長い一日
遅くなりました。ようやっと更新です。
いつもに比べかなり長いので、時間がかかってしまいました。すみません。
切りのいいところまで書こうとすると大変長くなってしまいました…。
拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。
「はぁ…。」
ー何故こうなった…
そう思いながらゼルフィードはため息をついた。
そして、一人の人間を拾うまでに至ることを思い返した。
朝から森が騒がしかったので、様子を見に俺は家を出た。家を出てすぐになぜ森が騒がしかったのかわかった。
何やら人が森の中に入り込んだようである。
此処は魔の森と言われ、滅多に人が近づかないところであるのだが、なかなか珍しいことである。
とても久しぶりな予期せぬ訪問客に少しばかりワクワクしながら人の気配の方に向かい進んでいく。
近づくにつれて、人が追われているのだとわかる。
追い手は此処らあたりを縄張りにしている、バーサーカーモンキーである。奴らは気性が非常に荒く、縄張りを侵すものを許しはしない。恐らく追われている人間はその縄張りに入ったのだろう。
ーしかし、奴らに追われて此処まで生き延びるとは…
少し驚きながら人に近づくと、見た事のない服を着た15、6歳ほどの男がいた。
ちょうど取り囲まれて、飛びかかられる寸前である。
ーふっ、運のいいやつめ
襲われている人間と猿達の間に入るようにしてバリアを張る。
猿達は攻撃するまでもなく、飛びかかってきた勢いのままバリアにぶつかり、気絶した。
男の方に振り返るといきなり誰かと問われた。
まず、助けられればお礼だろう。そう思い言うと、アワアワしながらお礼を言ってきた。なかなか素直でよろしい。
その後彼が言った事はなかなか興味深い事であった。
名前は変わっているし、服装も変わっている。
何者だと聞けば、目に見えて慌てている。
少しからかってやろうと思い、東の端に小国があると聞いた事があると言うと、まさかとは思ったがその話に乗ってきたのだ。少なくとも俺はそんな国があるというのは聞いた事がない。今まで読んだ文献の中にもそんなことが書かれたものはなかった。となれば、ますます怪しい。
彼の言っていることはほとんど嘘であろう。
しかし、行くあてがない、という部分に関しては、本当のことのような気がした。
彼は俺の家に置いてくれるように頼んだが、これほど怪しい者を家に招き入れるほど愚かではない。頼み続ける彼に断り続けるが、段々良心が痛んできて、最終的に折れてしまった。
ー何やってんだ俺…
結局怪しいとは思いつつも家の前まで連れてきてしまった。
「ここでちょっと待ってろ」
そう言って、家の中に入り、ミルを起こす。
「…?」
ミルが俺の方を向いて首をかしげる。元から説明するつもりではあったが、人を拾ってしまったことを経緯を含めて簡潔に話した。
「…すまんが、しばらく奴が家で一緒に暮らすことになった。もし、疑わしい行動をとった場合は即押さえ込んで構わない。悪いな…。」
そう言うと、ミルはフルフルと頭を振った。
「それじゃ、連れてくる。」
凛太朗は、ゼルフィードに家の前まで連れてきてもらったが、ここで待ってろと言われ仕方なく外でぼーっとしていた。見た目は木造の少し古びた一軒家である。
しばらくしてゼルフィードが家から出てきて、入るように促した。
入ってみると、中は薄暗く、何やら辛気臭い。
案内されたのはダイニングキッチンのようなところだ。
物自体は少ないが、全体的に整理されてるという感じはなく、雑然と置かれていた。
そして、1人の少女と対面させられた。
くすんだ金色の髪は緩くウェーブしており、茶色の大きな瞳はクリクリとして可愛らしい。間違いなく美少女である。きっと大きくなれば、かなりの美人になるだろう。
ー…誰?
「こいつは、ミルだ。訳あって俺の家で育てている。ミル、こいつがさっき言ってたリンタロウだ。という訳で、お前はこの家の家事全てやるということでいいんだな?早速だが、俺たちは朝飯をまだ食ってねぇ。作ってくれ。…あー、そうだ、あとお前の名前長いからリンな。」
ーなんか決めつけられたぁ。そんでもって俺よりあんたの方が名前長いでしょ!
