第五話 事件の終焉、後の祭り
事件の終焉、後の祭り
あの戦いのあと、俺はすぐさまある人物たちの下に向かった。
「おい。てめぇらだろ? こんな事件を引き起こしたのはよ」
そこには二人の影、昨日俺に喧嘩を売ってきた、情報処理室でこそこそとしていたやつらだ。
システムが不調だという考えは元からなかった。
なら、誰かがそのシステムを弄ったに違いない。
だが、そんな事をする奴らは一体誰なのか。
あいつが今日戦うとわかっていて、尚且つあいつに恨みを持っている奴。
「すぐにわかったよ。あいつが転入してきた時にボコボコにされて恨んでいるってな」
そう、こいつらには動機がある。証拠だってある。
「は! それがなんだって言うんだよ。あいつが死んでねぇんだし、関係ないだろ?」
あ? 本当にそう思ってんのかよ。
「はは、でも、傑作だよな。あいつあんなに傷ついてさ! 何が麒麟児だよ! 雑魚じゃねぇか!!」
プチンッ
何かが切れるような音がする。
ああ、俺の堪忍袋か。
気づいた瞬間、俺は男どもを殴っていた。
「いってぇな!! テメェ!! 俺がどういう奴か知ってんのかよ!!」
知らねぇよ。お前がどういうやつかなんて。
だけどな、
「テメェらがどんな立場でも、俺はこうしてたさ。テメェらはこうならなきゃいけないんだ。人の命が失いかけたのに、笑っているような奴に生きてる資格はねぇよ」
男たちは勝ち誇ったように未だに笑っていた。
気に食わねぇ。その顔が。その腐れ切った心が。
「く、ククク、俺の親父はな、国家議員なんだよ。お前なんて一瞬で消せるような存在なんだよ!!」
だから?
「死ね!! 国に殺されてしまえ!!」
それがどうしたんだよ。
国? 議員?
みんな、人間が作った欺瞞だろ?
「いいぜ。やってみろよ。けど、ここから生きて帰れると思うなよ?」
俺はカードを一枚手に取る。
「お、お前! 現実世界でカードを使うつもりか!!」
これは禁忌。現実にミラーワールドの物質を召喚するのは絶対にやってはいけないことだ。
だが、それがどうした。
世界のクズを潰すにはこれくらいしないとな。
カードを投げ、謳う。
「ジェネレー――」
言う途中で膝カックンをされて俺はバランスを崩した。
「おわッ!」
首謀者を見ると、そこには物化がいた。
「何すんだよ!」
「それは私のセリフだ!! お前は何をしようとしているんだ!」
どうやら、ご機嫌斜めな物化は俺の行動を見てさらに怒っているらしい。
「いや、こいつらがさっきの事件を起こしたってわかったから――」
「だから、カードを使おうとした? ふざけるのも大概にしろ。そういう時は教師に頼むんだ。冷静にならんか、馬鹿者」
俺の頭に正義の鉄槌がかまされた。
うわ、マジで痛い。
だけど、おかげで冷静になれた。
「それで? こいつらが張本人というわけか」
「勝手に決めつけ――」
「黙れ」
物化の人も殺せるような視線と声が男どもを震え上げる。
うわ、怖!!
「そうかそうか。お前たちのせいで死人が出そうになったと」
「だから、俺たちって決めつけ――」
「黙れ」
あー、もう物化に任せたほうが良さそうだな。
「じゃあ、無責任だけど俺は行くわ」
「わかった。安心しろ。こいつらは私が責任を持って叩き潰す」
あ、うん。よろしく。
俺は震えながらもその場を後にした。
あの事件のせいで明日の授業はなしだ。
校門も前に来て、俺は振り返る。
俺は学校が大嫌いだ。
いろんな奴がいて、いろんな考えを持った奴がいるから。
俺は人と協調するのは昔から無理だった。
俺は人と違うから。昔から何でも出来てしまったから。何でも見えてしまったから。
「どこにでも、ああいった奴はいるんだな」
誰に言うでもなく言った言葉に答えが帰ってきた。
「何が?」
その声には聞き覚えがあり、振り返る。
「三毛菜……お前、体は?」
「ふん、大丈夫。私を誰だと思っているの」
「さすが、麒麟児。人とは違い、優秀だ」
皮肉混じりに言ったのに三毛菜は得意げだった。
「ふふん。そうだよ」
「ったく。そこは嫌がれよ」
だが、そう言っている俺ですら、笑っていた。
「あんたね。少しは心配したら?」
「ばっか、お前みたいな奴がそう簡単に死ぬかよ」
似ている二人だからこそ。話さなくてもわかることがある。
「お前も帰るのか?」
「当たり前でしょ? まあ、ホテルも飽きたんだけど、そこ以外に行けないし」
「は? お前、家は?」
「あると思う?」
まあ、人生とはそういうものの連続だ。
「はぁ。じゃあ、俺んち来るか? 妹が帰ってくるかもしれないけど」
「え? いいの?」
誰かと誰かが出会って、
「ああ、いいよ。それにホテルも自腹なんだろ?」
「うん……」
誰かと誰かが分かり合って、
「なら来いよ。お前に毎日弁当食われるのは尺じゃない」
「なっ……悪かったわね!!」
人生の花が咲くのだ。
そうやって、人生のネジは回っていく。
何事もなく進む世界なんてものはない。
何かがあって、何かが進んで、何かが戻るのだ。
世界とは、人生とはそうやってできている。
突然の終わりですが、最後まで見てくださった方。ありがとうございます。
本当はもっと進めようかとも思ったのですが、ここで終わるのが無難だと思いそうさせてもらいました。
次回作は考えておりますし、今書いている作品も進めようと思います。
次回作は、なろう大賞に応募しようと考えています。
もし、そちらでも出会えたら応援よろしくお願いします。
それでは、この主人公たちの今後を祈って
――乾杯