001 魔術録
俺は一ノ瀬拓人。高校に入ってから一年と四ヶ月が過ぎた。部活には入らずにバイトもせず、帰宅してはネット小説を読んだり課題をこなしたりしていた。
今日は終業式だった。午前で学校も終わって部活がある人もいるようだが、帰宅部の俺には関係ない。せっかく午前で終わったことだし、寄り道でもしようかと思いながら通りを歩いていると一軒の古本屋が目に留まった。
(あれ? こんなところに古本屋なんてあったっけか……?)
疑問に思いながらも気になったので入ってみることにした。なにか面白そうな本があれば買って帰るつもりだが、あるだろうか。
店の中を歩きながら本を見てみるが、ほとんど分厚く古い本ばかりだ。読んでみないことには何も分からないので、目に留まった本を手に取ってみた。背表紙からして頑丈そうで、暗い紫の装丁がなされている表紙には『魔術録』とだけ書いてある。
(なんだこれ? 魔術とか気にしない訳ないだろ)
ネット小説を読んでいることもあってファンタジーや異世界もの、特に魔法などには興味がある。
薄い辞書程もあるその本は属性別に魔法が書いてあって、ネットで見るようなのも書いてある。転移魔法とかものすごく気になる。異世界にいけるような魔法とかないだろうか? いけるものならいってみたい。
(あった……)
【 転移魔法 】
『テレポート』
瞬間移動。目視できる範囲に瞬間的に移動する。
消費MP:10×移動距離
『トランスポート』
長距離移動魔法。主に対象を決めその対象を移動させることが出来るが、自分を指定することも可能。行ったことのある場所のみが転移対象地である。
消費MP:120
『ゲート』
魔力でゲートを作り、くぐった者を指定地点に転移させる。尚、ゲート通過後使用者は自動的に転移する。
消費MP:300
(おおおおおおおおおっ! あるあるあるある!!)
かなり興奮しながらもしっかり内容は読むことにする。
(テレポートか……。これ使えたらな……)
「テレポート(ボソッ)」
その瞬間、視界がブレた。
(あれ? さっきまで足下に鞄をおいていたのに……)
鞄は自分から50cm離れたところに移動していた。おかしいと思いながらも考えてみたがすぐに気が付いた。
(これ、自分が移動したんだ!!!!!!)