4話
星祈師とは、星見術を身に着けた人々のことである。
千人はいると言われ、普段は北の山脈に集落を形成している。そこから山に登って星を見たり、このように貴族のもとに仕官してくることもある。しかし、誰も都に来ることができるわけではない。来ることができるのは大星祈師と呼ばれる一部の者に限られる。
衛士に案内された部屋は質素なものだった。机が一つと椅子が一つ。その他には何もない。これは彼自ら希望したらしい。
そしてその椅子に初老の男が座っていた。一見するとどこにでもいそうな老人だ。しかし、そうではないことは重々承知。
「話は聞いているよ。どうしたんだい」
ポロスの様な威圧的な態度は無く、暖かく歓迎するような雰囲気を醸し出していた。カラハとミズナギは邪魔にならないように後ろに下がった。
「今日は遠路からありがとうございます。ですがこのようなもてなししかできずに……」
「緊張してるかね?」
「いえ、そんなこと……」
「無理をしなくてよい。顔を見ればわかる」
セレーネはなおも弁解しようと、言葉を探していたが観念すると小さくうなずいた。
今日行われるのは彼女の凶星を払う儀式だ。詳しいことはカラハも知らないが、凶星を持つものが十五の年のときにのみ行うことができる。
凶星の持つ災厄を払うことのできる唯一の手段であり、これを逃すと一生払う機会は無くなってしまう。
「よく来るんだよ。儀式の前に私の所に。そして誰でも始まる前には君の様な顔をしていたよ」
こんなことには慣れているのだろう。彼の表情は穏やかだった。
「でも全て何事もなく終わった。大丈夫だよ。すぐに終わるから任せなさい」
どこにでもいそうな老人のように笑う。気のせいか、セレーネの表情が少し和らいだ気がした。
毎回皆をこんな風に照らしているのだろう。
(俺も……)
俺もあんな風にできれば。
従者として幼いころから彼女のことは知っている。だが、それでもまだわからないこともある。
どんな時にどんな言葉をかけたら喜ぶのか。安心させるためにはどうしたらいいか――わからないことだらけだ。
「やっぱり慣れている人は違うねぇ」
ミズナギが感心したかのように呟く。ランスも同じようなことを考えているようだ。
「ああ、俺は未だにセレーネ様を理解していないのかもしれないな」
「それでいいんじゃないですかね。あなたの隣に常に考えを全部わかる人がいるんですよ? そんな気持ち悪いこと望みますか? 少なくとも私は嫌ですね」
ミズナギが不思議そうな顔をすると渋々といった感じで付け足す。
「要するに、全てをできなくてもいいんですよ。君も私も従者以上のことはする必要はないってことですよ」
「でも俺はあの恩を返すと……」
「難しく考えると毒ですよ? ほどよくやっていれば大丈夫ですから。さあ、あちら様も終わったみたいですよ」
見ると、セレーネがこちらに歩いてきている。
(すべてはできなくていい、か)
本当にそうだろうか。
どうしてもそれには同意できなかった。できることが多い方がいいに違いない。いざという時にはすぐに動ける。どんなことにも対応できる。
カラハはずっとその意味を考えていた。




