俺の喉から理想の妹が!
『お兄ちゃん、おかえりなさい!』
『ここは俺に任せて、先に行きなぁ!』
『おねぇさんと、いいことしない?』
『ぼ、僕と付き合ってください!』
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ハッと目が覚めた。寝起きだというのに意識ははっきりしている。
何だったんだ今の夢は…… 俺が爽やかな声で告白しり、次のシーンで死にそうなセリフをかっこいい声で言ったり。
はたまた、可愛い声で帰宅したら可愛い妹に、いってほしいであろうセリフ言ったり、セクシーな声でエッチなおねぇさんに言われたら、前かがみになりそうな事言ったり。
夢ってたまにどんなにおかしい事でも普通にしてるから怖い。夢って欲求と現実のギャップって聞いた事あるけど、俺は現実で良い声でしゃべれたら、とか可愛い声でしゃべれたら、とか思ってるって事なのか?
かっこいい声はあるとしても、可愛い声はないだろ…
だってこの見てくれに加えて可愛い言葉発したら、キモすぎるもん。
「6:45か……」
使い古しのコラショの時計を見る。
俺、芳村浄巳 の一番最初に出来た友達コラショ。
毎朝7時に起こしてくれるコラショくんだが、今日は一人で起きられた。俺、成長したよ!コラショ!
コラショに朝の挨拶を済ませて、支度をし、リビングに行く。
「あっ、にいちゃんおはよー。」
「おはよう、朝からゲームって、よくやるなぁお前も。」
朝からゲームやってるのは俺の妹 芳村佳奈恵 だ。
インターネットやゲームなど、機会系に強く、俺の理想の妹とは程遠い。
俺的にはおかし作りや、お裁縫とかが良かったのだがな。
「朝からゲームやってるのも良いが、学校遅れるなよ、俺先でるから。」
「うん! まあ、ゲームは今日のAM1:00から何だけどねー。あれ?ところでにいちゃん、朝飯は?」
「今日は食欲がわかないからいいや、日直だし早く出ないとだし。じゃあ鍵閉め忘れるなよー。」
「ラジャー」
朝の会話を交わして、家を出る。
今日の日直は俺だ。正しくは俺ともう一人だが。日直は朝黒板消しとゴミ捨ての仕事がある。
めんどくさいなぁ〜、そう思いながら片道15分の道のりを歩く。
しかし今日の夢は何だったんだ……?
そんな事を考えてる間にクラスについた、2年1組。
俺は2年生だ。中だるみの時期と言われる2年生なのである。
「おはよー」
扉を開けて中に入る。そこには先に来ていたもう一人の日直が、他はまだ誰も来ていなかった。
「遅いわよあんた! 何してんのよ! 日直なんだからしっかりしなさいよね!」
朝からうるさいのは、宮原麗華 。
容姿はいいのに、趣味がニッコリ動画を見る事、そのサイトで生放送をしている人や、歌を歌ったのを投稿してる歌い手という人たちの事を熱く語ってしまうという空気の読めい残念な人だ。
「ごめんごめん、でもまだ7:12じゃん、早すぎるよお前。で、何すればいい?」
「もう黒板消したから、これクリーナーにかけといて、私ゴミ捨ててくるから。」
そうして、黒板消しを俺に渡し、ゴミ袋を片手に教室を出て行った。
あいつは残念だけど、決められた仕事は素早く丁寧にこなすしっかり者なのだ。
だからみんなに嫌われたりはしない。
そういう奴だ。
「おーす、浄巳」
ガラガラーっと、扉を開けて入ってきたのは 紺野一城 。
こいつとは、小学校からの幼馴染だ。
「おはよー、一城。早いな、どうした?」
「いやー、なんか目さめちゃってさー、それで。」
「そうなのかー、奇遇だな、俺も何だよ。今日面白い夢見たんだよ、それで目が覚めちゃってさ。」
「ほー、暇だから聞かせてくれよ。」
「なんか、俺が色々な声で色々なセリフを喋ってる夢だったんだよ。」
「どういうこと?」
例えば…… と俺の思う理想の妹像を浮かべて真似してみた。
「『お帰りなさい! おにぃちゃん!』とか」
「え?」
「お?」
「おい、誰かいんのか?誰の声だよ今の。」
「いや、ここに俺らしかいな…… え?」
「浄巳、もっかい言ってくれ、さっきの。」
「お、おう。わかった。」
もう一度さっきと同じように、理想の妹像を思い浮かべる。いくぞ……
『お帰りなさい! おにぃちゃん!』
「「…………」」
「うわあぁぁぁあ、きめぇぇぇえええ」
「俺から、俺からだったああぁぁ!!」
「でも、声だけはかわいいぃぃ!!」
信じられなかった、夢が現実になるとは。
正夢って奴か?!
でも、一城の言う通り、自分の声からでる可愛い声は、不覚にも可愛いと思ってしまった。
これで色々なセリフを言ってみたら楽しいかも…… そう思った。
心のどこかで可愛い女の子の声を出してみたいという欲求があったのだろか?
夢は、欲求と現実のギャップ、本当にそうなのかもしれない…… 俺はそう思った。