まぁ、置いてもらう身でとやかく言う気はないので、朝食を作るために確認をする。
「…わかりました。で、朝食って、何を使って作ればいいですか?」
「ん?あー、悪りぃ。裏に畑があっから適当にその辺から採って作ってくれや。あと、肉ならその箱の中に入ってる。じゃ、よろしくな。できたら呼んでくれ、俺は奥にいる。」
「あ、あの、調味料はどこに…?」
「そこの棚の上に置いてある。適当に使え。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
やることは決まったのでさっさと動き始める。
取り敢えずは裏に回ると少し小さいがいろんな種類の野菜が植えられていた。
ーへぇ、かなりあるな。これなら色々作れそうだ。
植わっている物の中から幾つか見覚えのない物がある。それはどういう物かわからないので採らないでおく。スープと肉くらいでいいだろうと思い、適当にその具材となりそうな物を採っていく。
家の中に持ち帰ってきて、水洗いをしようと思うと、水道がなかった。
ー…えぇと、これはどうすればいいんでしょうか…。まぁ、水道がないのはここが異世界だと考えるならあり得るけど、いやでも、どうすんだよ…。
と悶々と考えていると、背中に何やら視線を感じた。
振り返ってみればミルと言われた少女がこちらをじっと見ていた。
「…えっと、ミル…ちゃんだよね…。な、何か用かな?」
ミルは目をそらさずにフルフルと頭を振る。
その後も目をそらす気がないらしく、しばらくの間見つめ合う形になった。最終的に目をそらしたのは凛太朗の方であった。気恥ずかしくてついそらしてしまったのだ。
ー…っどうしたらいいかわからない!!!お、落ち着け、俺。こんな事今までになかったから混乱してるだけだ。
見知らぬ人が自分の家にいるのだ。気にならない訳がない。
そう思いなおして、少し落ち着く。ようやく落ち着き、自分のやるべき事に思い至る。
ーあ、料理しなきゃ…。でも水…。…この子に聞いてみるか。
「あ、あの、水ってどこにあるかわかる?」
ミルは台所の隅に置いてある大きな壺を指差した。その壺の上には木でできた蓋がしてあり、その上に手酌のようなものがおいてあった。
蓋を開けて覗いてみると水が壺いっぱいに入っていた。振り返ってお礼を言おうとすると、盥を持ってくるところであった。慌てて声をかける。
「あ、持つよ。」
少し驚いたような顔をしてから少し微笑んで凛太朗の方に盥を差し出した。
「どこに持っていけばいい?」
聞くと、水瓶を指差す。
しばらく理解ができなかったが、汲んだ水を入れるために持ってきてくれたらしい。
その意図を察し、満面の笑みを浮かべてお礼を言うと、ミルは少し恥ずかしそうに俯いた。
コンロのような所には赤い石がコロンと置いてあるのを見て、首を傾げていると、ミルがその石に触れた。するとそこから火が出てきたのだ。
ーどういう仕組みかは知らないけど、魔石みたいなものかな?
そこからはそれほど時間がかける事なく、水瓶の水をミルが持ってきた盥に入れ、野菜を洗い、野菜を適当な大きさに切って、鍋に入れ水瓶の水を使って煮ていく。調味料の棚を見ると塩と胡椒のようなものしかなかった。仕方ないので、塩と胡椒で味を整える。
野菜に火を通している間に肉を出してきて、同じように下味をつけ、焼いていく。
いい匂いが立ち込めてきたところでふと、主食がない事に気がつく。
「ミルちゃん、そういえば、パンかご飯かある?」
暫く首を傾げていたが、コクンと頷き、肉の箱の隣に置いてある箱からパンのようなものを取り出した。
ーよし、これで完成かな?
