雲が好きなんだ〜空にドラゴンと龍を見た話〜
雲が好き!
※ 武 頼庵(藤谷 K介)先生 主催の【24夏のエッセイ祭り】参加作品です
※noteにも転載しております。
空は好きです。
朝焼け、夕焼けや夜空とのグラデーションはもちろん。
そこを廻る太陽も。
色とかたちと、サイズを変貌える月も。
弱い視力には、星座を描くにも脆弱すぎる星たちも。
そして、私は雲が好きです。
好きになったのはいつからだか?
でも、そのきっかけはわかります。
雲を、「立体」でとらえるようになってから。
星座のせいか。プラネタリウムのように、星たちをはりつけた天井——広大な平面として、夜空を見てしまうもの。
だから、昼なかの空も。水色の画用紙に白い絵の具を塗りつけたみたいに、雲のことを見てしまっていたのです。
夜空はいまだに、天井として見てしまいますし。
雨雲のように、面として覆う雲もそう。
だけど、青空に浮かんだ、白くはっきりした輪郭と存在感をもつ雲。
あれを凝視し、その陰影からきちんと解析すれば。
雲は、たまらなく立体なのです。
入道雲って言うんですか?
あ、積乱雲とおなじなんだ?
あれを見るたびに、空は平面でなく、雲という立体を浮かべた空間だとわかるのです。
だから、雲が好き。
雲は、空を平面でなく空間だと、気づかせ直してくれるから。
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私が、いままで見た雲でとくに好きだったものがふたつ。
そのふたつに。
私はそれぞれ、ドラゴンと龍を見たのです。
台風の朝、おおきな雲が強い風で、たやすく目視できるほどの速さで流されていきました。
たくさんの、ごつごつした雲の塊が群れをなして、雄大に空を渡ってゆく。
そこに翼と尾を見たとき、私は空を埋めるドラゴンの大群に遭遇したのでした。
いや、じっさいに目にすることがあるなら、まさにこんな光景なのだろうなと思います。
空を渡るドラゴンの群れ。
この世界では目にできるはずのないものを、私は見せてもらったのです。
翼をはやした大トカゲのドラゴンだけではなく。
長い蛇のような体躯をもつ龍にも、逢えたことがあります。
あれ、飛行機雲なのかなぁ?
ふつう、飛行機雲って、アスファルトにチョークをひいたような、かすれたイメージなんですけど。
あれは、もっと鮮烈な存在感があって。太さや白さだけではなく、龍が鱗を逆立てた腹を見せて。こっちの地平線からむこうの地平線まで、アーチをかけながら両断していたのですから。
ささくれたような形状は、腹よりも背を思わせはしましたが。龍が背泳ぎのように飛ぶとは考えにくい(絵的に面白いですが)ので、たぶんあれは腹なのでしょう。
今まで見た、どの飛行機雲ともぜんぜんちがう。
平面の青空にひいた線ではない、蛇のような胴体をしたあの雲は、アーチをかけて空を両断する白龍の腹だったのです。
私はかつて、ドラゴンと龍を空に見ました。
それを見せてくれた雲が好き。
そして、雲を愛でるのを忘れなければきっと。
きっと、また。
私はいつか、ドラゴンや龍を目にすることができるでしょう。
空は見てて、飽きないですね。