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プロローグ 天野 瑠合
「―――今度はお母さんと離れないようにね」
そう言うと、あなたは踵を返してしまった。
あなたの目には子供である私なんて写っていないのは承知している。
だからその背中に向けて手は伸ばすだけで、私は何もできない。
待って。行かないで。そんな言葉すらも恥じらいの為に出せない。
あなたとの幸せな未来が視えた。
なんて言っても信じては貰えないのは分かっているから、決して言えないけど……
せめて――
「私の名前は天野 瑠合です」
何とか絞り出したか細い声も、周りの喧騒に飲み込まれてしまい、『彼』に届くことはない。
私 天野 瑠合の9年生きて初めての恋……初恋のプロローグはこうして完全敗北を迎えたのだった。