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僕たちは星空の夢をみる  作者: 美汐
Chapter.6 夏休みの始まり
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5 突然の呼び出し

 剣道部の夏合宿を控えた前日の朝。突然僕の携帯電話が鳴った。部活が休みなので、のんびり朝寝をしていた僕は、その音で目が覚めた。ベッドに寝そべったまま、枕元に置いておいた携帯電話を手にする。着信を見ると、沙耶ちゃんからだった。それを見た僕は、思わず携帯電話を取り落としそうになってしまった。慌てて持ち直して起きあがり、電話に出た。


「あっ、はい!」


 緊張のため、つい声がうわずってしまった。


「もしもし小太郎ちゃん? ごめんね。朝から」


 沙耶ちゃんから僕の携帯電話に電話がかかってくるのは、これが初めてだった。予知夢のことについて相談するようになってから、なにかのときのためにと僕と沙耶ちゃん、美周の携帯番号とメールアドレスをそれぞれ交換しておいたのだ。ある意味ラッキーだったが、いざメールや電話をしようと思うと、あがってしまって今までできずにいた。

 それが、沙耶ちゃんのほうから連絡してくれたのだ。緊張と驚きとで、僕は電話越しにもかかわらず、正座をして身を正していた。


「どうしたの。なにかあった?」


 メールではなく電話をかけてくるということは、もしかしたら緊急性をともなう用件なのかもしれない。


「あのね、今日暇かな?」


 まさか。まさかそれは。


「暇だったら、ちょっと会えないかなと思って」


 なんということだろう。これは夢ではないのか。きっとそうだ。本当は僕はまだ眠っていて、これはまだ夢の中なのだ。そうでなければ、こんな幸運があるわけがない。沙耶ちゃんが夏休みに僕を誘ってくれている。もしかして、これはデートというやつなのではないのだろうか。

 いつもの駅前に十時集合ということになり、慌ただしく準備をした。まだ時間はあるとはいっても、そわそわしてしまう。


「なにそわそわしてるの?」


 母さんにも言われてしまった。ここは少し落ち着かなくては。

 顔を洗い、髪を整えて服を着替えると、僕は家を出た。外に出た途端、夏の暑い日差しがじりじりと照りつけてきた。青い空を見あげると、ソフトクリームのような入道雲が顔を出している。


 夏休みなんだな。

 そんな当たり前のことを、あらためて思った。

 休みに入ってからも部活ばかりやっていたので、夏休みらしい夏休みを過ごすのはこれが今年初めてかもしれない。

 足取りも軽く、駅へと向かった。


 ちょうど来ていた電車に乗り、いつもの駅へと向かった。電車内には、夏休みということもあり、親子連れや学生の姿が多かった。みな、どこかへ遊びに出かけるのだろう。

 目的の駅に到着し、電車を降りて改札口へと向かう。プラットホームから改札口をちょうど出たところで、前方から声がした。


「小太郎ちゃん。こっち」


 私服姿の沙耶ちゃんが、僕に気づいて手を振っていた。思わず笑みがこぼれそうになった次の瞬間、表情筋が凍り付いた。

 僕の顔を不愉快そうに見ながら、沙耶ちゃんのすぐ後ろに美周が立っていた。


「おはよう。小太郎ちゃん」


「お、おはよう」


 ぎこちなく笑みを浮かべる僕。そうか。そういうことか。なるほどね。

 勝手に沙耶ちゃんと二人きりだと、勘違いしていた僕がいけなかった。つきあっているわけでもないのに、デートなんてできるわけがない。勝手に一人で舞いあがっていた自分が恥ずかしかった。


「ゆかりちゃんももうすぐ来るはずだから」


 しばらく三人でそのまま待っていると、すぐに相田も合流した。


「暑いし、とりあえずどっか入ろう」


 女子二人が先に歩いていく様子だったので、僕と美周はその後ろに従った。微妙な並びだと思いながら、以前もこんな状況があったことを思い出した。


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