表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕たちは星空の夢をみる  作者: 美汐
Chapter.4 下見とハイキング
19/64

2 高原の空気

 学園のあるI県からY県の合宿所までは、電車を乗り継いで、降りた駅からはバスで移動した。かなり遠いと思っていたが、片道三時間もあればたどり着くことができる距離だった。それでもやはり長い移動は疲れる。ようやく目的地に着いたことがわかると、思わず大きなため息が漏れた。

 バスを降りると、濃い緑の空気を感じた。周囲には森の木々が鬱蒼と立ち並び、鳥たちがそこかしこで鳴いていた。空気がしんとして冷たく、少し肌寒かった。


「うわー。寒ーい!」


 沙耶ちゃんはバスを降りると、そう言って両手で自分の肩を抱いた。沙耶ちゃんの今日の服装は、白のチュニックワンピースにカーディガンというものだった。長い髪はシュシュでまとめていて、とても可愛い。私服姿の沙耶ちゃんとこうして遠出するのは、なんだかドキ

ドキした。


「本当、結構肌寒いね」


「避暑地だからな。夏は涼しくて気持ちがいいはずだ」


 そう言いながら、美周もバスから降りてきた。美周の今日の服装は、白のインナーに黒のジャケット、下はデニムのパンツというコーディネートだ。悔しいが決まっている。


「おお、ホントだ。涼しい」


 そう言ったのは相田だ。こちらは若草色のパーカにデニムのショートパンツ、ごつめのトレッキングシューズという出で立ちだ。沙耶ちゃんが一緒に行きたいからということで、今回連れていくことになった。彼女にも一連の事情はすでに話してある。

 沙耶ちゃんと相田はクラスで二人きりの女子ということもあって、普段から仲が良い。それに、やはり同性の友人というのはなにかと心強いのだろう。美周も、相田には予知夢の話をすることを了承し、今回同行することになったのだった。

 四人が降りると、バスは行ってしまった。ここで降りるのは、僕たちだけだったようだ。

 沙耶ちゃんは、なぜか大きなバスケットを持ってきていた。中身が気になるところだ。


「ここからまだちょっと歩くの?」


「少しだけだ。そこに看板が出ている」


 美周の示した先を見ると、確かに看板が出ていた。


『秋庭ロッジ この先↓』


 秋庭学園の合宿施設は、秋庭ロッジというらしい。意外に安易なネーミングだ。


「ホントだ。じゃあ早く行こう!」


 沙耶ちゃんはそう言うと、先に歩いて行ってしまった。なんだかとても楽しそうだ。


「なーんか目的忘れてるね。沙耶。まあ、いいんだけど」


 相田は苦笑しつつ、そのあとに続いた。

 僕もなんだか楽しかった。沙耶ちゃんの予知夢のことを調べに来たのが目的だが、こうして休日に出かけるという行為自体が、心をうきうきとさせていた。

 しばらく歩くと、すぐに大きな建物が見えてきた。


「これが合宿所? 結構立派な建物だね」相田の言葉に、美周が答えた。「まあ財力だけはあるからな」


 さすが合宿所とは言っても、秋庭学園と名がついているだけあって、ちょっとしたリゾートホテルのようだった。


「でも今日はここに用があるわけじゃないんだよね。沙耶ちゃんの見た夢の場所を探さないと」


「そうだね。近くに水が流れてるとこないかな」


「少し行けばあるはずだ。とりあえず、行ってみよう」


 僕たちは合宿所をあとにすると、周辺の道を散策することにした。

 合宿所の周りはまさに森だった。上を見あげると、高い木々の梢が大きく手を広げていた。その隙間からは光がきらきらとこぼれ落ちている。周囲を見渡せば、先も見通せないほどに木々が生い茂っており、辺りは濃い緑の空気に満ちていた。息を吸うと、新鮮な空気で体が満たされていくのがわかる。

 それは、街中では絶対に感じることのできない感覚だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