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『バレット・ファントム ~仮想銃姫の覚醒~』  作者: 蒼狐
第2部 弾道の女王

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第15話 ガルドの復讐

 雪華との激闘を終えた直後、Crown Coliseumの第二試合アリーナは、再び緊張に包まれた。


 Rei Phantomは、浮遊廃墟マップ「Sky Ruins」の中央部に立っていた。

 銀髪が強風に激しく乱れ、雨水がまだ滴り落ちる。左肩に残る雪華の弾による痛みが、じんじんと仮想神経を焼いていた。HPは回復アイテムで65%まで戻っていたが、身体の芯に残る疲労は重くのしかかっていた。


 義眼の赤い十字が、激しく明滅を続けている。

 0.3秒の先読みは、今や1.5秒近くまで伸び、視界が現実と仮想で激しく切り替わる。頭痛のような疼きが、脳の奥深くまで響いていた。


 アナウンスがアリーナ全体に響き渡る。


「第二試合!

 Rei Phantom vs ガルド!

 開始!」


 瞬間、地面が大きく震えた。


 ドン……ドン……ドン……


 重く、圧倒的な足音。

 暗い影の中から、巨漢の姿がゆっくりと現れた。


 ガルド。


 予選で零に敗れた巨漢タンクは、装甲をさらに厚く強化し、重機関銃「Gatling Crusher」を右手に握っていた。左腕の大型タクティカルシールドは、予選時よりも巨大で、表面に無数の傷跡が刻まれている。


 ガルドの低く太い声が、雨音を圧して響いた。


「ようやく会えたな……一瞬の幽霊」


 その声には、明確な復讐心と、戦士としての強い執念が込められていた。


 零は二挺のUSP「Phantom Edge」を構え、静かにガルドを見つめた。


 ——来た。


 予選で越えたはずの壁が、再び目の前に立ちはだかっている。


 ガルドの巨体が一歩踏み出すたび、高架橋の残骸が震える。

 重機関銃の回転音が、低くうなるように響き始める。


 ガガガガガガッ!!


 重機関銃の猛烈な連射音が雨を圧倒する。12.7mm相当の大型弾が、雨のヴェールを切り裂きながら零の位置へ殺到する。


 零は即座に低く身を翻し、浮遊するコンクリート片の陰に飛び込んだ。


 弾がコンクリートを粉砕し、破片が雨に混じって飛び散る。跳弾が耳元を鋭くかすめ、仮想の痛みが頰と肩を焼く。


 零の心臓が激しく鳴る。


 この圧倒的な火力と耐久力。

 予選で一度勝った相手とはいえ、恐怖が胸を締め付ける。


 しかし、同時に——燃えていた。


 この緊張。この「死ぬかもしれない」という感覚。

 現実では味わえなかった、極限の戦いの昂ぶり。


 零は歯を食いしばり、冷たい微笑を浮かべた。


 「来い……ガルド」


 彼女は低くダッシュし、ガルドの正面に飛び出した。


 二挺のUSPを構え、至近距離で猛烈な連射を開始した。


 パン! パン! パン! パン! パン! パン!


 サイレンサー付きの小さな乾いた音が雨に紛れる。9mm弾がガルドの装甲の継ぎ目に集中する。装甲にヒビが入り、HPが少しずつ減少する。


 ガルドが怒りの咆哮を上げた。


「まだそんな豆鉄砲で俺に勝てると思うか!」


 彼はシールドを振り回し、零を薙ぎ払おうとする。


 零は低く滑り込み、ガルドの死角へ回り込んだ。


 光学迷彩を発動。


 体が雨と浮遊廃墟の影に溶け込むように透明化する。


 ガルドの動きが一瞬止まった。


「またそのトリックか!」


 ガルドはシールドを構えたまま、重機関銃を乱射し続ける。


 ガガガガガガッ!!


 大型弾が無差別に飛び、浮遊ブロックを破壊していく。


 零は迷彩の効果時間を最大限に活かし、ガルドの左側面へ回り込んだ。


 効果が切れる直前、彼女は二挺のUSPをガルドの側面に押しつけ、トリガーを引き続けた。


 パン! パン! パン! パン! パン! パン! パン! パン!


 八連射の猛攻。

 9mm弾が装甲の継ぎ目をえぐり、ガルドの背中を貫通する。


 ガルドの巨体が大きくよろめいた。


「ぐああっ!」


 彼は振り向き、重機関銃を零に向けた。


 零は即座に低く滑り込み、ガルドの脚を狙って連射した。


 パン! パン! パン!


 脚部の関節部に命中。ガルドの動きが一瞬鈍る。


 零はさらに距離を詰め、ガルドの胸部に飛びついた。


 至近距離。二刀流の極み。


 左手と右手のUSPが交互に火を噴き続ける。


 パン! パン! パン! パン! パン! パン!


 弾が装甲を削り、ガルドのHPを容赦なく削っていく。


 ガルドはシールドで零を押し潰そうとしたが、零は体を翻してかわし、背後に回り込んだ。


 再び連射。


 ガルドのHPが、ついに35%を切った。


 巨漢は初めて、明確な焦りの声を上げた。


「この小娘……前より強くなってるじゃないか!」


 ガルドは最後の抵抗として、重機関銃をフル回転させながら突進してきた。


 ガガガガガガガガッ!!


 弾の嵐が零を襲う。


 零は全力でダッシュし、ガルドの死角を突きながら回避。

 銀髪が激しく舞い、息が荒くなる。


 HPは残り41%。まだ余裕はあるが、戦いは長引けば長引くほど不利になる。


 零の心に、複雑な感情が渦巻く。


 ガルドは強い。

 予選の時より、さらに強化されている。

 しかし、零は成長した。

 雪華との戦いで得た経験、Void Railgunの精度、二刀流の精度——すべてが、今の零を支えている。


 零は歯を食いしばり、最後の力を振り絞った。


 彼女はガルドの正面に飛び出し、二挺のUSPを同時に顔面のバイザー隙間に押しつけ、トリガーを引き続けた。


 パン! パン! パン! パン! パン! パン! パン!


 連続十発以上の猛射。


 ガルドの頭部が激しく後ろにのけぞり、HPがゼロに達した。


 巨体がゆっくりと崩れ落ち、浮遊廃墟の残骸に倒れ込む。


 【プレイヤー「ガルド」を撃破しました】


 アリーナに、静けさが戻った。


 零は膝をつき、荒い息を繰り返した。


 両手のUSPが熱を帯び、指が痺れている。

 銀髪が汗と雨水で顔に張り付き、左目に浮かぶ赤い十字が激しく明滅していた。


 HPは残り29%。瀕死に近い。


 零はゆっくりと立ち上がり、倒れたガルドの死体を見下ろした。


 ——勝った。


 再び、ガルドの壁を越えた。


 この勝利は、零に確かな自信を与えた。


 しかし、同時に、義眼の疼きが限界を超えていた。


 視界が激しく歪み、現実の部屋が強く重なる。


 零は頭を抱え、歯を食いしばった。


 ——まだ、来るな。


 銀髪の少女は、静かに次の戦場へと歩みを進めた。


 仮想の銃姫は、強大な復讐者を越えた後も、謎の影に包まれ続けていた。


(第15話 終わり)

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