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俺と可愛い死神  作者: ヴルペル
俺から見た世界
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二十九日目

内定を貰って踊りまくった俺と死神はそのまま疲れて眠りに入った。

挿絵(By みてみん)


清々しい朝だ。昨日は無事に合格を貰い、明日から出勤する予定だ。

心地よい風が吹き、子鳥のさえずりが聞こえる……


「ちゅんちゅん。ちゅんちゅん」


まるで森の中にいるような感覚に襲われて、居心地の良さに睡魔が襲ってきた。


「ちゅんちゅん! ちゅんちゅん!」


「ちゅんちゅちゅんちゅちゅちゅーん!!」


「いや! おかしいだろ!」


明らかにおかしい鳥のさえずりに怒鳴りながら布団を押しのけて起き上がると、死神が布団の上で俺のスマホで勝手に小鳥の動画を見ながらさえずりを真似していた。


「ちゅんちゅん??」


「ちゅんちゅんじゃねぇよ! 思いっきりふざけやがって!」


口をとがらせながら悪い顔をしている死神の頭をグリグリと押さえつけた。


「いった! 痛い痛い! 僕が悪かったって! ごめんよ!」


頭をやめて頬っぺをむにむにして遊んだ。

すごい。思ったより伸びる……

俺はほっぺでしばらく遊んでいると死神から猫パンチが飛んできた。


「僕のお触り有料なんだからね!!」


少し照れながらほっぺをむにむにしてくる。


「初耳だ……お金取るのか」


そんなやり取りをしばらくしたが、とりあえず起きて朝ごはんを食べることにした。テレビをつけて天気予報を確認して、ニュースをチラ見して、なにか面白いものが見つからないかとチャンネルを高速で移動させた。


……ない。


面白そうな番組が何も無かった。仕方がなく俺は芸能系のニュースを見ることにした。


「芸能のニュースは熱愛が多いなぁ……」


あのアイドルが結婚だとか、熱愛だとか、別にいいじゃん。人間なんだから恋愛も結婚もするよ。逆に締め付けたら可哀想だって……


そんなことを思いながらニュースを見てると死神がある部分に反応した。どうやらアイドルが新曲のアルバムを出したらしい。


興味がそそられなかった俺は朝ごはんを片付けてソファに横になる。ふと死神が顔の目の前に立って覗き込んできた。


「ねぇねぇ?」


「……なに?」


「アイドルって何?」


熱心な顔でテレビを見ていたからファンかと思っていたがそうじゃなかったらしい。


「アイドルとは……歌って踊ってみんなを笑顔にする人達のことかな」


「へー! 僕も歌って踊りたい!」


「そんな簡単にはアイドルになれないって(笑)」


無理だと思いつつも考えてたら、その時心当たりが一件だけあった……

歌って踊れる場所あるじゃないか!

今日どうせ暇だろうと思い、思い切って死神に提案してみる。


「なぁ死神?」


「なんだい?」


「カラオケ行かね?」


俺は内定を貰って浮かれていた。久しぶりにカラオケで喜びを表現したい欲にかられる。


頭にハテナを浮かべている死神に説明するのは行きながらすることにして家を出た。


カラオケ屋についたら平日だったこともあり、人が少なくすんなり部屋に入れた。


「こ! ここが! カラオケ!」


目を見開いて椅子の上で立ち上がる。大音量で流れる広告に驚き耳としっぽを抱えて隅っこに逃げるように移動した。


「大丈夫か? 音下げるから少し待ってな」


音量とエコーや、マイク関係も調節して死神の反応を伺う。

恐る恐る耳を離してぴくぴくと動かす。大丈夫だと判断したようでリラックスする形に切りかえた。


「さっきも説明したけど……ここなら歌い放題だし踊っても部屋には俺とお前しかいないから遠慮いらないよ」


そう言いながら死神にパネルを手渡すがパネルをくるくる回しながらガンを飛ばしていた。


(あ、やり方知らないのかな?)


パネルを受け取り、手慣れた手つきで曲を送信してマイクを持つ。


「♪〜……聞いてくれ! マイヴィーナス! 俺にはお前しかいない! うぉうぉ! お前が天に帰ろうとも俺が追いかけてお前のGODになってやる!」


俺は持ち歌の(ヴィーナスインマイハート)を熱唱した。

自分に酔いしれながら世界に入り込み、歌いきった時に死神にこうやって歌うんだぜ!って言わんばかりのドヤ顔で見たが……


死神はドン引きの顔で俺を見つめていた。口は半開きで目は見開いていた。


「……んんっ! ま……まぁこうやって歌うんだよ……」


急に恥ずかしくなり、マイクを死神に渡して顔を逸らす。


「…………ねぇ……恥ずかしくないの?」


「うるせぇよ!! いいじゃん! 2人だけなんだから! はっちゃけても!!」


真っ赤になりながら反論するが、自分でも痛い自覚があったので強く言い返せない。


死神が知っていそうな曲(お母〇んといっしょのテーマ曲)を送信してマイクを渡す。


(俺は知っていた……あれからハマった死神は毎朝俺に内緒でお母さ〇といっしょの番組を見ていたことを……)


知っている曲に目を輝かせながら死神はマイクに向かって息を吸った……


,,「「♪〜〜すぅ〜゛ちいさいお友達らんら⤴︎ らんら〜゛!゛動物さんと遊び⤵︎ ︎まし⤴︎ ょ゛らんら⤴︎ らんら〜゛」」゛


大音量。鼓膜が破れそうになりつい耳を塞いだ。これはあまりにも……ひどい……

こっちのことはお構い無しで楽しそうに歌う死神。見た目とは反対に殺傷力がある歌声。飲み物を注ぎに行く振りをして部屋から退散する。


飲み物をとって帰ると部屋の前まで声が溢れていた。

こりゃまずいなと思い、マイクの音量をさらに下げる。

歌い終わった死神はキラキラとした顔で俺の顔を見た。


「ど! どうだい!?」


「………ぅ……うん。ぃ……いいんじゃない??」


「ほんとー!? やったぁ!」


死神はパネルを上手に扱い、お母さん〇いっしょメドレーを入れた。

死神のリサイタルが始まった……楽しそうな顔で歌い続ける。


(うん……楽しそうな顔見れたからいいや……そういうことにしよう……)


明日に響かないといいけど……


そうして二時間耐久戦が始まった……

最後まで読んでいただきありがとうございます!コロナでなかなかカラオケ行けないですね…めっちゃ歌いたい曲たくさんあるのに!!悔しいです!続きが気になった方は是非!評価とブックマークをよろしくお願い致します!また次回お会いしましょう!

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