入学
紫 アキです。
まだ始めたばかりでよければドンドンコメントとアドバイスお願いします!
神の味噌汁…失礼、「神のみぞ知る」。
簡略的に言えばぶっちゃけ『先の事は神様しか知らないよ』という意味合いだ。
たとえば、玄関開けたらいきなり隕石が降ってきたり、偶然買った宝くじが一等に当たる事だって人間なんぞにわからないのである。
ある高校のある一室。クラスは20人程度だろうか、少し一クラスにしては少ないが皆が皆一様に黒板を向き自己紹介をしている。それを見ればあっ、新学期かぁやっぱいいなぁ、と言うなんともほんわかとした初々しい反応をするだろう。だがこのクラスにただ一人そんな事を感じることの出来ない人間がいる。
(あぁなんとも、居心地の悪さを感じざる得ないな)
何故彼がこんな事を思っているのかというと彼以外のクラスメイトの自己紹介を聞いてもらいたい。ちなみに席順は来た人から適当に座っている。
「 小豆 沙里奈 (アズキ サリナ)です。センジョウ中から来ました。趣味は音楽を聴くことと小豆を洗うことです。」
まぁここまでは普通だ。可愛らしい自己紹介をしてくれた本当に高校生?と言う可愛らしさを持つおさげをした子、うん普通だ。仮に小豆を洗うことが趣味だってまぁ自信は無いが探せばいるだろう、たぶん三人ぐらいは。問題は次からだ。
「網切 葉先 (アミキリ ハサキ)。趣味はハサミ探しと網を切ることです。最近は…ふっ、女性の髪を切ることですかね。」
セリフが普通にキザっぽくサラサラな髪をかきあげて気持ち悪い奴だ。セリフが寒すぎて教室の女子の舌打ちがよく聞こえてくる。
うん普通に気持ち悪い。
だがそれよりも彼の趣味、違和感がすごい。ハサミ探しはまぁ百歩譲ってあるとしよう。色んな愛好家の言うものはいるものだからな。だがその次、『網を切る』。なんだその趣味、いないだろ毎日網切ってるってなんだ。
その後も色々な趣味や特技が暴露されていった。例えば恩利 逆撫 (おんり さかなで)女子だ。趣味は人に災いをもたらすことらしい。あげく鴉間 翼と言う男子の特技は空を飛ぶ。
なんだこのクラスは、そういうのが流行っているのか?
彼はそんな居心地の悪さを感じながらここに来るまでの事を考える。
桜咲く春の季節。
昔ながらの少し大きめの日本家屋。
薄暗い何処にでもある一室、その部屋の主は目覚めた。目覚めたと何かラスボス感溢れるような物言いだがただ単に彼は朝眼を覚ましただけのことである。
「…朝、だな…」
彼以外にその家には人が居ないのかまるで人の気配がしない。それもそのはず彼は地元から離れた高校に晴れて入学することになったのだから。そのため親から仕送りをしてもらい一人暮らしを始めたのだった。ちなみになぜ日本家屋なのかはまた後で語るとしよう。
まだ寝起きの怠い体に鞭を打ち布団を片付ける。そのまま布団を放置しておくと二度寝と言う二度と帰ることのない片道切符を手に入れてしまいそうだからだ。
「さてと、まぁ初日だし目玉焼きつくるか。」
まぁ初日とか別に関係ないけど、と独り言を言いノロノロと支度を始める。この何処にでもいる普通な若者の名前は安部 師道 (あべ しどう)。この度晴れて高校に入学することになった高校一年生である。適度な長さの黒髪に面倒くさいからと放置してある寝癖が彼の性格とあっていてよく似合っている。
これといった特徴は無いが家柄が少し特殊なことくらいと強いて言うならば実家にいた頃に親戚や家族の年寄り連中に半ば無理やり教え込まれた武術を取得していることぐらいだ。
さらに精神面で言えば面倒くさがりやなとこくらいである。
「さてと、別に今日はこれと言ったものは必要ないか」
そう言ってまだ住み始めたばかりの家の戸締りを確認し学校へと向かう。
これから安部 師道が通うことになる学校について少し説明するとしよう。彼のこれから通う高校だが名を親和高校と言う。別にこれと言って盛んな部活があるわけでは無く中の上くらいの学校だ。
では何故彼、安部 師道はこの学校を選んだのか。その理由は親やその祖父母に原因がある。面倒くさがりやの師道だがこれでもなかなかに頭が良く比較的高校を選ぶことができた。何処に行こうか迷って居た師道の所へイチオシされたのが親和高校。家族全員が理由も特に言わずここにしろと言われたら流石の彼でも抵抗があった。
だが驚く事にその高校は何故か安部の名前を出すと面接だけと言う破格の試験内容。試験勉強が面倒くさかった彼は怪しさ満点だったがそれよりものんびり受験シーズンを迎えられる事が嬉しいと言う理由だけで高校を決めるのであった。
「しっかし面接試験以外普通の学校だよな、」
余りにも楽すぎた受験内容だったためもしかしたら曰く付き物件の様なこの高校に入学する事になった受験生が度々事件に会う、と言うような事はなさそうである。
まぁそんな事があったら次の年からその高校は無くなるだろう。
そんなこんなで無事学校につき体育館で理事長らのありがたい言葉をもらいあらかじめ別れていた自身の教室に向かい先ほどの自己紹介を聞くことになるのだった。