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俺と可愛い死神  作者: ヴルペル
俺から見た世界
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二日目

俺の部屋に突然現れ、勝手にダンボールを片付けて一緒に暮らすと言う。俺の意思は無いのかよ…そんなことを思いながら新生活の2日目が幕を開ける

挿絵(By みてみん)

久しぶりに熟睡できた。

こんなに寝れたのはいつぶりだろうか? 欠伸(あくび)をしながら体をゆっくり起こす。

いつも悪夢ばかり見ていたので体が疲れ、寝たのに全く回復した気がしないなんてしょっちゅうの事だった。

目を擦りながら時計を見る。


今何時……だ……


「!?」


時計は既に八時半を回っていた。会社は九時に始まり、その前の朝の号令の時までには必ず出勤しなくてはならない。


やばいやばいやばい急がないと大遅刻だ!

急いで準備しないと! 朝ごはん? んなもん食ってる時間ない!!


俺はカロリーチャージを口に咥えながら、栄養ドリンクを胃にぶち込む。


「行ってきます!!」


会社は家から電車二駅分とそこから歩いて十五分くらいの場所にある文具メーカーで、俺は企画開発部に所属している。


あと何分だ!?

あとどれくらいで着くか……!?

お願いだ、間に合ってくれ……


俺は無我夢中になって走った。心臓の音がうるさい。息切れと視界がぼやけていくのを感じたが、無理やり体をつき動かした。

闇雲に走っていた勢いのまま扉をおしのけて部屋になだれ込む。


………………

なんとか……間に合った……

朝の号令の五分前。俺は息が切れていたので整えるのに必死だった。


「やぁ! 何とか間に合ったね! 良かったじゃん!」


「!?」


聞き覚えのある声。声のした方向を見てみると、そこにはにやにやした顔をした猫(死神)が頭の上で俺を見下ろしていた


「な……お前……はぁ……どうじでごごに……ゲホゲホ」


「まぁまぁ水飲んで落ち着きなって! とりあえずそのままいるのも不自然だし君の机に座らないか?」


そう言われハッとした俺は周りを見渡した。

走って駆け込んできたからか、かなり視線を集めていたらしく社内全員が俺を見る目が痛いほど刺さってきた。


「ずっ……ん゛ん゛っ! すみません……」


執拗に見られながら席に着く。背中からずっと視線を感じる……

本当に勘弁してくれ……

ヒソヒソ声で喋っている声を聞くと俺の事かと思って身構えてしまう。俺のことじゃなかったとしてもとても気になって仕方がないのだ……

俺だってこんなふうになりたいわけじゃない。どうしてこんなにみっともない姿を晒さなきゃいけないんだよ……


「うわぁ……メンタルやられてんねー……大丈夫??」


(大丈夫なわけあるかっ!)


心の中で死神にツッコミを入れるが本当はそんな余裕はどこにもなかった。

俺は必死に震える手を押さえつけ平然を装った。

今すぐにでも泣きそうだ。


「ーーーーーーおい」


「ーーーーおい! お前だよ! 無視とはいい度胸してるな」


「……ひっ!!」


小さく悲鳴を上げた。

顔を上げると上司の怒った顔が目の前に広がる。


「お前今日はちゃんと資料作ってきたんだろうな」


「あ……は……はい……あ……えっと……あ……こ……こちらに……」


「ちっ…… さっさとしろよこのノロマ」


「あ……す……すみません……申し訳ございません」


「とっとと渡せよ! お前と違ってこちとら忙しいんだよ!! ったくグズが」


奪い取るように乱暴に資料を掴んで去っていった。

上司が聞こえない位置にいることを確認した後、深いため息をつく。


「ふぅーーーー……」


「あの人の気迫すごいねぇー押しつぶされそうだね!」


そう言いケラケラと笑う死神。


「俺がノロマだからあの人いつも怒るんだよ……俺が悪いんだ」


俺がうなだれるようにしてコソコソと話す。


「んー?? あの人いつもあんな感じなイメージあるけどな?」


「他の人と話してるところを見たけどいつも笑っていたから……俺の時だけいつも怒鳴り散らしてくるんだ……もう一緒に仕事するの嫌だよ……」


「……ふーん???」


死神はにやにやした顔を崩さず、俺の話をずっと聞いていた。


喋り終わると思いのほかスッキリしてその日の仕事が(はかど)った。仕事中死神はどこかへ姿を消していたが、まぁ仕事中は構ってやる余裕もないし逆に好都合だった。


その日も変わらず上司から仕事を押し付けられ残業をした。


「ふー……今日はここまでにするか……あとは家に持って帰ったら明日までには何とか……」


ブツブツ独り言を喋っているとふと時間が気になり、時計を見ると既に深夜の一時を過ぎていた。


「やば……集中してたー……もう帰ろう」


机に目を戻すとパソコンの横に死神がいた。


「やっと終わった?」


「あぁ……なんとかキリはいい所までは終わったからあとは家でやるよ」


「早く帰ろうよ!僕もうお腹ぺこぺこでずっと鳴りっぱなしだよ」


そう言いながらお腹をさする。ぐー、っとお腹を鳴らしながら俺の顔を覗き込んでくる。


「ははっ……! わかったわかった。帰ろうか? 何か食べたいものある?」


「ほんとに!? んーっっ! 太っ腹ぁ!! ハンバーグ食べたい!」


「僕今日はひと仕事終わらせたからお腹ぺこぺこなんだよねー!」


するりと腕にしっぽをまきつけて、意気揚々に声を弾ませる。

ひと仕事?あー、そういえば仕事中見かけなかったな。その時に仕事してきたのか。


帰り道俺はコンビニに寄ってハンバーグ弁当を買ってやった

嬉しそうにがっつきながら食べるところを見ると自然と笑みがこぼれる。


こんなふうに笑うのはいつぶりだろうか……

口に付いたソースを拭いてやりながらそんなことを考えていた。

最後まで読んでいただきありがとうございました!いやぁ、会社編来ましたね!精神的に追い詰められていくサラリーマンさん頑張れー!!あなたの知らない癒しをご提供致します。続きが気になった方は是非!評価とブックマークをよろしくお願い致します!また次回お会いしましょう!

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― 新着の感想 ―
[良い点] この作品って猫好きな人には、くるものがありますね! 勿論いい意味ですよ。 自分も猫を飼っているので、ほんわかした気分で読めて楽しいですな。
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