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俺と可愛い死神  作者: ヴルペル
俺から見た世界
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三十九日目

死神がいなくなって六日目

挿絵(By みてみん)

目が覚めるとポツポツと雨音が聞こえてくる。

ここの所毎日雨が降っている気がする。

雨音に耳を傾けながら体を起こす。少し冷たい風が雨にさらされてさらに冷たくなり俺の体にまとわりついてきた。


寒さに少しぶるっとして布団を被る。


(そろそろ羽毛布団の時期かな……)


そんなことを考えながら家を出る支度をした。

今日は土曜日なので仕事は休みだった。今日できる限り死神を探そうと心に決めていたのだ。


見つかるか分からないし、第一にもうお役目を終えて帰ったかもしれない。俺が探すこと自体が迷惑かもしれないが……

あまりにも呆気なく消えたので何かあったとしか思えなかった。


動きやすい格好に着替え、家を出た。


「死神が居そうな場所を徹底的に探す」


まず、俺は銭湯へ向かった。死神があれから何度か銭湯に行きたいと言っていたのを思い出し、もしかしたら通っているかもしれないと考えたからだ。


家が近いので直ぐに着いた。朝だということもあってか、人通りは少ない。

中に入ると死神を探すため、色々な場所を歩いて回った。

途中不審に思った店員さんから声をかけられたが、探し物をしているだけなのでと言うと、渋々引き下がってくれた。


「いない……」


次にゲームセンターに向かうことにした。もし隠れているとしたら人の数が多く、隠れやすいここだと思ったからだ。


UFOキャッチャー、音ゲー、プリクラ……はさすがに居ないか……


隅々まで探したが、見つからない。

なぜ俺はゲームセンターに行こうとしたのだろうか?今思えば死神は大きい音が苦手だった。


ゲームセンターは諦めて次の場所を探すことにした。


次は土手に来た。死神と写真を撮った場所なのでいると思ったのだ。


見晴らしが良く、見渡す限りいなさそうだった。


川の近くに降りると、女の子がしゃがみこんで草を眺めていた。

周りに親がいる気配がなく、その子だけがただ座っていた。


なにか違和感を感じ、近づいて話しかけてみた。


「お嬢ちゃんこんな所でどうしたの? あ、別に俺は怪しいものとかじゃなくてね? えっと、叫ばないでいてくれるとありがたいなーなんて」


俺の心配を他所に女の子は俺をしばらく見つめたあと顔がぱっと明るくなった。


「あ! お兄さんだ!」


「え?」


その子は前公園で怪我して泣いていた女の子だった。


「私ね! 今四葉のクローバーさがしてるの!」


元気よく足元の草むらをさして説明をしてくれた。

周りにはシロツメクサもあり、クローバーの群生も生えていた。

普段一通りが少ない場所にあるため、ここならクローバーが残ってそうだった。


「そうなんだ! 見つかるといいね」


「うんっ! 見つかったらぱぱにあげるんだ!」


「ぱぱに?」


「うんっ! いつも私のためにお仕事頑張ってくれてるから! いつもありがとう! って渡すの」


なんて健気なっ!! つい涙がこぼれそうになるのを抑えた。これは感動ものでしかない。


「一人で見つけるの大変なら俺も手伝おうか?」


そう言うと、女の子は首を大きく横に振った。


「うぅん、私が見つけなきゃだから大丈夫」


「そっかぁ……あ! 俺もなんだかクローバー探したくなってきたなー? よーっし!お兄さんはお兄さんで探しちゃおーっと」


明らかに嘘とわかるような説明口調で言い放ったあとクローバーを探しにかかる。


(この女の子の思い! 絶対ぱぱさんに届けてあげたい! だって! 絶対感動すると思うから!)


必死になってクローバーを探すと、一つだけ枚数が多いのを見つけた。


「あっ……!」


あったと叫びそうになったが、必死に抑えた。女の子にそこを見つけてもらおうと思ったのだ。


「あー、なんだかこの辺にありそうだなー。んー、でも俺はこっち探そうかなー? あそこに一個ありそうだけどなー」


そう言うと、女の子は耳をピクっと動かし、さっき俺が見つけた場所を探し始めた。

すると……


「!? あった! あったよ! お兄ちゃん!」


「え!? ほんとに!? どこにあったの?」


白々しく女の子に聞いてみるとさっき俺が探していた場所から見つけたらしい。

無事見つかって安堵していると女の子がクローバーを差し出してきた。


「え??」


「……だってお兄さんも探していたんでしょう? だから……」


なんて健気なっ!! 俺はいい言い訳を探していたがなかなか思いつかない!


「それは君が見つけたものだから君のだよ! 俺は今願い事がかなったから大丈夫! ぱぱに渡してあげて」


「え? いいの?」


「いいよ!」


「ありがとう! お兄さん優しいね!」


子供から行為を持たれることに対しての優越感と罪悪感が同時に押し寄せてきた。ロリコンじゃないからな!?

ロリコンじゃないからな!?!?


「そういえばお兄さん今日は猫ちゃんと一緒じゃないの?」


「え? あ!!」


すっかりクローバー探しに夢中になっており、本題を忘れていた。


「やばい! もうこんな時間! お嬢さんみつかってよかったね! 気をつけて帰るんだよ!」


そういうと、がむしゃらに死神を探しに駆け出した。

明日筋肉痛になるなと確信するほど走り、探し回った。


明日もお休みなので探す時間はあるが……今日探さないともう二度と会えなくなる気がして怖かった。


「死神! どこかにいてくれ!」


もうどこでもいいから会いたい気持ちでいっぱいになる。

日が暮れて夜になり、懐中電灯を持っていなかったので足元がよく見えなくなっていた。

携帯の充電も残り少ないので、今日は諦めてまた明日懐中電灯を持ってリベンジしようと心に決めた。


ボロボロになりながら帰宅する。


「ただいま……」


「おかえり!」


……え??


顔を上げるとそこには汚れて、毛並みもガサガサになった死神が居た。


体は痩せており、精一杯の笑顔で俺を出迎えてくれた。

いつもしていたように。


俺は勢いよく抱きしめ、泣いた。


「急に居なくなってごめんよ……」


お互い汚れていたこともあり、お風呂に浸かり、詳しくは後日聞くことにした。


今日は死神とまた会えたことの喜びで胸がいっぱいになった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!続きが気になった方は是非!評価とブックマークをよろしくお願い致します!また次回お会いしましょう!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 好きです。ストーリー構成が良いですね。こういうヒューマンドラマ好きです。立ち向かおうとする主人公、それを傍で支える黒猫姿の死神。死神が居なくなったシーンは、思わずうるっときました。 死神の…
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