意識がなくなります
「…………思い出した」
窓を照らしていた日の光が、影へ変わっていく。日が落ちて、少し肌寒くなった自室で天井を見つめながら、リルテは目を覚ました。
某主人公ならここで名台詞を発する事だろうが、そんな事を考える余裕すらないぐらいに、頭の中は眠っていた時の映像で埋もれていた。
明け方より、調剤師をしている母のマイラに頼まれて、薬草採取の為、自宅から二つ先の山に入っていた。ここは偶に父と一緒に狩りの為に来ている山だった。狩りと言っても食材を探しに来ていたわけではなく魔物の駆除について来ていたのだ。父はフレットといい冒険者だった頃はそこそこ名の知れた剣士であった為、月に何度か依頼を受けておりその際、偶の訓練として5歳になった頃から一緒に連れられて足を運んでいた。
リルテは今年8歳になり、フレットのおかげもあって、1人でもこの山に入っても危険がない程、剣の腕を仕込まれていた。
「よしっこれで頼まれていた物は全部揃った」
フゥーっと短く息を吐き、額の汗を袖で拭った瞬間、木々の向こうから聞きなれない音がした。低く一定の音を保ったまま時折、バチバチッとも聞こえる。
リルテは危険を感じすぐさま振り返り逃げようと思ったが、前方が白く発光し100cmくらいの蜂が姿を現した。
目の前に現れたのはエレクスタンビー。群れないので数の脅威は無いが、動きが速い上に魔法も使える危険なモンスターだ。幼い頃から両親に鍛えられ、そこそこ強くなってはいたが、対峙している魔物は、今の幼いリルテでは到底敵わない敵である。
早く逃げなければ殺されてしまうと、足を動かそうとしたが、なぜか体の奥から震えが止まらなくなり動けないでいた。逃げ出そうにも身体が言う事を聞かない。それどころか汗も止まらなくなりガタガタと震えるのみ。エレクスタンビーは状態異常をかける魔法は扱えないのに一体なぜと言える状況だった。
永遠にも思えた時の中で突如、全身の力が抜けたかのようにその場に仰向けで倒れこんでしまった。
ここで死ぬかもしれない。顔に絶望を浮かべながらリルテが薄れゆく意識の中、最後に見たのはエレクスタンビーの胴体をレーザーのようなものが上下に切断した光景だった。
そこでリルテは気を失ってしまった。




