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僕たちは星空の夢をみる  作者: 美汐
Chapter.1 秋庭学園
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5 放課後

 放課後、授業を終えたGクラスの生徒たちは、報告のために研究棟へと向かう。僕ももちろん対象者となるため、放課後の研究棟通いを日課としていた。


「さあて、帰るか」


「おい。研究棟行かなくていいのかよ」


 帰る気満々の幸彦に、僕は声をかけた。幸彦はさぼり魔として、僕たちや研究員の間ではすでに有名になっている。


「だってめんどくせー。毎日毎日行く必要ねえって。いつもと変わりありません、で終わりだろ」


「だからって、お前さぼりすぎ。そろそろ行かないとやばいんじゃないのか?」


「やばいってなに。なんかおしおきされるわけ?」


「知らねえよ。それに、僕にご飯おごる約束忘れてないだろうな」


「うっ!」幸彦はわざとらしくお腹を押さえて、苦悶の表情を浮かべた。「やっべ。腹いてぇ~~」


 そう言って、幸彦は全速力で教室を飛び出していった。


「あっ! 逃げんな!」


 追おうとしたが、あの逃げ足にそうそう追いつけるものではない。僕はあきらめて自分の席に戻った。


「……ったく」


 くすくすと、隣から笑い声。一部始終を見ていた沙耶ちゃんが、堪えきれずに吹き出していた。


「ホント、仲良しだね」


「全然! あいつ本当どうしようもないよ」


 こんなに恵まれた環境にただで通わせてもらっているというのに、少しは感謝の気持ちを持って研究に協力しようという気は起こらないものかと、僕は不思議で仕方なかった。


「あ、沙耶ちゃんも行くよね。どうするの? 例の夢の話」


「うん。行くことは行くけど……」


「夢のことは伏せておいたほうがいい」


 後ろから美周が、そう静かに言って現れた。僕は反射的に眉をしかめた。


「いちいち話に割り込んでくるなよ」


「聞こえてしまったのだから仕方あるまい。第一、この少ない人数の教室内で内緒話ができると思うのか。聞かれたくないのならば、もっと気をつけておくんだな」


「なにをえらそーに。いちいちつっかかってくるなよ」


「それはこちらの台詞だ。ちび助」


「ち……って、誰がちび助だよ!」


「まあまあ、二人とも落ち着いて」


 毎回のことなので、沙耶ちゃんも対応には慣れたものである。険悪になりそうな空気を笑顔でなだめる。


「美周くん。伏せておいたほうがいいってどうして?」


「昼休みも言ったろう。その夢の場所は、学園の合宿所がある場所の可能性が高い。そして、事件性があるかもしれない内容。下手をすると大ごとになる」


「でも、それならなおさら報告しておいたほうがいいんじゃ……」


「いや、この件はやはり話さないほうがいい」


 そう言う美周の声は真剣だった。


「そっか。美周くんがそこまで言うならそうする」


「それがいいだろう。もしなにか心配なことがあったら、僕に相談するといい」


「ありがとう」


 沙耶ちゃんはにこりと笑った。美周もそれを見て微笑する。僕はなんとなくそのやりとりがおもしろくなくて、目を逸らした。


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