妖精、朝の大通りを行く
朝。
時計台の鐘が奏でる音色で目を覚ます。
それが私の1日の始まりです。
……なんだか、いつもよりお外が騒がしいですね?
おもしろそうなので様子を見に行きます。
力を使い、姿を変える。
今日は茶髪の少女にしましょうかね!
時計台の近くにある大通りはいつも、人で溢れている。
「おじさーん!ポティスを3つくださいな!」
野菜売であるいつものおじさんに声をかけた。
「あいよ!おっと、ティア嬢かい!」
ティアっていうのは私の名前。
このゲンジローおじさんは妖精と契約しているから自然に分かるんだそうで。
……他の契約者には分からない人もいるんだけどなぁ?不思議。ちなみに、源次郎っていうらしいけど、文字が他の国の言葉なんだそうです。ゲンジローおじさんによるとポティスはじゃがいもって言うんだって!
「今日はなんだか賑やかだね!」
ポティスを受け取りお金を渡しながら聞く。
「あぁ、ティア嬢は初めてだからなぁ。
今日は50年に一度の祭なんだよ。」
「それってもしかして!」
私はわぁっ!と腰まである茶髪を揺らし喜びをあらわす。
「そう、勇者召喚を控えた祭り───
ライナス祭だ!」
その途端、周りに子ども達が溢れてくる。
おそらく勇者の話を聞きたいのだろう。
無事に目的を果たした私はそそくさと、子ども達の集団から抜け出した。
察した方がいるかもしれませんが、
ゲンジローおじさんは勇者召喚された人です。
子ども達は、勇者の話というより武勇伝を聞きたいのですが
ティアは目の前にいる野菜売りのおじさんが勇者とは気付いておりません(困惑)
ゲンジローおじさんは無事に、
勇者のお勤めが終了しましたので隠居しています。