響かせ辛うじて大剣で弾き返す事に成功する。

 だが、ザスッと反響する音を切り裂くように、半拍遅れて地面に突き刺さる刃。


 芯から外れた音が意味していたのは衝撃に耐えきれず折れてしまったデュランダルだった。

 聖剣であり不滅の二つ名を持つはずのそれが刃の半ばで綺麗に折れている。


 鎧のおかげで爪撃は防げるだろうが、強力な衝撃は生身まで届き、重傷は避けられない。

 予備武器を持たないジュールは、攻撃を受け止める術がなくなってしまった。


 しかし、相手は待ってはくれない。

 その追撃に備えて両腕を構え、心ばかりの防御態勢を取るーーだが。


 リッパーベアの攻撃が来る事は無かった。


 ただ、血飛沫だけがジュールに降りかかって来るのみ。


 防御を解くと見えたのは、ゆっくりと倒れていくリッパーベアの姿だった。

 態勢を崩した隙を付きアンリがその喉元にトドメの攻撃を加え動脈を捉えたのだ。

 そして、巨体は地に倒れ込む。


 だが安心するのはまだ早い。

 戦場での武器の損失は致命的である。その証拠にーー



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初短編を投稿してますので、 是非そちらも宜しくお願います!!

【タイトル】

白銀のエクリプス
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