「ミルちゃん、悪いんだけど、ゼルフィードさん呼んできてもらってもいい?俺、食べれるように準備しておくから。」
コクンと頷くと、テテテとでて行った。
ー…なんか妹が出来たみたいだな。
そんな事を思いながら上機嫌で盛り付けていく。
食器の場所はミルに教えてもらった。
簡素な木の机と椅子が四つあるだけだが、十分だろう。その上に出来たての朝ごはんを並べていく。
暫くしてミルが戻ってきて、行儀よくちょこんと椅子に座った。そして、凛太朗の方を見て隣の椅子をトントンと叩いた。ここに座れという事だろう。
「ありがとう。」
そう言ってミルの横に腰掛ける。
暫く沈黙が流れるが、それが苦痛ではなかった。
突然ミルがクルリと後ろを振り返ると、ダイニングの扉が開いた。
「待たせて済まなかったな。」
そう言いながらゼルフィードが入ってきた。
「おお、こりゃ旨そうだ。それじゃ、頂くとするか。」
「いただきます」
凛太朗がそう言って食べようとすると、ミルとゼルフィードに不思議そうな目で見られた。
「…なんだ?さっきのは」
ゼルフィードにそう聞かれ、答える。
「あ、えと、俺の国では食べ物をいただく際には、その命をいただくという事で、自分の血肉になるために食べ物になってくれたものに対して感謝を込めて”いただきます”って言うんです。あとは、作ってくれた人への感謝の意味とかもありますけど…」
「ふーん、なるほどな…。確かに…。…これからは、いただきますって言うようにするか。」
ゼルフィードはスプーンを置きなおしていただきますと言った。ミルをそれを真似るように合掌して頭を下げる。
ゼルフィードは美味い美味いと言いながらあっという間に食べ終えてしまった。ミルも小さな口にめい一杯詰め込んで必死に咀嚼している。思わず、食べ物は無くならないから、もうちょっとゆっくり食べな、と言うと、恥ずかしそうに、チビチビと食べ始めた。
「ふぃ〜。満足満足。久しぶりにまともに食べた気がするな。それにしても、リン、以外に料理得意だったんだな。」
ー何やら少し心外なことを言われたが…
「あー、俺、家じゃ毎日ご飯作ってたんで…。」
「ふーん、そうか。そういや、随分ミルと仲良くなったみたいだな。」
「え、あー、はい。」
そう言ってミルの方を見るとミルは少し嬉しそうな顔をした。
「良かったな、ミル」
そう言いって、俺の方を見るとこう言った。
「悪いが俺は殆どさっきみたく引きこもってるんでな。ご飯の時に呼んでくれれば行く。その間、適当にしてくれて構わないから。」
「はい、分かりました。あの、掃除とかもしちゃって大丈夫ですか?」
そう、はっきり言おう。この家、ものが少ないからまだ良いが、あまり綺麗ではない。先ほども至る所に埃がついているのを見て気になっていたのだ。
「あぁ、構わん。むしろそうしてくれるとありがたい。」
「いえ、俺がここに住まわせてもらう条件が家事全てこなすことですし、問題はないです。」
そうか、すまんな、と言ってゼルフィードはダイニングをでて行った。
ミルが食べ終わるのを待って、一緒に片付けをし、ミルが眠そうにしていたので寝てくるように促した。
寝ている間に掃除を済ませようと、箒の場所などを聞いて、ミルが寝てしまったので、掃除を始める。
掃除が一通り終わった頃にミルが起きてきた。
「おはよう、ミルちゃん」
コクンと頷き返すミル。
そろそろ昼前である。
お昼の用意を朝と同じように始める。
出来上がると、ゼルフィードをミルに呼んできてもらい3人で食べる。ゼルフィードはあっという間に食べ終わってしまったので、ミルが食べ終わるまで待って一緒に片付けをする。
それが終わると、やることがなくなってしまった。
掃除は玄関、廊下、台所、ダイニング、リビングなどの共用スペースに関しては午前中のうちに終わらせてしまったのだ。
あとは、各部屋であるが、居候の身で歩き回るのは憚られ、結局触っていない。
ミルに午後にする予定はあるのか聞いてみることにした。
「ミルちゃん、これから何する?」
暫く首を傾げて考えているようだったが、思いついたのか凛太朗の袖をクイクイと引っ張る。
ーん?どこかに連れて行こうとしてるのかな?
