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のんびりしたいです  作者: 薊の花言葉
10/12

第10話 これからのこと

検査入院をしてから1週間が経った。身体の隅々まで検査したが、結局分かった事はとても健康だということだけだった。ちなみに今僕と母は診察室で雄大さんの話を聞いている。


「先程も言った様にこの病院で出来る検査は全てやったけど、結局何も分からなかった。だから、本来は他の病院で検査を受けることをおすすめしたいんだけど……」


そう言って一旦言葉を切ると


「このまま他の病院に行って検査を受けると、おそらく……言い方は悪いけど、モルモットにされるかもしれないから、自分としては検査は受けて欲しくないんだ。今すばるが入院している理由だって、この病院の信用できる人にしか知らせてないし、それ以外の人には適当に誤魔化してるから、全く騒がれてないんだ。

だから、俺としては、このまま退院して、その後は俺の病院で定期的に検査をしてもらいたいんだけど、それでもいいかな?」


確かにそうだ。性転換手術をしたわけでも無いのに突然変わるなんて、騒がれるに決まってる。僕としてもそんな事になるのは嫌だ。


「はい。僕もそれで構いませんが、どの位の頻度で病院に来ればいいですか?」


「そうだなぁ……出来れば1週間に1回は来てほしいところだけど、それだとすばるの休みが無くなっちゃうし、俺もそこまで時間が取れないと思うから、1か月に1回来てもらえればいいよ」


「分かりました。病院に来るときは僕1人だけでも大丈夫ですか?」


「すばる1人でも大丈夫だよ。後何か質問はある?無ければもう帰っても大丈夫だよ」


「質問は……今は特にないですかね」


「そっか。また何か分からない事とかあったら相談に来な。ではお大事にどうぞ」


そう言って僕は母さんの車に乗り、帰宅した。


◆◆◆


帰宅して早々、僕は病院に持っていった荷物の整理をしていた。マンガや小説等々、たくさん持っていったので、結構時間がかかりそうだ。

そう思いながら整理を続けていると、ふと今まで着ていた服はまだあるのだろうかと気になり、タンスの中を見てみる。……良かった、あった。でもその横に見た事無い服が置いてある。こんな服持ってたかなぁ。母さんが新しいのを買ってきてくれたのだろうか。何かデザインが女物っぽい気がするなぁ……。まぁ見たところスカートは無いようだし、ひとまずは安心かな。いきなりスカートは難易度が高すぎる。


そう思いながらタンスの中を漁っていると、1階から母さんが呼ぶ声が聞こえた。何だろうと思いながらも、階段を下りる。

リビングのドアを開けると、父さん母さんに妹と、家族が机の前に座って、皆真剣な表情をしていた。何だろう。


「すばる、今から大事な話があるから、ちょっと座って」


「……分かった」


その場が緊張に包まれているので、何となく正座をしておこう。


「……それで?話って何?」


「話はまず、これからのすばるについてのことよ」


「これからすばるの生活は色々大変になってくると思う。今のすばるの見た目は、はっきり言って女にしか見えない。今までみたいな生活は出来るには出来るだろうが、すばるの事情を知らない人からあらぬ誤解を生んでしまうことが多々あると思う」


「だから、私達親としてはせめて家の外に出る時だけ、女の子らしく振舞ってほしいのよ。と言っても、まだ無理かもしれないから、今はせめて服装だけでも、女の子らしい服装をしてほしいの」


「お前は今まで男として育ってきたから、色々嫌かもしれない。けど俺達は、すばるがあらぬ誤解を生んで、困って欲しくないんだ。だから、徐々にで良いから、これから女としてちゃんと育ってほしいんだ」


「色々分からない事があると思うけど、そこは私が教えていくから、安心してね」


「という訳だけど、すばるはそれで良いか?嫌ならそれはそれでいいし、その場合でも俺達は出来る限りのフォローはするつもりだから安心していいぞ」


……これからか。突然女の子になったんだから、もしかしたらひょんなことで性別が戻るかもしれない。

……でも確か、女の染色体はXXで男の染色体はXYだったか。それでXが2つあっても、Yがあれば男になるし、逆に1つでもYがなければ女になるとTVで聞いたことがある。

つまり、男から女になるより、女から男になる方が確立としては低いのかもしれない。だから、今後は性別が元に戻る事は無いのかもしれない。そう考えるとこれからは女として生きた方がまだ楽なのかもしれない。


「うん。今はまだスカートとかは無理かもしれないけど、これから女として頑張ってみるよ」


「そっか。じゃあこの話は終わるけど、これから分からない事や相談したい事があったら遠慮せずに聞いてほしい。俺に相談し辛かったら、母さんでも、緑に相談するのも良いから、とにかく誰かに相談をしてほしい。これで話は終わりだ」


「分かった。たくさん迷惑をかけると思うけど、これからもよろしくお願いします」


そうして話が終わり、僕は荷物の整理に戻った。

……これから女として生きるということは、将来男と付き合わなければならないのかあ~。でも女の子と付き合うのも色々とハードルが高そうだ。誰とも付き合わないという選択肢もあるだろうが、さすがにそれは寂しすぎるし、何より親不孝だと思うから、それはダメだ。


そんな事を考えながら整理をしていたら、夕飯ができたという母さんの声がしたので、下に行き夕飯を食べた。そして、しばらく自室で横になっていたらいつの間にか夢の世界への往復便に乗り、旅立っていった。

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