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俺と可愛い死神  作者: ヴルペル
俺から見た世界
39/53

三十一日目

改めて書類を確認した俺はここはホワイトに違いないと決め込んだ。明日から本格的に仕事が始まるが、人間関係が上手く不安だ。ちゃんと笑えるように笑顔の練習しとこうかな……

挿絵(By みてみん)


「おはようございます!」


今日は初出勤の日だ。第一印象をいいものにしようと思い、笑顔で元気よく社内に居る人に挨拶した。

明るく振る舞ったのはいいが、うるさいとか言われそうで心臓がバクバク鳴っていた。

前の会社でもそうだった……第一印象が大切だと思い明るく挨拶をしたが結局あれだったもんな……

ここも同じだったらどうしよう……と、一度考え初めたら悪い方へ思考が流される。

(やっぱりやめたほうが良かったかな……挨拶)


「おう! おはよう。今日からの人だよな? 頼りにしてるぜ」


「あ! 今日から入られる方ですよね! おはようございます」


「朝から元気だねえ羨ましいよ! はっはっは!」


返事が返ってきた。

想像とは裏腹に俺を見てちゃんと声をかけてくれる人がいた。歓喜余って涙が頬を伝った。


「え!? どうしたの? どこかぶつけた!? なんか悪いこと言っちゃった!? ごめんね! ほらあんたも謝る!!」


「ええ? な、なんで……?」


「頼りにするって言ったからプレッシャー感じたかもしれないじゃない! ごめんね! そんなつもりじゃないのよ? ティッシュいる?」


「あ、え? あ、いえ! そんなんじゃなくて……」


優しい心に触れ、ここでなら俺も頑張れるかもしれない。ここの人達と働いてみたい。

そう再認識した。俺は少し微笑んで涙を拭きながら "喜び" を反芻(繰り返し思い出)した。


「お気遣いありがとうございます。嬉しくてつい……今日からよろしくお願いいたします」


「あら? 新人くん泣かせたの?」


突如背後から声をかけられた。その姿には見覚えがあった……上から下にかけてのあのプロポーション。大きい胸。きゅっとくびれたウエスト。その姿は忘れるはずもない。


「当馬さん……」


「あ! 当馬さんおはようございます! 新人君と挨拶していたら泣いちゃってていじめてたとかじゃないですからね!? 上に報告とか……しますか??」


「いいえ? 佐々木さんがそんなことする子だとは思わないもの。大丈夫よ」


佐々木さんと呼ばれた人は安心して胸をなでおろした。


「宮田くんはするかもしれないけどね……」


「それはあんまりでしょ!? 俺もやりませんってそんなこと!」


宮田と呼ばれた男が、声を大にして叫んだ。


「ふふっ、冗談よ冗談」


煮え切らない思いをした宮田が不貞腐れながら席に戻っていった。


「あ、そうそう佐々木さんにお願いがあったのよ」


当馬さんは佐々木さんを呼び出して少しの間2人で話していた。

途中佐々木さんの驚いた声が聞こえてきたが、何を話しているのだろうか?

話終わったあとに一斉にこっちを振り向き当馬さんが佐々木さんの方を優しく叩きながらニコッと笑った。


「今日からあなたの教育係をしてもらうことになった佐々木さんよ! 分からないことがあったら佐々木さんを頼ってね」


まだ少しムスッとしていた佐々木さんが諦めたのか、深いため息をついて俺に近づいてきた。


「今日から教育係をします。佐々木です。よろしくお願いします。分からないことがあったらなんでも聞いてください。それだけです」


つんつんとした態度を取られ、俺は少し困惑した。

さっきまで優しかったのはどこへ行ったのだろうか?

