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ワタリドリ  作者: 横井雀
6/8

5話

 大星祈師の部屋を出るとそのまますぐに元の部屋に戻った。床の模様はほとんど完成していた。

 しばらくすると人払いがされ、大星祈師やらを迎えてやっと儀式の準備が整った。

 先ほどの大星祈師は白いローブを羽織って部屋の中央に立っている。変わ

らずその顔は穏やかなままだった。むしろ、意図してそうしているのかもしれない。

「凶を持つものよ、ここへ!」

 彼は高々と叫ぶ。セレーネの両親は大星祈師の後ろ、セレーネとは向き合う形で立っていた。

 ここからは彼女は一人で行かなければいけない。

「大丈夫です。我々はここにおります」

 今にも震え出しそうな少女を勇気づけるように。

「もし不安になればここに戻ってきて大丈夫ですよ。そういう決まりですからね」

 ミズナギもカラハに続く。これに効果があったかどうかはわからない。彼女は何を決意したように前を向いた。

 今にも歩き出そうとした時、もう一度振り返った。何かを言おうと口を開けたがすぐに閉じられる。すべてが終わってから、ということだろうか。

 一歩、一歩と彼女は進む。もう振り返らない。その足は決められた道をまっすぐに歩いていく。

「すみません、少しよろしいでしょうか。旦那様に用事があるみたいなのですが……」

 その時だ。外回りの警護の者が中に入ってきた。その後ろには二人の若い男がいた。見たことが無い顔だ。新入りの衛士だろうか。

「後にしろ。今大事な……」

 気がついた。

 気がついてしまった。

 その男が何かを握っていることを。それが何かを理解すると、カラハは駆け出した。だがもう遅い――男は手にした弓に矢をつがえると弦を引いた。

 シュッ

 何かが横を通り過ぎる。風を裂くような音を伴って。そして続く絶叫。

「護衛は任せたぞ」

 ミズナギに言伝をすると、カラハは男の内一人に肉薄した。そのまま腰の刀を抜く。そして横に一閃――男には反応する暇さえない。

 一人目が倒れるのを確認する前に、彼はもう二人目の男の元へと向かった。

 さすがに二人目は冷静だった。既に弓を捨て代わりに短剣を握っている。カラハは刀で横に薙いだ。男は後ろに下がってそれをやり過ごす。そこにカラハの追撃、男はこれを短剣でいなしつつ、少し距離をとって対処した。

「二人ならまだしも、一人で敵う相手じゃないぞ?」

 男は何の反応も示さない。身じろぎ一つしない。余裕や恐怖といった感情も何も感じられない。むしろ見ているこちらの方が気味が悪い。

 対峙する二人――先に動いたのは男の方だった。男はカラハの元へ駆けだした。勢いを殺さずに短剣をカラハに突き出してくる。カラハは右に回り込んで。男の反応は早かった。男は素早くカラハとの距離を詰めると、短剣を横に振るった。カラハは後ろに飛んでこれを躱す。しかし、男はさらに距離を詰めた。着地を狙う気だ。

 瞬時に避けられないと判断したカラハは、着地するとそのまま一歩踏み込んだ。脇腹に痛みを感じつつ、低い姿勢でさらに踏み込んで男の懐に入る。そしてその姿勢から伸びあがるように男を下から上に斬った。

 吹き上がる鮮血――男はそのまま倒れた。

 男が倒れるのを確認すると、カラハは改めて部屋の様子を確認した。

 ミズナギが守っていたのかセレーネには問題はない。しかしそれ以外は無傷、といわけにはいかなかった。

 大星祈師は三本の矢が刺さっている。とても動ける状態じゃない。幸いなのはいずれも急所が避けられており死の心配はない。その背後の彼女の両親は軽傷のようだ。もう続けられない。儀式は中止だ。

「ここは私に任せてください。貴方は外の衛士を呼んできてください」

 ミズナギは大星祈師の元へといこうとした。その腕をカラハが掴む。斬られたといってもその傷は浅い。俺も行ける。しかし、

「さっきは貴方が命令したでしょう? 今度は私の番です。大人しく従ってくださいね」

 ミズナギは手を振りほどくとそのまま行ってしまった。残されたカラハは苦笑した。こういわれては仕方ない。おとなしく従うしかない。立ち上がると、部屋をゆっくりと出て行った。


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