第三十九話:未来を紡ぐ日々
東京の夜景を背景に、葵へプロポーズし、彼女が涙ながらにそれを受け入れてくれたあの日から、俺たちの世界は、一段と輝きを増した。左手の薬指に輝く指輪は、俺たちの永遠の誓いを象徴している。会社での成功ももちろん嬉しいが、何よりも葵と生涯を共にできるという確かな未来が、俺の心を何よりも満たしてくれた。
プロポーズの翌日、俺たちはまず、社長に報告に行った。社長は、俺たちの報告を聞くと、少し驚いたような顔をした後、満面の笑みを浮かべた。
「そうか、そうか! やはりそうなると思っていたよ! 吉野くん、葵ちゃん、本当におめでとう!」
社長は、俺たちの手を握り、心から祝福してくれた。彼の温かい言葉に、俺と葵は、改めて安堵と感謝の気持ちでいっぱいになった。社長は、葵を大切に思っているからこそ、俺たちの未来を真剣に願ってくれているのだ。
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結婚に向けて、俺たちは具体的な準備を進め始めた。まずは、両家への挨拶だ。葵の両親、そして俺の親にも、改めて俺たちの結婚を報告し、承認を得る必要がある。
「吉野さん、私のお母さん、きっと喜んでくれますよ!」
葵は、少し緊張しながらも、明るい声でそう言った。彼女の純粋な笑顔を見ていると、俺の不安も少し和らいだ。俺たちは、お互いの家族に、これまで支えてくれた感謝の気持ちと、そして二人で未来を築いていく決意を伝えようと心に決めた。
同時に、新居についても検討を始めた。葵が大学を卒業するまではまだ時間があるが、将来の生活を具体的にイメージすることで、俺たちの絆はより深まる。葵は、間取りやインテリアについて、目を輝かせながら楽しそうに話してくれる。そんな彼女の姿を見ていると、俺の心も温かい光に包まれた。
「吉野さん、キッチンは、やっぱり広い方がいいですよね! 私、吉野さんのために、美味しい料理をたくさん作ってあげたいんです!」
葵は、そう言って、俺の腕にそっとしがみついてきた。その甘えるような仕草に、俺の頬が緩む。
「ああ、楽しみだな。葵ちゃんの料理なら、毎日でも食べたいよ」
俺たちは、結婚情報誌を眺めたり、インターネットで物件を探したり、二人で過ごす未来を具体的に想像していく。それら一つ一つの準備が、俺たちにとって、かけがえのない思い出となっていった。
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会社での仕事も、順調に進んでいた。『ハーモニー・ライフ・ソリューション』プロジェクトは、正式に始動し、大きな注目を集めている。俺は、プロジェクトリーダーとして、多忙な日々を送っていたが、その全てが、葵との未来に繋がっていると思うと、どんな困難も乗り越えられた。
部署のメンバーたちも、俺と葵の結婚を心から祝福してくれた。
「吉野室長、葵さん、本当におめでとうございます! いつか、私もあんな素敵なプロポーズされたいです!」
小川莉子が、はしゃぐようにそう言った。高瀬さんも、俺たちの幸せを願い、静かに見守ってくれる。彼女の複雑な感情に、俺は今でも申し訳なさを感じるが、葵への一途な愛情は、何一つ揺るがなかった。
葵は、学業と結婚準備、そして俺の仕事のサポートを両立させながら、毎日を充実させている。彼女の隣にいると、俺も自然と笑顔になれる。彼女の存在は、俺の人生の全てを変え、そして、無限の可能性を与えてくれた。
新宿の街を二人で歩く。夕暮れの空が、オレンジ色に染まり、高層ビル群がシルエットとなって浮かび上がる。俺の隣には、愛する葵がいる。
「吉野さん、私、吉野さんと結婚できて、本当に幸せです!」
葵は、そう言って、俺の腕にそっと抱きついてきた。
「俺もだよ、葵ちゃん。君と出会えて、本当に幸せだ」
俺たちは、未来への希望を胸に、手を取り合って歩き続ける。これから、どんな困難が待ち受けているかは分からない。だが、俺たち二人なら、どんな壁も乗り越えられる。そう、確信できた。
未来を紡ぐ日々は、喜びと期待に満ちている。俺たちの愛は、これからも、様々な経験を経て、より深く、より確かなものへと成長していくことだろう。