そんなことを考えていると当馬さんが察したかのように口を挟んだ。


「あー、この子言い方あれだけど気にしないで! ほら、一時期はやったツンデレ? だと思って」


「もー! 先輩が教育係なんて押し付けるからですよ!! 私も仕事たくさんあるんですからね!?」


「ごめんね……でもね、私は佐々木さんの能力を買っているのよ? 佐々木さんなら大丈夫だって心から信じているからお願いしたの。お願いできるかしら? やっぱり他の人にお願いした方がいいかしら……」


「むむむ……わかりました、わかりました! やりますよ!」


「ふふふ、ありがとう。じゃああとは任せるわね。その前に……」


「新人君? 前は忙しくてご挨拶出来なかったけど……今日は社長がいらっしゃるからご挨拶に行きましょう。お部屋まで案内します」


「あ! はい! お願いします」


当馬さんに案内され、後ろをついて歩いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「こちらが社長室です」


コンコン


「社長。失礼致します。ご案内してまいりました」


扉が開いた先には五十代くらいで髪を後ろに巻き上げるような容姿のサングラスがよく似合いそうな容姿の男の人が椅子に深く腰かけていた。


「あぁ、君か! 来てくれて嬉しいよ。私が社長の高崎だ! 想像よりいい男じゃないか! ん? 分からないことがあればそこの当馬さんに聞けば大体は教えてくれるから。これからの活躍を期待してるよ!」


(めちゃくちゃフレンドリーに話しかけられてしまったー!!!)


社長に握手をされ、ハグされ、背中を力強く叩かれて俺は硬直した。

あわあわしている所を当馬さんが察して社長を引き剥がしてくれた。

どうやら新人が来たらほぼ毎回やってるらしい……


「社長。こちらこそ採用していただきありがとうございました。今後お客様の目線で考え、より良いものを作るために頑張る所存ですのでよろしくお願い致します」


「うん! 期待してるよ!」


俺は社長に方を優しく叩かれ、社長室を出た。

社長は、カリスマ性がすごいある人でやる気を出させるプロなんだなと実感した。

なぜかと言うと、さっき方を叩かれた時にこの人について行きたい。この人に認められるために頑張ろうと思えたから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


自分の机をもどり、仕事の流れを説明してもらいながら業務をこなした。


「っはー!! やっぱり初めだからミスを出しちゃったけど……充実した日だったな」


今日の書類をまとめてマニュアルをカバンに突っ込む。

帰りの支度をしていると突如後ろから声をかけられた。


「お疲れ様」


振り向いたら胸が近くてぎょっとした。悟られないように自然を装いながら顔を戻す。

机の上にコーヒーが置かれていた。


(あ、もしかして俺にくれたのかな?)


「あ、ありがとうございます! 当馬さん。昨日からお世話になりっぱなしですみませんでした。今度なにかお礼しますね」


(断じて下心なんかない。下心なんかないんだからねっ!)


「あら? そう? じゃあお言葉だけ頂いておくわ。ありがとう」


(断られたー!!!ですよねぇー!!!)


「じゃあ、俺帰りますんで。はい。お疲れ様でした」


いそいそと駆け足で退社した俺は恥ずかしさのあまり無心で家まで帰っていた。


バタンッ


「あ! おっかっえっりー!!」


死神が新品のエプロンを身につけて玄関まで出迎えてくれた。


「あ、あぁ。ただいま」


「どうしたんだい? なにかあった? お話聞くよ?」


(俺はさっきから気になって仕方がないことを聞いた)


「それってごはんにする? お風呂にする? それともわたし? ってやつ??」


一瞬死神がポカンって表情をした。


「あ、ごめん冗談……」


「ごはんにする?」


「え?」


「お風呂にする?」


「それとも……」


ゴクリッ


「に・く・きゅ・う?」


「肉球にします!!」


即答だった。いや、むしろ普段なかなか肉球触らせてくれないからこれはレアなのであって、特別感があった。


「はぁぁぁぁ癒されるぅ……」


肉球をぷにぷにしながら心を落ち着かせた。

一応死神に報告しなければと思い、今日会社で起きたことと、楽しかった話をした。


もちろんその後に死神お手製のご飯とお風呂に入って布団にもぐった。


今日はとてもいい日だったな。ずっとこの日が続けばいいのに。


隣で寝息を立てながら眠る死神の頭を撫でながら眠りについた。

最後まで読んでいただきありがとうございました!はぁぁ私も猫の肉球ぷにぷにしたい……死神欲しい……癒されたい…… 続きが気になった方は是非!評価とブックマークをよろしくお願い致します!また次回お会いしましょう!

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