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7話
翌日、カラハとミズナギとセレーネは門にいた。
見送りは無い。むしろこのことがばれなくするように目立たなくするように、との配慮だった。
「セレーネ様、大丈夫ですか」
「その呼び方はここを出れば止めてくださいねぇ」
ミズナギがつぶやく。カラハははっとして口をつぐんだ。
外でセレーネという名を出すと、貴族という身分がばれて彼女が危険に晒される可能性がある。
あくまで今回は旅人ということでなければならない。
「クラメ様……」
クラメ――この辺りの地域に暖かくなると現れる渡り鳥の名前――数が少なく、その上小さい鳥で見つけるのは大変な鳥――しかしその鳴き声は透き通って美しい。彼女にぴったりな名前だ。
彼女自身が望んだ名前。恐らく初めて望んだ名前。
呼ばれた彼女はこちらに向いて微笑んだ。
無事に帰ってこれるだろうか。いや、何としても帰ってくる。
三人で。




