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第十四話:「勇者、魔法のホウキでひとっ飛びな件」


「次の任務はこれだ」


またもや王様がリストを手渡してきた。茜とアレックスは同時にため息をついた。


「魔法のホウキの試運転?」


「いやいや、これって完全に魔女っぽいじゃない? 私たち勇者なのに、ホウキに乗って空を飛ぶってどういうこと?」


茜は王様にツッコむが、彼はどこ吹く風。


「これは大事な任務だよ。魔法のホウキを試運転して、次世代の移動手段として広めるんだ」


「勇者がホウキで移動手段のPRって……」


茜は再び絶望感を覚えたが、アレックスは目を輝かせていた。


「ホウキに乗って空を飛ぶって、最高じゃん! 夢だったんだよ! これで空を自由に駆け回るなんて、ロマンだろ!」


「何がロマンよ……」


そうは言いながらも、茜も少しだけ興味を持っていた。空を飛ぶって、どんな感じなのだろう。勇者としてのプライドはさておき、一度は試してみたいという気持ちもあった。


+++++


その日の午後、茜とアレックスは魔法のホウキを受け取るために魔法使いの元を訪れていた。年季の入った工房には、ずらりとホウキが並んでいる。どれも古風で、いかにも「魔女が使いそうな」感じだ。


「おお、これが魔法のホウキか!」


アレックスは早速手に取って、嬉しそうにホウキを振り回す。


「それ、大丈夫なの?」と茜が不安そうに見守っていると、工房の奥から現れたのは、妖艶な雰囲気を纏った女性の魔法使いだった。胸元が大胆に開いたローブを着ており、流れるような金髪が印象的だ。


「いらっしゃい、勇者のお二人。ホウキの試運転に来たのね?」


彼女の甘い声に、アレックスは少し赤面している。


「そ、そうです! 今日はその……ホウキの試運転を……」


「ふふ、じゃあさっそく始めましょうか」


茜はその様子を見て、少しモヤモヤした気分になっていた。


「この人、魔法使いっぽくないな……」と内心思いながら、魔法使いの女性が渡してきたホウキを手に取った。


+++++


試運転が始まった。茜とアレックスはホウキにまたがり、空へ飛び立つ準備をする。


「大丈夫かな……」


「大丈夫だって、楽勝だよ!」と、アレックスは勢いよくホウキにまたがった。次の瞬間、ホウキは勢いよく空へと舞い上がった。


「うわああ! 高い、高い!」


アレックスが楽しそうに空を飛び回っているのを見て、茜もホウキに乗り込む。


「こうして……飛び立つ!」


しかし、茜がホウキにまたがった瞬間、ホウキは何故かバランスを崩し、急降下してしまった。


「ちょっ! えええ!」


茜は慌ててホウキを操作しようとするが、ホウキは言うことを聞かず、ぐるぐると宙を舞い、あちこちにぶつかりそうになる。次の瞬間、アレックスのホウキにぶつかり、二人は接近しすぎたまま空中で並走する羽目になった。


「ちょっと、近すぎる!」


「ごめん! 操作が難しいんだ!」


二人のホウキがギリギリの距離で並走しながら、茜の体がアレックスにぶつかってしまう。アレックスは慌ててバランスを取ろうとするが、ホウキはさらに不安定に揺れる。


「や、やばい! このままじゃ落ちる!」


「もう! しっかりしてよ!」


茜が怒鳴ると、アレックスはますます顔を赤くしていた。二人の距離が異様に近いまま、茜はふとアレックスの腕に触れてしまう。


「……あ」


「え、今……触った?」


「いや、違う! 操作してただけだって!」


茜は慌てて否定するが、アレックスはますます赤面している。お互いに妙な雰囲気が流れたまま、ホウキはそのまま勢いよく再び上昇した。


+++++


やっとのことで地上に降り立つと、茜とアレックスは疲れ果てて座り込んでしまった。


「これ……勇者の試練って言えるのかな……?」


「いや、意外と良い経験だったかも……」


アレックスはまだ少し興奮気味だが、茜は完全に放心状態だった。


「次こそ、まともな任務が待ってるといいんだけど……」


+++++


次回予告:「勇者、秘密結社でまさかのドキドキだった件」

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