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第三十話:「フェスが終わって、王者の賞品がとんでもない件」


「え…嘘でしょ」


茜は頭上の王冠を呆然と見上げていた。ダンスバトルの優勝者として選ばれてしまった自分が、信じられない。ステッキを振って踊っただけで、まさか勝つとは。


「おい、茜! お前、優勝しちゃったぞ!」


アレックスがピンクのアイドル衣装をバサバサ振りながら駆け寄ってくる。その表情は、驚きと嫉妬が入り混じった複雑なものだ。


「いや、こんなのおかしいでしょ! 私、ただ踊ってただけだし、しかも玉を投げただけで…」


茜は焦って王冠を外そうとするが、まるで強力な接着剤でくっついているかのようにびくともしない。


「王者の王冠は、逃げられない運命ってことさ!」


神様が再び現れ、軽快に拍手しながら茜の前に立った。その顔には、いつものズボラ(ズボラとは言わないけど!)な微笑みが浮かんでいる。


「さて、王者になったお前には、もちろんご褒美がある」


茜の心臓がドキッとした。ご褒美? でも、神様のことだからどうせ変なものに違いない…そう思いつつ、期待半分、不安半分で彼女は続きを待った。


「…で、そのご褒美って何ですか?」


茜が神様に問いかけると、彼はニヤリと笑い、ポケットから小さな巻物を取り出した。


「フェスの王者には、全ての願いを一つだけ叶える権利がある!」


「えっ!? 願い…叶えてくれるの!?」


茜の脳内に突然、あらゆる願いが浮かび上がる。元の世界に帰る、豪邸での暮らし、無限のお金…いろいろなことが一気に頭を駆け巡った。


「でも、ちょっと待てよ」


アレックスが首をかしげて口を挟んだ。


「こういうのって、普通どこかにトリックがあるんじゃないか? 願いを叶えると言っておいて、実際には何か裏が…」


「ふむ、それも一理ある」


神様は目を細め、さらに巻物を広げた。


「ただし…ひとつだけ条件がある。願いを叶えたら、この異世界から永遠に出られなくなる、ということだ」


「…は?」


茜とアレックスが同時に声を上げた。異世界に永遠に?


「いやいやいや、そんなの詐欺じゃない! 願いを叶えても、元の世界に帰れないって、それ本末転倒じゃないの!」


茜が叫ぶと、神様は肩をすくめて答えた。


「そういうものだ。この世界で幸せになれば、それでいいじゃないか? それに、お前が求めるものは全て手に入るんだから、何も問題はないだろ?」


「いや、めちゃくちゃ問題あるでしょ! 帰りたいんだけど!」


茜は神様に詰め寄ったが、彼は飄々としたまま、それ以上何も言わない。これ以上の交渉は無駄だと悟った彼女は、深く息を吐いた。


「どうする、茜? その願いを使うのか?」


アレックスが心配そうに問いかけてくる。茜は王冠に手をやり、しばらく考え込んだ。確かに、全ての願いが叶うなら夢のようだ。でも、永遠にこの異世界で暮らすことになるなんて、そんなの考えられない。


「…いや、やめておくわ」


茜は巻物を神様に突き返した。


「私は元の世界に帰りたいから」


その言葉に、神様は満足げに頷いた。


「ふむ、賢明な判断だ。だが、これでフェスは終了だな。王者には特別な褒美はないが、全員に参加賞が配られる!」


神様が指をパチンと鳴らすと、周囲にいる全ての参加者の手に、小さな箱が現れた。


「これでフェスは無事に終了だ! 皆、お疲れ様!」


参加者たちは歓声を上げ、箱を開けてはそれぞれのお土産を見て楽しんでいる。茜は少しホッとしながらも、自分の箱を開けた。


「…え? これは…」


中から出てきたのは、小さなキーホルダーだった。それはピンク色の玉を模したもので、フェスの象徴のようなデザインがされている。


「うーん、まあ、記念品って感じか」


茜はそれを手に取り、何となく感慨深い思いで眺めた。これでフェスは終わり、全てが元に戻る――そう思ったその時。


「ちょっと待って!」


突然、アレックスが叫び、茜の前に立ちはだかった。


「これって、ただのキーホルダーじゃないぞ! 何か光ってる!」


彼の指摘通り、茜の手の中のキーホルダーが淡く光り始めた。その光は徐々に強くなり、やがて全身を包み込むほどの輝きに。


「これってまさか…!」


茜が驚きの声を上げると、神様がニヤリと笑った。


「フェスの王者にはやはり、特別なご褒美があったみたいだな。さて、次はどこへ飛ばされるか…」


その言葉を最後に、茜の意識はピンク色の光に飲み込まれ、次の瞬間には異世界の風景が消え去っていた。


+++++


次回予告:「よくよく考えたら、元の世界の私が火葬されてる件」

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