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黒髪の少年

大分投稿に時間が……

時間軸は、大きくなったレンがメインになります。

聖都、ヴェルディア皇国。悪魔を倒す力を持つ払魔師<エクソシスト>。払魔師達が集う組織、天使旅団<エンジェルブリゲイド>の本拠地である。


「ゴルアァ!!待ちやがれ!!」


城下町の路地。1人の、黒髪の少年が全力疾走していた。前にいるのは、一匹の猫である。

少年は、ひたすら猫を追いかけていた。狭い路地を走り抜き、色んな人にぶつかって軽く謝り、路地に置かれていた木箱に衝突して壊してしまいながらも少年は走り続けた。そして、猫を行き止まりまで追い詰めた。


「よし……、こっち、こい!!」


少年は、息を落ち着かせながら猫に近付く。その瞬間、猫は少年に飛びかかった。少年の顔面は、見事に猫の踏み台にされた。少年は、猫の勢いに負けて後ろに倒れ込んだ。


「いってぇ……」


少年の目の前には人影があった。体を起こしてみると、目の前には見覚えのあるセミロングの金色の髪の少女の姿があった。


「もう!レン!猫探しでなんで物壊すのよ!!」

「ル、ルーシェ……」


猫を抱き抱えている少女。ルーシェ・クロスフォードだ。


「にゃ〜」

「あー、よしよし。怖かったよねー?」

「にゃー♪」


猫は、見事にルーシェになついていた。


「はあ……」


黒髪の少年。レン・グラスティアは溜め息をついた。


*


「もう!何回言っても破壊魔が治らないのね!」

「だって、あの猫すばしっこいから……」

「言い訳無用!!」


見事にレンはルーシェに尻を敷かれていた。


「今日は、久し振りにお義父さんが帰ってくるんだから……」


ルーシェの言葉に、ふてくされていたレンの気持ちが変わった。

義父。エドガー・クロスフォードは、天使旅団<エンジェル・ブリゲイド>に所属している払魔師だ。レンとルーシェは、二人とも悪魔の襲撃によって居場所を失っている。そこをエドガーに拾われて今に至る。


「レン、買い物手伝ってくれるよね?」

「ああ。」


二人は買い出しに向かった。


*


「今日は一杯作るわよ♪」

「オヤジのことだから、料理より酒じゃね?」

「そうだけど……。払魔師のお仕事は大変だから、しっかり食べさせないと……」


買い物帰り、二人はそんな会話をしていた。

エドガーは、その実力こそは払魔師の頂点。聖払魔師<セイクリッド・エクソシスト>の称号に相応しいが、生活態度は酒に煙草に入り浸るダメ人間そのものである。


「今頃、もう酒飲んでんじゃねぇか?」

「あっ!早くて夕方には戻るんだった!」


二人は急いで家に向かった。


*


家に帰ると、やはりと言うかなんと言うか。義父のエドガーは帰宅しており、テーブルの上に酒瓶を何本も並べてソファーにグーダラしていた。


「オヤジ、テメェ……」

「お〜、ルーシェにレンか〜」


既にかなり飲んでいるのか、酔っ払ってるエドガーが気だるく声を掛けた。


「お帰り、お義父さん。御飯作るね?」

「あー、俺の分はいいや。飲めりゃいいや。作るってんならつまみを……」

「いい加減にしろよオヤジ!!」


帰宅すれば煙草と酒。帰宅の報せが届く度に、ルーシェは夕食を作ろうと張り切るがいつもそれは失敗に終わる。ルーシェはいつも気丈に振る舞うが、家族で食事が出来なくて落ち込んでいる事をレンは知っていた。


「あー?ンだよ……」

「いっつもいっつも、酒酒酒!!たまにはルーシェのメシ食ってやれよ!!」


レンは思わずエドガーの胸ぐらを掴んで叫んだ。


「レ、レン!?」

「なんだー?誰がお前らを養ってンだ?あぁ!?」


レン!と叫んで、ルーシェはレンを制した。


「お義父さんごめんなさい。レンには、キツく言っておくから……」


ルーシェは、そのままレンを引っ張って二階へ向かった。その後、レンはルーシェにとびっきり叱られた。


*


(ルーシェのやつ、とことんオヤジに甘いよな……)


翌朝。日が上り始める早朝にて、レンは一人木刀の素振りをしていた。木刀の素振りは彼の日課に入っている。早朝に起きてお手製の木刀を素振りし、決めた回数に達したら一時休憩。もう一度決めた回数分の素振りをするの繰り返しである。


「おうおうおう。こんな朝から素振りたぁ、精がでますなぁ坊主。」


突如聞こえた声に、レンは素振りを止めて振り向く。そこには、煙草を吸っているエドガーの姿があった。


「邪魔すんなよオヤジ。」

「昨日はあんなに食いついたのに、えらく大人しいな。まっ、お嬢様にあんだけ怒られりゃバカなお前さんでも分かるか。」


瞬間、レンは木刀をエドガーに向けて投げた。だが、エドガーはこちらに見向きもせず飛んでくる木刀を片手だけで掴み取った。


「いきなりぶん投げんなよ……。当たったらどうすんだよ。」


掴み取った木刀を、そのまま地面に突き刺す様にエドガーは投げた。そして地面に突き刺さった木刀を、レンは抜いた。


「払魔師に、なりてぇのか?」

「ああ。そうだよ。」


レンの素振りは、悪魔を退治する払魔師になりたい意思によるものだ。自分の両親。ルーシェの両親を奪った悪魔への仇討ち。


そして親を失った自分達を養ってくれているエドガーに、少しでも恩返しをしたい。


その二つの理由が、レンに払魔師になるという答えを導いたのだ。


「ははは!!無理だ無理。お前さんで払魔師になれるなら、世界中の人間全てが払魔師になってるっつーの。」

「うるせぇ!!絶対に払魔師になってやるからな!!」


豪快に笑い出したエドガーに、レンはつい噛み付く様に叫んだ。

そんな二人のやり取りを、ルーシェが自室の窓からこっそりと見ていた事は、本人達は知らない。

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