第5話 入院中何をしようかな
検査の結果、特に異常が見られず、健康そのものだと言われた。
この結果を見て雄大さんは腕を組み、ウンウンとひとしきり唸った後、何かしら異常があれば、調べようがつくんだけどな……と呟いた。
そして、今まで下を向いていた顔をこちらに向けて、こう聞いてきた。
「男女では体の作りが大きく違う。だから、性別が一晩で変わるというのは、大きな痛みを伴うはずなんだけど、昨日の夜にどこか痛かったところはない?」
「……昨日はどこも痛いところもなく、ぐっすり眠れましたよ」
確かに骨やら臓器やらが一晩のうちに男性から女性の物になるのだから、痛くないはずがない。むしろ無い方がおかしいだろう。
雄大さんはしばらく考え込んでいたが、よし、と何かを決心したような顔をして、こう言った。
「原因が分からないから、とりあえず今日から検査入院してもらうかな」
……ふむ。検査入院か。今は春休み真っ只中で、しかもまだ始まったばかりだが、どのくらい時間がかかるのか見当がつかない。最悪高校の入学式にも出られなくなるかもしれない。そうなると嫌だなぁ。そう思っていたら母さんが、
「どのくらい入院することになりそう?」
「詳しい期間は症状次第になるけど、今日検査した限りでは1週間くらいになりそうかな……断定は出来ないけどね」
1週間か…それくらいなら休みが半分削れるくらいで済みそうだ。
とはいえ1週間も病院で何をしようか。宿題は毎日少しずつやってるから持ってきてやろう。読書用の本は好きな漫画全巻と、小説を少々持ってきて、後は絵を描きたいから、スケッチブックを持ってこようかな。……と入院中どのように楽しく過ごすか考えていたら、雄大さんが、
「詳しい話は荷物を持ってきてからするから、一旦家に帰ってとりあえず1週間分の荷物を用意してきてもらって、後は出来れば旦那さんを連れてきてもらえると助かるかな」
と言ってきたので、僕と母さんは一旦診察室を後にし、車に乗り込んだ。
次回やっと母以外の家族が登場します(予定