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覚えておきます!

 

「姉様!会いたかったです!」


 自分よりも背の低いシスミナに、賢者のような女性がその姿を確認した瞬間、飛びついていた。

 シスミナを姉と呼び、髪の色や雰囲気が似ている事からも姉妹らしいが、身長だけで見るとその絵は姉妹逆のように見える。

 驚きで間の抜けた顔になっているレラルを尻目に、姉妹が再会のハグをしている流れでいけると思ったのか、何故かルーに抱きつかれているリルテだが、そんな事は気にしない。柔らかいものが当たってようとマスターなので気にしないのだ。

 少し会話を終えた後、シスミナが両グループの間に入り、互いの紹介を始める。


「改めてこの子達がレラルちゃんにリルテ君、その従者のルーちゃんでーす!で、こちらが言わなくてもわかると思うけどー、シャルル・デイ・グランウェイン国王です。顔は怖いけど結構泣き虫だったりするから怖がらなくていいよー。そしてその横が私の妹のアムエナだよー」

「シ、シスミナ様、一応国王なのですが……」

「あぁ、この関係を知られてもいいのかってことでしょー?大丈夫大丈夫ー、この子達は規格外だからー!」

「シャルル。姉様が言うのですから心配ありませんよ」

「いやっ、そう言う事ではないのですが……」

「何です?まったく……昔からはっきりしない子なんですから」

「……はぁ」


 完全に国王を紹介する内容ではないのだが、シスミナ達は気付いていないようで、軽く遇らわれてしまい心からの溜息をつく最高権力者であった。


「あの、失礼を承知でお伺い致しますが、アムエナ様は謁見の際にもいらっしゃいましたが何の役職をされているんですか?」


 おずおずと先程から抱いていた疑問を素直に聞くリルテに、口にしていたカップを静かに置きアムエナは笑顔で答える。

 因みに、部屋に漂うココアみたいな独特な匂いから察せる様に、カップの中身はロトンナッツブルーティーだったりする。その辺りからも姉妹の片鱗が垣間見える。


「公には名前すら公表しておりませんから、ご存知ないのは当然なので大丈夫ですよ。一応、近衛兵を束ねていますが、それよりも私が至上にして至高である姉様の妹である事を覚えて頂ければ大丈夫です!」


 ポーズまでつけて力強く妹を強調する圧に押され、聞きたかったのはそこではないと思いつつ、律儀にリルテは覚えておくことにした。聞き直すのが面倒になって諦めたとも言える。なのでとにかく偉い人だと思っておこうとした時、アムエナが思い出した感じで手を打つ。


「あっ、ついでに宮廷魔法士団長もやっています」


 まるで家で作ったオムレツに、パセリでも添えるような感覚で一言付け加えた国の重鎮に、「ついでなんだ」とシスミナ以外の三人は思った。特に国王は見るからにがっくりしている。


「と、ところでお二人とも国王にとてもフランクな接し方をされてますが、長いお付き合いなのですか?」


 国王を見て、いたたまれなくなったレラルが話を変えようと質問をする。


「そうだよー、シャルルが生まれた時から知ってるんだー」

「姉様と私は約500年前からこの国の事を見てますので」

「そうそうー、だからアーちゃんはグランウェイン王国の特別顧問もやってるよー」


 何百年も生きていれば言わば生きるライブラリーである。それに魔法に秀でた種族であるハイエルフである為、豊富な知識に加えて戦力においても申し分がないので王国の中枢にいても不思議ではない。ただ、そのような秘密を一介の学生が知ってしまっていいのだろうかと、二人は内心思っていたりするが知ってしまったものはしょうがない。そもそも不可抗力である。


「やっぱりハイエルフの方は長命なんですね!しかも学園長のご家族だったなんて先程聞いて驚きました!」

「あれ?リルテ君、謁見の時に鑑定スキル使わなかったの?」


 姉妹の名が〈ジュブワール〉と同じであるので、スキルアナライズがあれば会った時に気付くはずで、自分のスキルを隠そうとした発言であればおかしくはない。

 しかしその意図があった訳ではなく、王城である為、謁見の間では魔力感知などの防犯対策があるかもしれないと警戒してスキルアナライズは使用していなかったのだ。

 それに以前、ヴューリオンの街で使用した際、街行く人全てのステータスが見えてしまい、視界が文字で埋め尽くされた後、ゲシュタルト崩壊が起きて気分が悪くなり、危うく倒れそうになった。

 効果範囲が限定できず、情報量が多すぎて処理しきれない状態なので、ルヴァンソンヌでも使用はしていない。このスキルに関しては要訓練が必要である。

 唐突に手に入った能力をすぐに使いこなせるほど現実は都合良く出来ていない。

 他の魔法についてもルーに指導してもらいながら毎日練習していて、生前は努力すら出来ないほど病魔に蝕まれていたので、その反動が原動力になっているのかもしれない。


「鑑定スキル!ではこの子があのリルテ君なのですね!お手紙では男の子と書いてあったので探していたのです。てっきり女の子だと思ってましたよ」


 やっぱり、アムエナもその容姿だけでは男の子と分からなかったようだ。この話をきっかけに今回王城に訪れた目的である三名の事情を報告し、そしてルーの保護が取り付けられた。

 国のトップが四方から根回しをしてくれるらしいので、これである程度の抑止が効くであろう。

 その後、竜化が出来ないレラルの問題を解決する為、古竜に関する情報を聞いていた時、メイドが静かに国王の側に近付き耳打ちをした。その話に頷きメイドを下がらせてから、シスミナ達に話を一旦止めるように伝える。するとすぐに一人の兵士が慌てた様子で入室してきた。


「陛下!ご歓談中失礼致します!今すぐお耳に入れたい事が御座います!」

「何事だ?」

「し、しかしこの場では……」

「この者達であればよい。話せ」

「はっ!ロヴェル森林でスタンピードを確認!フローレンス砦で2時間後に接敵予定です」


 兵士の報告により、この場で動揺したのは国王とレラルだけであった。

 まだスタンピードの規模も聞いていない状態だが脅威である事は間違いない。それにこの様な事態は少なくともここ200年は発生した記録がないので、経験した事のない者達にとっては当然の反応である。

 逆に長く生きているシスミナ達にとってはスタンピードに覚えがあり、対処もしてきたので落ち着いて報告を受け取ったのだ。

 ただ一人全く理解をしていないリルテを除いて。

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初短編を投稿してますので、 是非そちらも宜しくお願います!!

【タイトル】

白銀のエクリプス
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