引っ張られるままに付いて行くと、おそらく書斎と思われる部屋に辿り着いた。壁一面に天井に今にも付かんとしている本棚の中にびっしりと本が入っていた。
上まで手が届かないためか、所々に梯子が掛けてある。
「…すげぇな…。」
思わず呟いた。
非常に壮観である。
ミルは凛太朗がぼーっとしている間に御目当ての本を見つけたのか、床に座り込んで読んでいる。
ーこれは、読んでもいいんだろうか…
凛太朗は別に本を読むことは嫌いではない。むしろ好きな方である。
ミルが連れてきてくれたということは、おそらく読んでもいいということだろう。そう思って本棚を見ていく。その中で面白そうな本を見つけた。
"この世界のはじまり"という、神話のようなものと、"魔法の第一歩"と書かれた、初歩的な魔法書である。本棚には他にも魔法書は入っていたが、見た感じ一番簡単そうである。魔法書があると言うことは、魔法があると言うことであり、そういう事が大好きな凛太朗にとってはとても嬉しい事であった。
それと同時に、自分がいる状況がやはり夢ではないのではないか、という確信めいたものも出てきた。
その二冊を読み終えると、もともと森の中にあるせいで光があまり入らないのだが、更に段々と暗くなってきていた。
そろそろ夕ご飯の時間か、と思い、本棚に戻す。
それに気がついたのか、ミルも本棚に本を戻した。
「ミルちゃん、本読みたかったら読んでてもいいよ。俺が晩ご飯作るから。」
そう言ったのだが、ゆるゆると首を振った。
台所へ行き、2人でまた朝と同じように作って、3人で食べる。ゼルフィードが出て行く前に、こう言った。
「風呂の掃除をして沸かして置いてくれるか?場所はミルが知ってる。あと、お前の部屋だが、…そうだな、空き部屋が一つある。あそこでいいか…。ミル、悪いが案内してやってくれ。」
ミルが頷いたのを見ると出て行った。
ミルが食べ終わるのを待って片付けをした後、風呂場に連れて行ってもらい、掃除をした。御湯の沸かしかたがわからなかったのだが、それをミルに聞くと、持ってきていた盥を持って台所へと歩いていく。その後を追いかけると、水瓶の前で待っていた。要するに、ここから水を運んで浴槽に水を張り、なんらかの方法でお湯にするらしい。
「この水を運べばいいんだな?」
確認のためそう聞くと、コクンと頷いた。
何往復かして湯船にいっぱいになると、ミルがコンロに置いてあった赤い石を持ってきて、水の中にポチャンといれた。すると、不思議な事に浴槽から湯気が出てきた。
びっくりして中の水に触ってみると、ちょうど良い温度のお湯になっていた。
そして、凛太朗の方を見て、入れとでも言うように浴槽を指差す。
「えっと、俺に先に入れってことかな?」
コクン
「あー、ミルちゃん先入って良いよ。居候の身で一番風呂は申し訳ないし…。」
そう言ったのだが、ブンブンと頭を振って否定された。仕方ないので、ありがたく先に入らせてもらうことにする。正直言ってかなり疲労がたまっているのは事実だ。
ほっこりした気分を味わいながら入浴する。
「はあ、気持ち良い…。今日は疲れたしなぁ…。」
ブツブツ言いながら入って出てくると、着替えが置かれていた。日本の浴衣みたいなものだ。それを着ろということだろう。用意してくれたであろう、ミルには感謝せねば、と思いながら袖を通す。
台所に行くと、本を読みながらうつらうつらしているミルがいた。
眠いのにわざわざ一番風呂を譲ってくれたらしい。
「ごめんね、ミルちゃん。俺が先に入っちゃって…。上がったからどうぞ。それから、これ、わざわざありがとう。」
浴衣のようなものを指し示しながらお礼を言うと、ねむたそうに目をこすりながらこちらを見て、ミルは少し嬉しそうに笑った。
パタンと本を閉じて椅子から降りる。そして凛太朗の袖を引っ張って歩き出す。
てっきり、風呂に入りに行くと思っていた凛太朗は困惑しながらミルに聞く。
「どこに行くの?お風呂はいるんじゃないの?」
首を横に振るとそのまままた歩いていく。
そして、一つの扉の前でピタリと止まった。
ガチャリと扉を開けて中に入ると、机と椅子が一脚、そして簡易ベッドが一つ置かれていた。
ここまで来ればなんとなく分かった。
ミルは凛太朗に部屋を案内してくれたのだろう。
「ここ、俺が使って良いの?」
コクン
「ありがとう。」
そういうと、ミルは少し照れたように頬を赤らめた。
そのままミルは部屋を出て行った。
疲れ果てていた凛太朗はベッドの上に寝転がる。
そして、とても長かった今日1日のことを思い返しているうちにいつの間にか眠ってしまっていた…。
読んでいただきありがとうございました。
ミルちゃん可愛い…
可愛い子をかけるのはとても嬉しいです。
今回出てきた本の内容についてはまた改めて書いていきたいと思います。
また、ミルちゃんのことや、凛太朗のこと、ゼルフィードのことについてももう少し掘り下げて書いていくつもりなので、もう少し待っていてください。




